これから『採用担当者』になる方へ~面接のコツ~
春です。緊急事態宣言も発出され、今までのような春ではありませんが・・・それでも、少しずつ前を向いて活動していかなければなりません。
さて、春と言えば新社会人となった方や人事異動で配置転換された方など様々いらっしゃるでしょう。
今回は、新しく『採用担当者』として活動を始める皆さま向けに面接のちょっとしたコツを書き記していこうと思います。
筆者は、過去10年間採用担当者として活動してきました。新卒採用も中途採用も経験しましたが、どちらにも通じる根本的な部分から掘り下げていこうと思いますのでよろしくお願いいたします。
0.はじめに 「面接」って何だろう?
採用活動を行うにあたって避けて通れないプロセスが「面接」です。
近年では、直接会わなくてもインターネットを使って遠方の方とも面接ができるようになっています。現在、その傾向は加速しており今後はその流れが主流になるかも知れません。
目の前に応募者がいても、画面の向こうに応募者がいても「面接」そのものが持つ意味や意義は変わりません。だからこそ、「面接」って何だろう?と考え続けるのが採用担当者として求められることでもあります。
話を元に戻しますが、いったい「面接」とは何でしょうか。
応募者を選考するための場でしょうか?
評価していくための場でしょうか?
もちろんそういう側面があることは否定しません。実務上ではそうなってしまうことも多いでしょう。
しかし、「面接」をそれだけで終わらせてしまうのは非常にもったいない。
筆者は「面接」を『応募者と企業の出会いの場』と定義しています。
評価して、スクリーニングして、合格者を内定に導くだけが面接ではなく、応募者と企業が出会い、コミュニケーションし、納得して、合意に至るまでのプロセスの一環とでも言えばいいでしょうか。
もちろん、「面接とは何か」という答えは企業によって違うでしょう。しかし、ひと昔前のように企業側が居丈高に振舞って採用が上手くいく時代ではありません。
単なる「選考の場」以上の意味を持たせることができる企業が採用上手と言えるでしょう。(これは応募者にへりくだれという意味ではありません)
採用担当者として、そして企業の採用活動として常に「面接とは何か?」ということを考え続ける必要があると思っています。
面接のテクニックを学ぶことも重要ですが、「面接の意味」をしっかり考えている採用担当者の方が応募者にとっても企業にとってもより価値の高い面接担当者となることができるでしょう。
1.面接担当者の心得
では、ここからはもう一歩踏み込んだところで話を進めていきましょう。
面接担当者の心得とも言える部分を考えてみます。
あくまで個人的にそう思っていることですが4つ挙げていきます。
① 面接担当者と応募者は『対等』
② 基本はリラックス!
③ できるだけ公正さを意識する
④ 相手の良いところを探す
では、一つずつ掘り下げていきましょう。
① 面接担当者と応募者は『対等』
ベテラン面接担当にもなると、実はここが出来てない人が多いです。
感覚的に昔ながらの「採用する側が強い」という意識が残っているのでしょうが、現代社会では通用しないと言っても過言ではありません。
応募者も複数応募することは当たり前。企業側も選ばれているという自覚を持つことは重要です。
特に、インターネットの発達により面接の様子が広まってしまう世の中です。採用担当者の一挙一動すら見られているという意識は重要です。
② 基本はリラックス!
とは言え、ガチガチに緊張した状態で面接をせよという訳ではありません。それだと応募者側も緊張してしまいます。
人間、ストレスを感じている状況下だと上手く話せないものです。応募者が話しやすい雰囲気を作るのも面接担当者の役割の一つです。
これは、相手とできるだけ本音で語り合える環境を作り出すことで面接の中身を濃くすることにもつながります。
いきなり面接に入らずにアイスブレイクの時間を設ける、座席の配置を工夫するなどといったちょっとした「気遣い」ができるかどうかという問題です。
ちなみに、リラックスした雰囲気とただラフなだけの雰囲気は違いますし、リラックスしすぎて横柄な態度にならないようにも気をつけなければいけません。
③ できるだけ公正さを意識する
同じ職種に応募してきている複数人に対して、それぞれ全く別の質問をして評価できるでしょうか?自分は自信が持てません。
ある程度「質問リスト」などを作成しておいて、基本的な質問事項が揃うようにしておきたいところです。(もちろん、話の流れでより深い話が聞き出せたり、話が広がったりするのはOKです)
また、集団面接などでは一人ひとりのに対しての質問時間がバラバラになったりしないようにも気を配りましょう。
この辺は、応募者一人ひとりに対して真摯に向き合う姿勢です。あの人の話は面白いからその人にだけ話を振るみたいな面接では、不公平な感じが残ってしまいます。
少し難しいですが、意識だけは持っておきたい概念です。
④ 相手の良いところを探す
これもなかなか難しい。面接となると、どうしても人間は「スクリーニング」したがります。つまり、相手のダメなところを探していまう。
実は、減点方式の面接は誰にでもできます。誰にでもできるようなことをやったところで面接担当者としての価値はありません。
応募者としっかり向き合って、その人は何が得意か、どんなところが強みなのか、どういう仕事に興味を持ってくれそうかなど様々な視点から相手の良いところを探すようにしましょう。
その良いところが募集職種とマッチしているかどうか、という話です。
あれもダメ、これもダメという面接は簡単ではありますが、何のタメにもなりません。
