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5年間の同人ゲー開発で見えた埋没投資

活動開始2014~2018年辺りまでの反省を記録した物です。

業界の流れが変わりつつある時に古い考え方に固執していると色々と損するよっていう当たり前の事を経験則から書きます。僕の頭がもう少しキレる方で一般寄りの嗜好だったら5年分は技術も考え方も先取りできたんじゃないかと思うのでこれから何か始めようとする人の為に備忘録として残します。​

1. 市場変化:同人ゲー遊んで育ったよ作り手になるよっていう世代

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↑神ゲ

コミケと同人ショップ委託(今だとDL系)が一般の市場として弱くて実質機能してないのは元々理解してたんだけど自分らの世代ってあそこが同人ゲーのメインストリームだったもんで、学生時代に影響を受けてちょうど制作側に回ろうとした頃に同人系が下火になって、Steam/Switchはじめインディーゲームの商業流通が整うっていうインプット市場(=同人)とアウトプット市場(=インディー)のミスマッチが起こってる一番ツイてない世代かと。

元フリゲ勢とかで当時そこそこ人気あったけどインディー隆盛後の波に乗れなかった*人が結構居ると思ってる。むしろフリゲとか同人ゲーを通過していなくて、インディーゲームってのが何か盛り上がってるからゲーム作り始めたってクリエイターの方が上手く波に乗れている気さえする。

*この辺は諸説あると思うんだけどフリゲ世代のクリエイターはフリゲ時代にコンテンツを消費されてしまっているのと、そもそもツクールゲーがインディーズの市場で競争力が無い事の2点が大きいと思う。反面、一般同人ゲームは東方project関連の二次創作ゲームやハックロムが全盛期でしたので、オリジナル勢が出て行く隙は無かったように思う。

一回り下の世代の人達が凄く羨ましいですね。無料で使えるツールも沢山あるし5年生まれるのが遅かったら大分違ったと思います。僕らの頃はUnityとか無かったんで、ツクールか吉里吉里*みたいなショボいやつでそれなりのショボいゲーム作るか、参考書買ってプログラム勉強してからDXライブラリ(C++)か、HSP(C+BASIC)辺りでゲームプログラムのコード書くしかなかった。*サウンドノベルツクールみたいなやつ、当時は同人ノベゲー全盛期だったんでNScriptorというのも流行ってた。

↑こーいうやつ

少なくとも日本で出回ってたアマ向けのゲ製本や参考書、WEBサイトはこの辺を網羅してたし、僕が中学時代に見てたネットでは、C++でゲーム作ろう系の情報交換の掲示板が盛んだったように思う。弾幕シューとか作ってたよね皆。自身も文化祭で発表したが*これが中々良くできており反響がよく自信に繋がった。僕は情報工学を出ているのでオリジナルゲームを作成する際はツクール等ではなく自作でフレームワークから組むと決めていたので、当時ハマっていた世界樹の迷宮と風来のシレンの闇鍋ゲームを作る為に馬鹿みたいに3万行もコード書いた。*FBに動画置いてあるます。

で、発表する場所がコミケなんですよ。客観的に見ないといけないが、あそこポルノだらけだからさ。でも当時は発表の場があそこしか無かったんだからしょうがないんだけど今じゃ考えられないな。同人ゲーのリリース場所としてはオワコンもいいとこじゃないかな。ポルノ目当てに来てるオタクにしか訴求しないので狭い狭い。

2. インディー以降:何か波が来たけど乗れねぇ…っていうもどかしさ

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itch.ioに体験版アップするか、Steamにアーリー版置いちゃうか、メディアにプレスリリース送るか、金払ってTwitterプロモ打つか、インディーゲー紹介系Youtuberにガンガンアピっていくとか。最近はインディーズゲームのオンライン展示会もTwitterで流れてきてアクティブ数万人規模で隆盛していますし、会場に来ている人にしか訴求しないオフのイベント出展より、オンラインで動いた方が100倍訴求力あると僕は思ってる。

抑々、昨今のインディー系展示会は力のあるデベロッパーしか基本的に大手パブリッシャーからの商談やメディアからの取材を受ける土俵には乗らないので小手が参加する意味は無いとTIFやTGSに出展した経験則から言える。BitSummitは無料枠が無いので実費数万円、高額の出展費を取られて会場の賑やかし勢になるだけなので僕はあんまり乗り気ではない。このイベント好きな人は申し訳ないけど場所が関西なので今後も参加する予定無いから切らせていただきました。そのお金でアセット数万円分買い揃えた方が幾らか有意義だと思います。

