一人称

細くて黒い影の尾が
目元に落ちて埋まっていたので

抜こうとすれば熱におぼれて
氷のように濁った清らかでは在れぬことを学び

もう何年も日の影を浴びずに
降りしきる音だけを見つめていた
右の耳は深く深く青ざめていて

分かっているんですから
分かっていないんですから

あっさりと左利きになったこの身は
またあっけなく右利きへと舞い戻って

暗い色に触れながら

欠落したじぶんを
一人称で呼ぶ

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