ちなみに、相手の良いところに目を向けることは面接に限らず人事の分野では様々な場面で役に立ちます。評価も組織作りも長所に視点を向けるものだからです。
2.面接の準備をする
信じられないような話かも知れませんが、ベテランになればなるほど事前準備を疎かにしがちです。逆に言えば、準備をしっかりすることでベテラン以上の面接ができるチャンスでもあります。では、具体的にどのような準備をすればよいのかを見ていきましょう。
① 自社の情報をインプットしておく
② 採用要件をインプットしておく
③ 応募書類には必ず目を通す
④ 質問を準備する
これも一つずつ見ていきましょう。
① 自社の情報をインプットしておく
当たり前と言えば当たり前ですが、自社の情報をインプットすることは必須です。
自社のどんな部分に魅力を感じてもらえるかということにも繋がりますし、応募者からの質問に備えるという意味にもなります。
特に、昨今は残業時間や有給取得率などのベーシックな情報をきちんと答えられるかどうかは小さいようで大きな差になります。
自社の紹介資料を作るもよし、質問にきちんと答えるもよし、ではありますが濁さずにきちんと答えることが重要です。(変に濁すと「ブラック企業」と思われる可能性が高いです)
② 採用要件をインプットしておく
自社の採用したい人物像はどんな人でしょうか?
どんなスキルが必要でどんな人柄の人を望んでいるでしょうか?
何の職種を何人採用すればいいでしょうか?
自分がしっかり把握できているでしょうか?
そして面接に携わる人の間で共有できているでしょうか?
細かいテクニックについてはこちらの記事に記載していますので、割愛しますが、自社の採用要件を正確に把握することは重要です。
③ 応募書類には必ず目を通す
これもベテランになると疎かにしがちです。
当日履歴書を受け取って、面接しながら応募書類に目を通す。このような面接に応募者がいい印象を抱くでしょうか?
今は、Webでの応募にせよハローワークからの応募にせよ事前に応募者の情報を把握することは可能です。
しっかりと事前に目を通しておきましょう。
④ 質問を準備する
先ほど確認した自社の採用要件と、応募者の情報をもとに事前に質問項目を考えておきます。
応募者が多数いる場合は、最低限必要な質問をまとめたシートなどがあればなお良しです。
一度シミュレーションできるのであれば、しておく方がいいもの。その上で、実際の面接では相手の意外な一面なども見えてくるでしょう。
少なくとも、その場で応募書類を見て質問事項を考えているような面接は質が低いものになります。(偉そうに言ってはいますが、筆者もこうでした)
また、質問リストを作っても最低限必要なものに留めておきましょう。応募者それぞれで質問したい内容は異なるでしょうし、会話の流れでも変わってきます。場面によって質問を変えられると初心者脱却と言えます。
3.面接のテクニック
せっかくの機会なので、心構え的なもの以外のテクニカルな話も少々。
個人的には、小手先のテクニックを覚えて見かけ上うまくやるよりも、多少たどたどしくても応募者一人ひとりにしっかり向き合う面接担当者の方が素晴らしいとは思います。
しかし、知っているのと知らないことで差が出るものでもありますので、個人的に「大切」だと思っているテクニックに絞ってお伝えします。
① 自己紹介とアイスブレイク
② オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
③ 質問は「広げる」と「深める」
④ 聞きづらい質問は「クッション言葉」を使う
⑤ 相槌とうなづき
例によって一つずつ紹介していきます。
① 自己紹介とアイスブレイク
先ほども述べましたが、いきなり面接に入るのはNGです。どうしても必要以上の緊張感が生まれてしまいますので、できるだけ避けましょう。
簡単な方法として、「自己紹介」から入ることをオススメします。
しっかり挨拶と自己紹介から始めるだけで、十分と言えば十分です。
「それくらい当たり前だろ!」と思う方も多いかもしれませんが、筆者が受けてきた面接の中には最後の最後まで「この人名前なんだろう・・・」というような人が結構いました。
応募者は名前以上の個人情報を提出している訳ですから、採用担当者も名前くらい名乗るのは当然だと思っています。
そして、アイスブレイク。文字通り「氷を溶かす」という意味ですが、「緊張をほぐす」という意味合いで使います。
面接に入る前に多少雑談を挟んであげるだけですが、これがあるとないとでは大違いです。最初は難しいかも知れませんが、例えば「今日はご自宅からどのように来られましたか?」とか「今日は暑い(寒い)ですね~」など不自然にならない程度の会話をするようにしましょう。雑談と言えど、知らない人どうしなので、いきなり「趣味は何ですか?」と聞いても苦笑いされるのがオチです。
② オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン
簡単に説明すると、
オープンクエスチョンとは、「YES」「NO」で答えられない質問。
クローズドクエスチョンとは「YES」「NO」で答えられる質問です。
これらの質問の仕方を使い分けられるようになると面接担当者としてはグッと質が上がります。
確認するだけで済む質問ならばクローズドクエスチョン。話を広げたり深めたりする場合はオープンクエスチョンを使います。
「あなたの最終学歴は〇〇大学で間違いないでしょうか?」(クローズドクエスチョン)
と聞くのと、
「あなたの最終学歴を教えてください」(オープンクエスチョン)
と聞くのでは違いますよね?