↑幕張メッセの空気吸いに行っただけでした

上の世代辺りになってくるともうそこそこ金持ってるから法人化して参入してきてるよね。真面目に社畜やってれば数千万くらいは自由に使える貯金持ってるでしょうし。大バジェットでインディー作品作ってくる海外勢や、日本でも資本ぶっこんできてる独立組インディーの大ヒットを見て、僕は大分この業界を諦観して見ているし、元々長く同人ゲーやフリゲを個人製作してた人達も商業レベルに仕上げないと通用しない*ってのは気づいたんじゃないでしょうか。それか一般は諦めて金にしやすいエロ同人*に移ったか、スマホの広告収益型のアプリゲーに行ってるか、界隈の流れを見ているとそんな感じです。

*後述しますがエロに移行した人は目の付け所が良いと思います。個人勢が戦えて金稼げるのはあそこだけだと思うので。また、特定の作品名を挙げて個人系のインディーズも成功しているという反論が必ず出るんですが木を見て森を見ずという言葉を返させていただきます。

*ペン1本で参入可能な漫画小説業界に比べてゲームは非資本階級からの逆転は起こりにくい、エンジン無料化で参入ハードルが下がったとしてもインディー枠内で既に資本格差があり商業水準に耐えられる中規模以上の作品制作能力は必要だと昨今のヒット作品を見て特に感じている。

↑CFやコンペはデザイナー出身者の方が集客力が高い

パブリッシャーから資金提供を受けている個人勢も増えたが、あの界隈はどうもキナ臭くて僕はあまり好きにはなれない。出版社主催なのでアニメ漫画小説にしやすい題材が好きだろうし、実際に資金援助を受けている作品もいわゆる雰囲気ゲーが多い。当時、電ファミニコゲームマガジン新人賞というフリゲ開発者を青田買いし書籍化等の支援をするコンテストがあったのだが、ゲームはゲームだと思うので僕個人的にはもうそういった物からは距離を置きたい。

3. 古い市場は捨てろ:20年前の成功者とは時勢が違うことを理解しよう

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愚者は経験から学ぶってやつ。日本発の成功者が皆コミケ発なんで、どちらかというと歴史から学んで動いてはいたんだけどここ10年くらいはマーケットの移り変わりが激動すぎて再現性無かったなーと。歴史も経験もどっちも殆ど役に立たなかったような気がする。1年1作ペースとか律儀に守ってたし。アホすぎ。求められる市場水準やボリュームが当時の同人ゲームと違い過ぎるので真似しても上手く行くはずがない。手焼きでパッケージングも自宅でやってたんですけどこういうのも自己満でしかないね。

新しく出てきた開発ツール(Unity/UE/Blender)だったり、スマホゲー作ってみたり、インディー系の展示会だったり、ふりーむとかアマツールとかDLSiteで地味にやってるんじゃなくさっさとSteam/Switchにゲームリリースしてしまったり*、要するに未開のフロンティアに突っ込んでいく精神の方が大事だったんじゃないかと今になって思う。まぁ展示会は関東圏の物は結構出させていただいたのだけど、何も物にならなかったね。特に若い人、学生なんかは若いってだけで下駄履かせてもらえるから売名チャンス多くて有利だと思う。僕はもう活動10年弱続けてとっくにそんな歳じゃなくなったので作品のクオリティで勝負するしかなくなった感じです。*…最近は低質なものが多くて一部でデジタルゴミ置き場と揶揄されてしまっているようだが。

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23年連続で売上高を更新!
二次元総合ECプラットフォーム運営エイシス、昨対比155%成長の250億円に

グラフを見ていただければ分かる通り同人DL市場クソ伸びてるので、18禁ゲーの流れで来てる人は全く関係ないし支援サイト隆盛してるからコミケ中止になったりして恩恵モロに受けられたと思う。実際に販売数×値段×0.7しても億プレイヤーのサークルがごろごろと出てるのが窺えるので羽振りがいいと思うけど、一般勢はDLでは数字出ないので重い腰上げてマーケット移らないと埋没費用(サンクコスト)が積みあがってく。古い市場は捨てて行け。

それと2010年前後はフリゲ全盛期だったんだけど、あそこは客層が全然違うから元々視野に入れてない。キャラゲーなんでメディアミックスと相性いいだろ論で雑にコンテスト出してたけど全敗だったので、ただまぁ…ゲーム手売りする以外にも副次的に儲けられたらいいなとは思ってたけど、何ていうかフリゲから書籍化されるような…あの当時ニコ動で流行ってたホラゲとか雰囲気ゲーは全然好きじゃないから、あそこは客層違うなってずっと思ってたんで。案の定インディーゲームの登場でフリゲもオワコン化しちゃったからね。ハッキリ言うけどゲーム的に面白くないんだよ。ホラゲとかゲーム実況勢が再生数で儲ける為だけに存在するジャンルですから。

