電子レンジを利用したコーヒー豆の焙煎【特許紹介】
ここ最近、コーヒー豆の焙煎に電子レンジを使うことで家庭用の焙煎機を作れないかという内容で記事を書いてきました。
ある程度構想が湧いてきたところで、周辺特許を調べていると、、、
「電子レンジを利用した焙煎、煎り工程並びに攪拌加熱に関する装置」と言うタイトルで特許がすでに取られていました!!
今回はこちらの特許の要約・紹介です。
【公開番号】特開2012−90616(P2012−90616A)
出願者は電磁波の専門家のようです。
私の考えていた構想と同じ部分もあり、違った部分もあるのですが、かなり面白い内容だったので紹介します。
特許の有効期限は出願日(本ケースは2010年)から20年なので、あと10年後くらいから本格的に流行るかも知れません。
★紹介したい技術的なポイントは2点
・波長変換
・攪拌加熱
波長変換
特許本文を引用しますが、読まなくて大丈夫です。
あとで要約します。
ターンテーブルが付いていない電子レンジは、一定の平面に対して均一なマイクロ波の輻射ではなく、加熱する素材によって、偏った加熱が進む傾向が強い。遠赤外線や過熱水蒸気の輻射する構造の電子レンジも市販されているが、遠赤外線と過熱水蒸気が同時に熱輻射する構造ではなく、マイクロ波、遠赤外線、過熱水蒸気は別々に機能し同時には機能しない。
特願2005−71885、特願2007−519090、特願2008−515604の構造において、マイクロ波を照射すると内部に水を入れると加熱され水蒸気化として気化する。輻射する遠赤外線波長は、約200℃で輻射しており、水蒸気は過熱水蒸気となり、セラミック容器の内部に充満し、過熱水蒸気のエネルギーとなり、均一な熱輻射を行う。特願2008−515604において申請しているスノコを入れ、スノコの面を平面に、スノコの凹面をセラミックス容器の底に向けると、鍋底とスノコの空間から先にエネルギー密度の高い構造になり、水は過熱水蒸気となりセラミックス容器の内部に充満する。(本文引用)
特許の本文はあえて難しく書いてあるので、読む気失せますね。
簡単に要約すると2つのことを同時にしています。
①内部に水を入れていくところがあり、マイクロ波で水が加熱される ➡︎ 水が蒸発して水蒸気になる ➡︎ 一定温度の水蒸気で満たされる
②Mn−Znの磁性素材が塗布されたセラミックスの内部 ➡︎ マイクロ波(2.45GHzの波長)から波長転換し、遠赤外線の波長 へ➡︎ 輻射する
こんな発想があったとは、、、目からウロコです。
過熱水蒸気と輻射の相乗効果。
さらにはセラミックスからの比熱による熱輻射も加わり、均一な焙煎ができるという技術特許です。
ちなみにこの特許を持っている方々はマイクロ波の波長を遠赤外線に波長転換するこの技術についてもすでに特許を持っているようです。
電子レンジはIHヒータに比べてもエネルギー効率が良く、電気代が安くすむのでこの技術が広まれば時代が変わるかもしれません。
実験1,実験2、実験3で示すとおり、焙煎時間はコーヒー100gで10分以内であり、ヒーター過熱の場合は多くが1kwを使っており約20分を要している。エネルギーコストは1/3程度で焙煎ができる。(本文引用)
光熱費が1/3程度になる。自家発電分の電気で生活が完結できる日が来るかもしれません。
今考えられる欠点はマイクロ波を扱う以上、人体に影響ないように箱型でなければならない点です。
IHヒータみたいに調理しながら人の手で混ぜるとかができなくなります。
それかグローブボックスみたいな耐放射性ゴム付きならば可能ですが。。。。
画像はASKULより引用
研究で何回か使ったことありますが、作業性悪いのと手が蒸れるので好んでは使いたくない人が多そうです。
実現性は置いておいて
・耐マイクロ波スーツを装着した小型ロボットが電子レンジ内で調理する
・ゲノム編集で耐マイクロ波人間になれる!?
くらいになると、箱型で問題ないかもしれませんね。
少し脱線しましたが、経済的観点からもIHヒータの次世代調理器として電子レンジ型攪拌加熱器の可能性はあるかもしれませんと言う話でした。
ただし、攪拌できないと均一に調理できないので次は2つ目のポイントである攪拌加熱について説明します。
【時代の流れ】
木材・炭 ➡︎ ガスコンロ ➡︎ IHヒータ ➡︎ 電子レンジ型万能調理器(マイクロ波・赤外線ハイブリッド)?
★エンジニア的補足:
・IHヒータ = 誘導加熱(金属に発生する渦電流のジュール熱)
・電子レンジ = 誘電加熱(電気双極子である水分子が回転・振動)
攪拌加熱
攪拌(かくはん)、これは単純に今も電子レンジの機能にあるターンテーブルの回転を利用するようです。
長くなるので紹介は割愛します。(本文では難しく書いてあり完全に理解するまでに時間かかります)
初耳でしたが、
一般的に使われている電子レンジのターンテーブルの回転数は焙煎にも適した回転数のようです。(根拠が知りたいところですが)
よって、本特許をまとめると
攪拌に加え、輻射(遠赤外線の波長)、過熱水蒸気、熱輻射の相乗効果を生む技術によって均一に安定した焙煎ができるという内容でした。
最後に・・・未来の焙煎について
好みにあった焙煎には繊細さが求められる。Mn−Znフェライトから輻射する波長は酸化還元反応をによって加熱する(特願2009−270737)為に、加熱する波長の領域がコーヒー豆が有する吸収波長と整合することで雑味やえぐみが消える焙煎ができる。(本文引用)
「雑味やえぐみが消える焙煎のためには、コーヒー豆が有する吸収波長と整合することが重要」
「日本語を話して下さい」と言われてもおかしくない内容ですが、
これまで私の記事に付き合って下さった皆さんなら大丈夫です。イメージできます!
吸収波長は私がこれまで書いてきたミクロ組織(物質の化学構造・結晶構造)から決まるものです。
よって、美味しくコーヒーを焙煎するにはミクロ組織を形成する原子・電子や分子に関する理解が必須であるということです。
ミクロ組織のシミュレーション結果が実験とピッタリ合う理由も分かりますね!
これからの焙煎は豆の特徴(品種・産地)に合わせた加熱条件や焙煎時間を探索するのではなく、
「個々のコーヒー豆の吸収波長に合わせた波長調整で焙煎する」時代が来る!?
それでは、また!
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