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変化に必要なのはコーディネートする「機能」

地域・教育魅力化プラットフォーム 奥田麻依子

本取材は2020年12月に発行した「2017-2020活動報告書」からのインタビューのWEB版です。活動報告書についてはこちらから
全国に広がる「魅力化」では、各地で学校や地域、行政をつなぐコーディネーターの活躍が目立つ。しかし、一般財団法人「地域・教育魅力化プラットフォーム(魅力化PF)」の奥田麻依子さんは、「コーディネーターを制度として定着させよう」という議論の中で、学校や地域が変わっていくためには、コーディネーターという「職種」だけでなく、コーディネートする「機能」が必要だと感じるようになったという。魅力化PFと島根県教委を行き来する奥田さんに話を聞いた。

「今が国の制度を変えるチャンス」

2012年から6年間にわたって島根県立隠岐島前高校のコーディネーターを務めました。地域との授業づくりや生徒のプロジェクト支援、全国募集の広報など、さまざまな業務を担当してきました。こうした経験から、学校と地域が連携する「ハブ」として、コーディネーターが必要だと考えるようになりました。
「今が国の制度を変えるチャンス」という思いで魅力化PFの仕事に取り組んでいます。コーディネーターを国の制度にしていこう議論の中で大きな学びになったのは、2019年度に文科省の「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の研究会に、報告書をまとめる事務局として関わったことです。委員には学校関係者だけでなく、自治体の首長やNPOの代表理事らがいたことも刺激になりました。

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コーディネーターの役割を分類

取りまとめられた報告書「高校と地域をつなぐコーディネート機能の充実に向けて ——社会に開かれた教育課程と高校を核とした地方創生の実現を目指して——」には、こんな記述がある。
高校と地域をつなぐコーディネーターは、現場の切実な必要感から、現在全国で140名を超えるほどまで広がってきている。しかし、その配置や育成に関わる国の制度や仕組みが追いついていないため、現場では圧倒的な人材不足と場当たり的な配置・育成が日々広がっているという状況が見えてきた。(p.10)
こうした課題を解決するための前提として、研究会では、これまであいまいだったコーディネーターの役割を「機能」として分類することを試みたという。
機能は「高校」「地域」「協働体制」の三つに分けられた。これらは報告書(p.14)の中で、下の図のようにまとめられている。

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私も含め、島根から参加したメンバーは「これからの学校教育にはコーディネーターが必要だ」「だから、コーディネーターを国の制度に落とし込もう」という立場でした。でも、全国の事例を知り、実際に現場を訪ねてみると、「コーディネーター」とは全然違うやり方でその機能を担っている人がいることも知ることができました。
例えば、長野県飯田市では、公民館主事の皆さんが地域との連携を担っていたり、バーのマスターみたいな方が地域と学校をつないでいたり。もちろん学校の先生がコーディネーターとしての役割を担っている事例もあります。コーディネーターという人を置くことだけでなく、こういう形もありだなと思えたことは大きな学びになりました。

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そこで、「機能」として分類してみたところ、学校の先生の方が得意なことも、地域の住民が担ったほうがよさそうな機能もありました。分類できたことで、全ての機能を一人で背負う必要はなく、複数人で分担できることも明らかになりました。取り組んでる地域が現状を分析する時に、「こういう機能が足りていないから、こんな人が必要だ」というような人を配置するための議論もできるようになりました。

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「スーパーコーディネーター」でなくてもいい

魅力化が広がっていく中で、コーディネーターの役割も変わってきているように思います。初期のコーディネーターは、まず学校や地域に対して、「魅力化が必要です」ということを認識してもらうところから始めなければいけませんでした。その分、個性の強い、「スーパーコーディネーター」のような人が多かったと思います。
でも、今は「必要だ」ということを前提にした上で、「どう進めていけばいいのか」と悩んでいる地域や学校が多い印象です。目指す方向が明らかになっていれば、その機能は何人かで分担できます。その分、さまざまな個性を持ったコーディネーターが各地に生まれています。色々な地域を見ていて、1人や2人よりも、3人いるとチームとして強いですね。
今後の課題は、そういうコーディネート機能を担う人たちが動きやすいようにしていくこと。現場の魅力化に取り組む人たちが互いに学び合える場所づくりに、これから取り組んでいきたいと思います。

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奥田麻依子(おくだ・まいこ)
岡山県倉敷市生まれ、島根県松江市在住。京都の大学で心理学を学び、東京のIT企業に就職。子どもも大人も多様な関わりの中で学べる環境を作っていきたいと思っていた矢先、「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」に出会い、2012年に海士町へ移住。6年間、島根県立隠岐島前高校でコーディネーターを務めた後、学校設立に向けた財団の職員などを経て、2019年に魅力化PFのチームに加わった。現在は、県・国としての学校と地域をつなぐ仕組みづくりに挑戦中。

2020.12(取材・写真/笹島康仁)

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