4. 拙作所感:ローグライクは当たってたけど、性癖ぶっこみ過ぎた

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まぁ…何ていうか。拙作「Astrologia Odyssey」シリーズ終了に伴い外部サイトへの公開停止を進めている時に感じた所感ですね。端的に言って全く数字出なかったんで何もしてなかったのと同義じゃないかな。何かプラスになったと言える事は失敗を学べたってことですかね。上でズラズラ書いたことも負け惜しみっぽくてダサイんですけど正直に思ったこと書きました。

アプデを続けてバグフィックス完璧にやってもゲームデザイン自体がごちゃごちゃしてて良くない上にオタク臭い二次絵を前面に出しちゃってるから、これ以上良くするなら美麗イラストや声優を売りにするしょうもないJRPGやソシャゲ路線になるか、脱衣や18禁要素を売りにするエロ同人ゲームになると思って早々に切り捨てた。あのゲーム自体にはあんまりポテンシャルは無いよね。ぶっちゃけ。あの手のクソみたいな萌え絵と凝ったゲーム性のごった煮はどこに訴求しているのか分からない水と油の機会損失が酷い。それにキャラクターがいっぱい出てくる系のゲームはソシャゲ会社と競合するんだから負けるに決まってる。

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↑自分の趣味趣向をユーザーに押し付けるのはやめたほうがいい
遊びの仕事は遊びじゃない 【仕事の姿勢】

冷静に分析すると自分の好きを大衆に認めさせるってのは無理なんだと思った。どこかで現実との擦り合わせをしないといけない段階が来る。好きを大衆に認めさせた人ってのは認めさせるだけの実力を持った者か、たまたま時代がその人の嗜好に合ってた運が強かった人のどっちかだと思う。熱意とか思い入れだけじゃどうにもならない壁にぶち当たってからじゃないとこれに気付かなかったのか。頭が悪すぎる。

システムに関してはSQ3というよりダンマスに近かったんだけど純粋なゲーム性で勝負したら勝てる自信はあった。客観的に見るとフリゲ特有の上っ面の安っぽさのデバフが大きすぎてゲーム性を評価する段階まで至ってないと思う。企画書まで作って売り込もうと色々と画策していたが資金があったらという見苦しい言い訳は今更しない。おそらく潤沢な資金をもってあの作品をブラッシュアップしたとしても、爆死していたと今なら言える。そもそも自分で作りたかったから誰かの血が入ることは僕は当時は特に嫌っていたので、この作品は勇気ある損切りによって終わったのだ。数字の出ない物に固執するのは時間の無駄なので早めに捨てた方が良いですはい。

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ジャンルに関して言うなら、ローグライクに目を付けてたのは当たってたけど、Wizベースのダンジョン探索RPGは客層狭いよね。ネ○ロダ○サーとか当時ヒットしてたインディーローグを見て、音ゲー要素を抜いたら自分がやってる事のゼルダ版だったので「あ、システム同じやん」と。壁破壊とかランダムで店出現させるのとか、拙作は3D視点なので天井や床も破壊できたり池を凍らせたり植物を栽培できたりと色々と工夫を重ねてたし方向性は間違ってなかったんやーと。まぁシレンなんだけどさ。

個人的にローグにあの音ゲー要素はあんまり好きじゃないんですけど、あのゲームに音ゲー要素無かったら凡百だからやっぱりあるべきなんだと思う。後、グラフィックの水準をあそこまで落として良かったのか…っていう気づきは当時は無かった。ツクールゲーに見える水準は一番避けていた要素なので。フルスクラッチでプログラム書いてフレームワークから作った物なのでツクール勢と同一視されたら悔しいじゃないですか。

5. 努力する場所と方向が間違ってたら成功しない

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はぁ…何だったんだろうな、本当。自分のポテンシャルの活かし方ミスったなぁ…と。当時の僕は同世代から抜きん出ているという驕りがあったから自信家で周りが見えない一直線でしたし、そんな事言っても聞く耳は持たなかったと思うけど、こんな風にボコボコにプライドへし折られると嫌でも気付かされるのですよ。若さって怖いよね。

TIF2017辺りだったかなぁ…パンフ作って道行く人にメディアミックス打診して回ってたんだけど聞こえのよい言葉で断られるか別の展示会紹介されるだけだったんですね、まぁダメ元だし残当なんだけど。ただ1人だけ喝を入れて来られた方が印象に残ってまして。「稚拙な物売り込んでも商品にならないし君のそれはどういった売りがあるの?」と。あの頃の僕はプライド高かったからナニクソと思ったんだけど亀の甲より年の功で自分も歳を取って俯瞰で物を見れるようになると気付く。いやぁ其通りだったなと。