上の質問事項ではどっちで聞いてもいいとは思いますが、質問の内容によってはクローズドクエスチョンで聞いてしまうと無意味になったりする項目もあるので要注意です。
③ 質問は「広げる」と「深める」
なぜ質問の仕方を使い分けるかと言うと、結局はここに行き当たります。
面接担当者は「応募者の魅力を理解しなければならない」のです。
クローズドクエスチョンを多用したところで、応募者のいい部分はなかなか見えてきません。
特に、相手のリアクションに応じて質問内容は変わっていきます。
関連する話題を例示して質問を「広げる」。その話題に関して話を「深める」。こういった状況に応じた質問の変化を上手く使って相手のいい部分を探していきましょう。
話を別の方向に広げることも、一つの話を掘り下げることも、どちらも重要なスキルです。
もちろん、他の応募者との兼ね合いなどもありますし時間の制約もありますが、色々な観点から応募者のことを理解しようとする姿勢は大事だと思います。
④ 聞きづらい質問は「クッション言葉」を使う
プライベートな話題に関しては、応募者によっては回答しづらいケースがあります。
基本的には就業に関連しないことは質問しない方がいいですが、どうしても聞く場合は「お答えしづらいかもしれませんが」「回答できればで結構です」など一言添えましょう。
応募者の心理的ストレスが軽減されます。
とは言え、絶対に聞いてはいけない質問というのは存在します。
各都道府県に「公正な採用選考」ということで啓発していますので、確認しておくことを推奨します。
参考URLは厚生労働省のページです。各都道府県労働局のページも確認してみてください。
⑤ 相槌とうなづき
応募者の方には適切なリアクションを取ってあげることが大事です。
せっかく回答しているのに、なかなかリアクションがもらえないとなると応募者は不安になります。(誰だってノーリアクションの人には話しづらいでしょう)
自然な会話のキャッチボールになるのが理想ではありますが、最初の内はなかなか難しいかと思います。
まずは相手の目を見ながら、しっかりと「うなずく」こと。そして、慣れてきたら「相槌」を入れること。
ここから始めましょう。
面接ではありませんが、筆者は昔「会社説明会」をテレビ収録で行ったことがあります。普段でしたら相手にうなずいてもらったり、相手の反応を見ながら話を進めるのですが、テレビカメラは無反応・・・
とても話しづらかったことを覚えています。
それからは、面接時に意図的に応募者の会話にリアクションを取るようになりました。
ただでさえ緊張している相手を無反応で益々緊張させてはダメなんだなと思います。
そして、「うなづき」も「相槌」も苦手だというあなた。最低限、笑顔は忘れないようにしましょう!
4.終わりに
採用活動は「面接」がすべてではありません。しかし、採用活動において一つの花形的な要素がある点は否めません。
「面接担当者って何だかかっこいい!」という憧れだけでは残念ながら上手な面接はできないでしょう。
繰り返しになりますが、面接はマッチングの場です。
自社の魅力もしっかり伝えて、相手の魅力もしっかり引き出す。その上で、「合うか合わないか」という話です。
『俺が面接担当者だから俺が偉いんだ!!』という心持ちだけは絶対にやめてください。
話すのが得意な人もいれば、話すのが苦手な人もいます。
話すのが苦手なだけで、素敵な人は沢山います。ぜひ、表面的な部分だけに目を囚われずに、応募者一人ひとりと丁寧に向き合ってください。
最初は緊張の連続です。慣れてくると、少し気が緩みます。これは自動車の運転によく似ています。
最初の緊張感を保ちつつ、自分なりの面接像を作り上げていって欲しいと思います。
自分が『会社の顔』である、という自覚は必要です。
そして、本当に最後になりますが一言だけ。
こういう面接のテクニックのようなことをお話すると、一家言ある人が沢山出てきます笑
ここまで書いておいて何ですが、筆者の言うことが絶対正しいという訳ではありません。色んな人の「面接」を学んで、自分の中で消化していってください。
僭越ながら、その一助にでもなれば幸いです。
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