我が家が土地を決めた思考と過程
前回は我が家が決めた土地の条件について綴らせていただきました。
今回はこの条件をもとにどのように土地を決めたか綴らせていただきます。
・車ではなく、徒歩、公共交通機関で通勤できること
・子供が小学校・中学校に徒歩で通えること
・交通量の多い大通り沿いではなく、静かな環境であること
これに加えて、市が公開していいる河川の氾濫、土砂災害のハザードマップも確認し、被害の大きい地域ではないことを確認します(これは条件というより必須事項です)。
これらをもとに、ざっくりとエリアを絞りました。
① 勤務地徒歩圏内の郊外
② 比較的大きな駅の周辺
③ 閑静な住宅地に隣接する小さな駅の近く
まず①の勤務地近く。私は郊外の工業団地にある事業所に勤務しており、当時は事業所近くのアパートに住んでいたので、この周辺でもいいかなと思っていたのですが、小中学校が若干遠いのと、工業団地に近すぎるのものなんとなくいやだな・・と思っていました。
工業団地には小さいながらも駅があるので、電車通勤が可能です。なので、もう少し環境のよい駅付近にしようと考えました。
③は市役所が近い人気の住宅地で、この周辺では最も土地の価格が高くなっていました(東京周辺に比べたら誤差みたいなもんですけど)。その分環境が非常によく、小・中学校も比較的新しくて綺麗だし、申し分ありません。
しかし、勤務地の最寄り駅に向かうためには早起きして、電車の乗り換えをすることが必須でした。
私は自分が怠け者であることを認識していたので、それでは確実に電車通勤が続かないと理解していました。なので、こちらも候補から外すことにしました。人気エリアなので手頃な駅近物件がなかった、というのもあります。
残すは②の大きな駅周辺。ここなら、乗り換えせずとも電車通勤が可能です。
しかしここにもデメリットがあります。まず、環境が静かとはいいにくい。田舎とはいえ高さのある建物が駅前に集中しており、交通量もそれなりにあります。居酒屋が近いのはうれしい反面、静かに暮らすには相反する部分もあります。
それと、商店街のお祭り。よくPTAとか町内会は面倒だから参加したくない、みたいな話を聞きます。正直、肩が痛くなるから、みんな神輿は担ぎたくないんですよね・・・。
そして、最大のデメリットは”準防火地域”であること。建物の外周部を防火仕様にしなければならないため、建築価格が高くなってしまいます。
いろいろ問題点は目についていましたが、結局、私たちが選んだのは②の大きな駅周辺でした。
騒がしいのは駅の目の前と商店街だけで、ちょっと離れただけで静かになります。さすがは田舎・・・駅から徒歩5分離れただけなのに。
お祭りや町内会は、考え方次第です。町内会という場があるおかげで地域とつながることができるということを考えれば、メリットにもなるのではないかと思います。特に、私のように仕事の関係で移住してきた人は会社の中でしか人間関係を作れず、孤独になりがちです。
実際、わたしの娘は近所のおばあちゃん達にかわいがってもらっているし、詳しくは書けませんが近隣トラブルが発生して困り果てた際、同じ町内の人に相談に乗ってもらった結果、問題が解決したことがあります(本当に感謝しています・・・)。
地域の人に見守ってもらえる環境というのは、子育てにはとてもいいものです。家を持つということは地域の一部になるということだということを改めて感じます。
準防火地域については、その分人気がないので、駅前なのに土地の価格が安めです。最近は断熱性の高い防火窓も増えてきたし、信頼できる工務店なら価格上昇を最低限に抑える工夫をしてくれるでしょう。
それに、車一台で暮らすことによる節約を考えれば、長い目で見れば気になるほどの価格上昇ではありません(実際にはもうちょっとだけ駅から離れれば準防火地域から外れるんですけどね)。
土地を選ぶ時は、目先の価格だけではなく、何年間住むのかを想定して、インフラはどうか、通勤や通学にかかるコストや、不動産価値の騰落をシミュレーションしてトータルコストで考えたいですね。(当時は大して考えていなかった・・・)
実際、駅周辺で暮らしてみると、地方でもこんなに楽に暮らすことができるのか・・・と驚きました。
駅周辺にはスーパーもあり、家具や雑貨も買えるショッピングセンターもあります。図書館もあるし、運転免許センターも、病院も歯医者も徒歩圏内。水族館も徒歩でいけます(これはどっちでもいいけど)。車一台どころか、車なしでも生活できます。これは想定外でした。
私の住む地域は政令指定都市とか県庁所在地とかではなくて、本当に小さな田舎町です。それでもこんなに車に依存せず快適に暮らせるとは思っていませんでした。
とは言っても、駅周辺の衰退はかなり進んでいます。どこの地方都市でもよく聞く話ですが、全国展開の大型ショッピングセンターや新しい店はアクセスの良い郊外に集中し、駅前は空き家が増加しています。当時は郊外のニュータウン開発が盛んで、同時期に家を建てた同僚は綺麗な新築住宅が立ち並ぶ環境の良い郊外の地域を選んでいました。
そんな中で駅近の高齢化が進んだ地域を選ぶというのはマイナーな選択でした。
ニュータウンには栄枯盛衰がつきものです。老後は家を手放すことになると考えていたので、30年後に価格が下落して買い手がつかなくなりそうな地域よりは、歴史ある駅近の土地の方が安心なのではないかと考えていました。
また、既存の住宅地の空き家が増加しているのに、再整備せずに安易に田園地帯にインフラを整えて住宅地に変えてしまう政策に不信感を抱いていました。多数派の流れに反発したい気持ちですね。ただの反逆クールです。
こんなことを書くと鼻で笑われそうですが、私はポートランドのような「コンパクトシティ」が地方都市の理想と考えています。
ポートランドでは人が住んでいい土地をハッキリと区切り、この外はもう開発しません、と線引きをして都市機能を集中させ、人口が分散しないようにしました。その結果、人口流出が止まらない衰退地域であったポートランドは見事に再生し、今では「アメリカで一番住みたい街」として、世界中から理想の地方都市モデルとして注目されています。
日本海側の都市は人口減少の一途を辿りつづけている中で、これ以上人が住むエリアを分散させてしまうのはあまりにも非効率的です。新しいインフラを整えるのも大変だし、ただでさえ追いついていない除雪が必要なエリアをこれ以上増やすのは考えものです。
実は日本もこのコンパクトシティ構想を推進しています。「都市機能誘導重点区域」を設定し、その区域内に人の流れを誘導する政策です。これがうまくいくかどうかは、地域に住む人たちの意識と行動次第ですね。
もしも土地から住宅建築を考えておられるなら、このコンパクトシティ構想をほんと少しだけでもいいから意識して、住もうとしている自治体の政策を調べてみてもらいたいな、と思います。
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