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5/14日のに降り注いだ太陽と雨のメロディ


「ある音楽を聴くとそのままフラッシュバックする昔見た景色」
音楽には、そんな体験をさせてくれる力がある。

それは、決して全部、ポジティブな感情ばかりではない。

だけど、その時が最悪でも最高でも、そんな時に側にいたという事実は生きている限り、消えることはない。

2021年5月14日、渋谷公会堂でサニーデイサービスの「いいね!」ツアーの最終日を見た。
去年、この世間の状況下で延期となったライブの振替を1年ぶりに実現したというよりも、実現させてくれた夜。

思い返してみると、2008年にRISING SUNで再結成して、2010年の再結成後のアルバム以降、前回の渋谷公会堂は、おそらく「Birth of a Kiss」というタイトルで、2015年3月に実現した、15年ぶりの渋公でのライブ以来。

様々な事情で、直前まで開催されるかわからない中で実現した、また「3人が集まった」まるで奇跡みたいな夜だったとその後のライブレコードや、DVDで見ていて、サポートメンバーもなく、3人だけの演奏で紡がれていくこれまでの名曲の数々。

その15年前、つまり2000年の渋谷公会堂ってLOVE ALBUMのツアー。
見に行くことのできなかった公演。

2008年の再結成のタイミングって、RISING SUNで終わるのかなと思っていたので、その後を人生の忙しさに負けて、追いかけていなかった。SNSもあまりしていなくて、とにかく仕事ばかりしていた。
だから、ソロ作品もあまり記憶になくって、僕が再結成を意識したのは、2015年。
つまり、「Birth of a Kiss」の開催直前で、身体を壊して入院している時に、ラジオで開催を知った時。

その時、もうすでにアルバムが2枚出ていて、それなりにライブもしているなんて知らなくて。
もちろん、チケットは手に入らなくって、というよりもそんな余裕もなくて、ただ、「そうなんだ」って、ベッドの中でラジオから流れるニュースを聴いていた。

時計の針が動き出したのはその時かもしれない。

3人で渋谷公会堂に立つというニュースを知って、僕はいろいろな思い出を振り返る。
CDを買うために初めて渋谷のタワーレコードに行った日のこと。
偶然、レイヴ会場にいた曽我部恵一さんにサインをもらったこと(2000年だそうです)、三宿のwebで開催されていたVEGASというクラブイベントに通って、DJを見ていたこと。

憧れていた会社の先輩にレコードをもらったこと。その先輩と疎遠になったこと。
明大前で終電を逃して、近所に住んでいる女の子の家に泊めてもらって一晩中レコードを聴いたこと。
親友と「江ノ島」という曲を聴きながら旅行に行ったこと。
1999年の第1回目のRISING SUNで朝焼けの中登場したサニーデイサービスのステージの余韻に妹と幼なじみと浸っていたら
帰れなくなったこと。
2017年8月の日比谷野音で、親友と見ながらも、最後は客席も関係なく、周りの人たちと肩を組んで大合唱してぐちゃぐちゃになって
「胸いっぱい」で飛び跳ねて、なんか、よくわからない状況で霞が関を歩いたこと。
「Dance to you」のツアーで、クリスマスくらいに好きな子と見に行って、相手が飽きてしまい、喧嘩になったこと。

どれも全て、音楽で完結する出来事ではなく、必ず大切なひとや苦い思い出や楽しい光景が共にある。

だから、音楽だけでは完結しないバンドが僕にとってのサニーデイサービス。

コンサートを見た思い出というよりも、このバンドの音楽を聴くと、脳裏にはメロディよりも、それはキラキラしたような思い出かもしれないけれど、過去で時計を止めたままのこともあるけれど、必ず新しいレコードを作ると、「今」を鳴らしてくれて、今一番カッコよっそうなことをして、でも、
その姿は初めて知った日から変わらなくて、なんか言葉にできないカッコよさがあって。

率直に言うと、僕はサニーデイサービスというバンドの恐らくとてもファンなのだと思う。

おそらく、というか、間違いなくそうだ。

言葉にすることがとても難しくて、できなそうなことを歌いながらステージの上やレコードの中、紹介してくれる映画や音楽で賄ってくれる存在。そんなバンド。インタビュー中にJesus&Marychainの新作を抜け出して買いに行くって聞いて、僕も同じレコードを買ったら一番好きなバンドはメリーチェインになってしまい、エリックサティもそこで知って。

話を今日に戻してみる。

久しぶりだった。フェスとかでも見れなくて、少しばかりそうなるとレコードも新譜以外は聴く機会も減ってきていたけれど、僕は当たり前のように渋谷公会堂に行った。

Baby Blueから恋に落ちたら。それは、つまりは2015年の渋谷公会堂のコンサートと同じ。
そのタイミングで、語るべき文脈があるとしたらそれは考えすぎなのかもしれないけれど、とても意味のあること。

でも、これは新作のツアーなので、先に進んでいくための出来事。

よく僕たちは慣れ親しんだ思い出の中に生きていくことが多くなってしまう時がある。
それは居心地が良くて、別に新しいことを始める必要もなくて、安定的な生活をしていくことでリスクを負うことが少ないからだ。
案外社会ってSNSで見るほど、刺激的で特別で、何者かにならなくても生きていく権利はあって、それを続けられるなrとは素敵なことだけど、
いつか、繰り返しになってしまう怖さもあったりする。

サニーデイサービス、なんでこんなに今を鳴らすのか。というくらい、普段生きている時間とリンクしていく。

そして、僕たちが今欲しいものを提供してくれる。

過去をフラッシュバックさせながらも、明日からのための過去を作ってくれるバンドだった。やっぱり今日も。

なんてかっこいいんだよ。ずるい。

また、明日目が覚めたら、新しい時間が始まるけれど、思い出にも浸らせてくれてしまうんだろうな。

もう一回言うけれど、好きなんだろうな。この音楽と存在が。

別に、いい思い出ばかりでも、未来でもないじゃん。

「明日はきっといいことあるよ」なんてそんなのまやかしかもしれないじゃん。でも、そういうものじゃん。そんな音楽をたくさんの恋愛やコーヒーのほろ苦さとかで例えて歌っているじゃん。つまり、ロックンロールって音楽の矛盾じゃん。

とりあえず、この気持ち、ここに残しておきます。

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