空飛ぶストレート
ボクシング世界バンタム級王者戦。
試合は最終12ラウンド。
挑戦者の真田は減量に苦戦し、不調だった。鉄壁のガードでクリーンヒットは受けずに来たが、足は既に限界だ。判定なら敗北は確実。
王者コブは3度防衛の絶対王者。その全てでKO勝ちを収め、盤石と言える状態である。
逆転KOを狙い、得意の右フックを打とうと踏み込んだ。しかし、右の拳は空を切った。
ガードに戻ろうとした刹那、コブの左フックが真田を襲う。
気が付くと真田の眼には後楽園ホールの天井が映っていた。
なんとか起き上がり、ファイティングポーズをとる。
状況はさらに劣勢になった。もう、倒すしかない。
距離詰めるべく前に出た真田の足がもつれた。
バランスを失った真田は、倒れることを拒み、天高く飛んだ。
意表を突かれたコブの顔面を、全身全霊のストレートが捉えた。
翌日のスポーツ新聞には『空飛ぶストレート』の見出しが躍り、そのパンチはミッキー・ロークの猫パンチと並ぶ伝説となったのだった。
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