創作は最短ルートで金にすべきという持論なんですけど、商業主義に最適化された創作は作者もユーザーも幸せになると思うのですよ。結局、作品で金稼げた人が偉くて凄いのかっていうとそうなんです。売上と評価軸ってほぼイコールなので。闇雲に努力して時間と精神だけ消耗して何も手に入らず学習性無力感ばかりが鍛え抜かれ成功体験を踏めない状態が続くと創作意欲は徐々に失われ廃人になってゆきます。好きな物を殺して数字を出す為に最適化された商品を作る思考まで持っていけるとタガが外れたように楽になります。顧客提供価値の最大化に作者のエゴは不要なのです。

↑理想論と価値の提供は別ベクトル

最初は誰でも自己表現の一種として好きなように作るんだけど色気が出てきちゃうんだよね。最後まで趣味の延長でやれる人っているのかな。僕はコミケに出まくってたから非商業主義志向の人達を沢山見てるけどさ、同じ時間やってて上手く行く人と上手く行かない人が居る訳で上手く行かないと悔しいじゃないですか。大体、好きな事を突き詰めたら金になるという理論は生存者バイアスであって僕はあそこで認知的不協和を起こしたまま時間だけ経過して何も得られなかった人間になるのは絶対に嫌だと常々思っていたので全く同意できない。彼らは趣味としてやっているので勝ち負けにこだわっていない、その通り。だけど反論させて欲しい。「自分は金とか評価の為に創作やってるんじゃない!」ってやってみると分かるんだけど数年間費やすんだからそれ相応のリターンを求めるのは人間心理としてあるので、それが叶わなかった時に埋没費用化して「俺の数年間何だったの?あの苦労は?」みたいな事になりたくなければ打算的になった方が良いと思うんですよ。

5年間必死こいて創作やって思ったのは、商業主義と嗜好性(表現したい事とか利己的な物)の擦り合わせができてないとめちゃくちゃ苦労するよ。言い換えると大衆性・一般性とのバランス感覚があるかないか、要するに僕は作り手として未熟だったね。プログラム絵音楽ぜーんぶ自作だから何なんだと。それユーザーにとって何にも価値無いよ。

同じ時間があって正しい方向に向いてたら違う結果になってたんだろうと思うと本当悔しいっすねぇ。学生時代に戻れるなら、一般向けのインプットを増やすことと、生産側に二次元オタクの思想を込めたり自分の性癖みたいなものをひらけかすのだけはやめとけ…引かれるし、狭いから。と忠告してオタクにしか受けないようなゲーム作らせるのは絶対やめさせるね。

*二次元路線で成功しているインディー開発者が居るのも承知です。そこまでアンテナ低くない。ただ僕はああいう路線はもういいかなと、消費と生産は分けてドライに考えた方が色々楽だなーと気付いたので。

6. ゲームクリエイターになりたい中学生()

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↑素直にゲーム会社入って独立した方が再現性高いと思います

5年という月日は1作品に差し出すコストとして余りにもデカすぎるんだよね。小学校入学した子が6年生になるくらいの時間が1作品にかかってる訳で。漫画小説だったら最初の1年1,2巻分の売上で結果出るけどゲームの個人製作って5年やってさあどうでしょうだからヤバすぎ。

パブ契約してデビューまで漕ぎつけても専業化はほぼ無理、というよりマネタイズの仕組みが作品売上しかないので、漫画家のように原稿料で食い繋ぐ仕組みがインディーゲームにはない。まぁこんな博打やらず普通に副業可のゲーム会社就職しましょう。固定給しっかり出るので。

インディーゲー開発者は位置付け的に小説家に近い、資産家の子供で働かなくてもフルコミットできる人間以外は副業前提でやるもの。学生時代にブーストかけて一発当ててパトロン見つけてる人や学生起業してゲーム会社やってる人も例外。僕は無理だったからできる人は頑張って。

現状でアジアのデベロッパーもガンガン入ってきたりソシャゲが儲からなくなった会社も参入してきているのでインディーゲームの大資本化と過当競争*が年々進むと思われるので小資本や個人でやるのは尚更勧めないですし、やるとしても作家性型しか勝ち残れないと思います。

*本体は5名以下だが外部委託含めると100名以上等がもうザラにある。

*レッドオーシャン化・Indiepocalypseで検索してください。

23.1.5加筆修
23.5.9.画像修

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