開いてくれや、Face ID

スマホを乗り換えた。

僕のスマホ史を簡単に振り返れば、はじめて購入(してもらった)スマホはiPhone 5sだった。高校入学とほぼ同時くらいに手にしたはじめての携帯電話、はじめてのスマホだった。

その後は大学入学と同時にiPhone SE(第1世代)を、大学3年に上がる頃にiPhone SE(第2世代)を手にした。

ただ、iPhone 5sについては大学入学したばかりのときにも少しだけ使っていて、大学でできた一番最初の友達に「スマホ小っさっ」と言われたことをよく覚えている。まあ、別にそれで機種変更したわけではないですけど。

ただ、これらのiPhone、大きさ以外もきっと大きく進化しているのだろうがあまり目に見えた変化は少ない。というのも、僕のiPhone史に登場するこれらすべてが指紋認証によるパスコード解除が採用されていた。ホームボタンに右手親指の指紋を読み取らせスマホを開いていたのだ。

コロナ禍において、マスクをつけたままでもロックを解除できるのだから、それはそれは便利な代物である。

指紋認証が採用されて間もない5sを使っていた頃は、この最先端技術に興奮した。いや、しすぎた。LINEが0件だろうとツイートに誰からも反応がなかろうと「僕の指紋」で開くのが嬉しくて、暇があってはロックを解除し、スリープ状態にしてロックをかけてまたロックを解除する、なんていう究極の暇人みたいなことをしていた。

ただ、SE(第1世代)に機種変更してからは別に指紋認証に特段「すごい!」なんて思わなくなってしまった。きっと美人と結婚しても三日で飽きるというのはこれに近い感覚なのだろう。

僕はむしろ、手汗で反応せずに開けなくなったりすることに苛立ちすら覚えるようになった。最新機種を使う人たちは顔認証によるロック解除をしていて、少し羨ましいと思ったこともあった。

しかし、iPhoneのコスパを考えればSEが最強である。別に手汗で開けなかったらパスコードを打てばいい。あるいは手汗が乾くのを待てばいい。その手間を惜しむ人間がFace IDという最新技術によってAppleにカモられているのだ、と思い込むことにしていた。

ーーー

機種変更の日は、突然訪れた。

どういう訳か、iPhoneSEとiPhone13miniとで機種代金が然程変わらないというソフトバンクによる謎のキャンペーンにつられて、先日、とうとう僕のスマホからホームボタンが消えた。つまり、指紋認証からの脱却に成功したのである。

ここまでを板書でまとめるとこんな感じ


いや、「脱却に成功」なんて言ったらこれまでのiPhoneたちが可哀想だから、ここは「指紋認証と決裂した」、いや違うか、「指紋認証と別れた」のだ。

表現はともかくも、これからはFace IDという顔認証によるロック解除になった。眼鏡をしていても、マスクをしていても一瞬で「お前は斉藤夏輝だな」と聡明なiPhoneが判断して開いてくれる。

この世界に自分と酷似している人間が3人存在するという話を聞いたことがあるが、斉藤夏輝と瓜二つの顔面の人間には僕のiPhoneを開くことができるのだろうか。

ただ、その3人を招集することは現実的に不可能なので試しに変顔をしてiPhoneを開く試みを行った。

しかし、ロックが開くことはなかった。変顔をしている僕は、「僕」ではなく変顔をしていない真顔の僕が真の「僕」であるということなのだろうか。

まあそんなことを考えていても仕方がないので、とりあえずものまね芸人であるコロッケさんの七色の変顔でロック解除ができるのか想像したが、解除されるところをどれだけ頑張ってもイメージできない。否、最初のデフォルト設定を真顔ではなくて変顔で設定すればできるのではないか……

実際にコロッケさんにやらせないと分からないが、そんな妄想を膨らませ、夜、僕は眠りについた。

朝、新しいスマホがアラームを鳴らす。今はいったい何時なのか……
時間を確認した後、寝ぼけまなこの表情で大きなあくびをしながらFace IDでロックを解除しようと……

って、できない!!!!

なぜだろう。答えは言うまでもなくその顔だ。

僕の寝起きの表情はどれだけ酷いんだよ、と少し傷つけられて始まる朝を迎えた。

指紋認証だからこそ傷つけられない朝が存在していたことを、身に沁みて感じた。Appleにはもう少し顔認証の制度を上げて、変顔でも開けるようになってくれると僕、ないしはコロッケさんが喜びます。

ティム・クック、よろしく。





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