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無声映画のシネマを再生したパブ

ブライスと言う町は小さな漁港だったのが産業革命で、石炭や鉄鋼を輸出して国際的な港町として栄えたのじゃないかな。

もう産業革命から1世紀以上、忘れられた町のように、19世紀の大きく、豪華な装飾のある比較的高層のレンガのビルがただただ風に吹かれて、大きな通りに誰もいない。


ブライスの街は、どこからでも風車が見える


ブライスがさらに発展したのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の造船業によると、ウィキペディアに書いてある。

ブライスのシネマだったパブ「The Wallaw」は、その頃の雰囲気を残している。

当時シネマ「The Wallaw」では、大勢の人が無声映画などを楽しんだんだろう。

1441席あった観客席の一階部分を客席に、スクリーンがあった場所をカウンターにして、シネマの高い天井や、扇型の形をそのまま生かしてインテリアを作っているので、まるでシネマにいるような気分が味わえる。


シネマの一階客席だったところがテーブル席に

2004年にシネマとしての役割を終え9年間空き家だった。映写室にそのまま置かれてあった巨大な映写機が、今は玄関ホールにディスプレイされている。

1937年築のまさにドラマチックなシネマ建築をそのまま生かしているだけじゃなく、カーペットや一部の椅子のデザインも、20世紀初頭の近未来風なアールデコな幾何学模様を用いている。


大きな玄関ホールには当時使った映写機が展示されている


わが家からバスで1時間ほどのブライスには、ガムトリーと言う、日本で言うとジモティのような地元で不用品を売ったり買ったりするサイトで見つけたシャンデリアを購入しに行くために行った。(私は家の照明ほとんどをガムトリーで買った)

パブのことは図書館の人に教えてもらった。というのも、図書館の入り口の前で出品者と待ち合わせをし、シャンデリアを受け取ってお金を渡した後、図書館司書にトイレの場所を聞いたら「図書館にトイレはないけどあそこのパブに行ったら貸してくれる」と言われて、行ったのがここだったわけ。


100年以上前から時計塔のある図書館(右)

ちなみにイギリスは公共トイレの数が驚くほど少なくて、困ったとき出先で人に聞くと必ず「どこどこのパブでトイレ借りればいいよ」と言われる。

でここのトイレは写真の通り、ものすごく広くて多分シネマ当時のトイレを生かしたんだと思う。

*イギリス出身である夫に「公共トイレが少ないのは、トイレで何か事件が起こるのを防ぐためなのかしら」と聞いたら「多分そう」と言っていた。

シネマだったパブThe Wallawのトイレ


シネマだったパブ「The Wallaw」は「ウェザースプーン」というチェーン店の系列で、「ウェザースプーン」系列のパブはイギリス中でみかける。

建物外には「The Wallaw」とチェーン店の名前「Wetherspoon」両方掲げている。

でもWetherspoonのパブは必ずしも「Wetherspoon」の看板を出してないところもある。(「Wetherspoon」はメニューなどに書かれているが)

Wetherspoonは古い建物をリノベーションして使っていることが多いが、このチェーン店に限らず、イギリスのパブには、郵便局や駅の待合室など昔の建物を使い「郵便局」「待合室」などをそのまま店名にしていることはよくあるので、実際の郵便局や待合室ととり違えてしまうこともある。

警察署と刻印のある古い建物は今も警察署として利用されていた

トイレを使用した後についでにお昼をそこで食べることにし、ジャケットポテトと言うイギリスで典型的なランチのメニューを注文した。

結構なボリュームで食事とドリンクが付いて1000円ちょっと、「ドリンクつき」メニューはイギリスじゃあWetherspoon以外で見たことがない。


巨大なジャガイモにツナ盛り沢山の、その名も「ジャケットポテト」

その後、Wetherspoonは我が家のそばにもあったことに気がつき、いちどチキンラップと言うものを食べたけど、これもとてもおいしかった。でもピザを食べたらあまり美味しくなかったので、食べ物はまあまあといったところ。

Wetherspoonは全国ほぼ同じ「ドリンク付きフード」があったり、イギリスとしては他には見ない、セルフサービスでコーヒー紅茶など飲み放題(価格は日本のファミレスより安い)があるなど日本のファミレスみたいで、お酒を飲まない私はカフェとして利用していている。


港そばのカフェは閉まっていた

私が住んでいる田舎の街ではカフェがコロナ以来、特に早く閉まるようになって例えば2時とかに行ってランチタイムの混雑が終わったと思ったら、3時には閉まってしまいゆっくりできない。
なので、私はパブに行く。

ブライスと言う町は美しい建物が並ぶのに、多分シネマが栄えた頃からあると思われる優雅なティーショップ(写真に撮り忘れた)以外、高価な物を売る店などは一切ない。

誰かの不用品を売るチャリティーショップとか、雑多な物を売るディスカウントショップとかだけ。

パブの向かい、ディスカウントショップ(右)


当時の経済的な繁栄を感じさせる建物と対照的な、少し荒廃した雰囲気の町も、それはそれで趣がある。

風が強い町なので、風がヒューヒュー音を立てる中、通りの真ん中に、再生エネルギーの風車が大きく見えている。


風が強くて風車の姿が目立つ街

参考文献




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