【余剰】〜流通業の未来を作る3つのキーワード〜

徒然なるなるままに随想録を。僕の座右の銘は「Today is the first day of the rest of my life.」
直訳すると「今日は残りの人生の最初の一日。」過去に縛られず、現在を捉え、前向きに未来を思考していきたいと思っている。そんな一個人の未来予測を綴っていこう。

僕は今アパレルメーカーに勤めている。簡単に言うとモノを作って販路を設けてそれを売っている。流通小売業の非常に分かりやすいビジネスモデルだ。かつては資本主義社会における「資本」とは商品であり、モノだった。だから資本主義の理論に則って拡大再生産が前提になって資本蓄積が行われてきたわけだが、その結果、作り手が増え、モノが溢れ、そこに関わるヒトが増え、供給過多の時代になってしまった。COVID-19渦ではそうした業界へのダメージが大きいが、それはある意味必然であり時計の針が2倍以上のスピードで流れただけでいずれは直面する問題だったわけである。
 
そして現在、「資本」はモノからヒトへと変わり、教育は投資と見做される。経済学的視点では大量消費をしない原始的な段階へと戻ってきたのである。 近年はSDGsやサスティナビリティといった概念が求められているが、それを根幹としたエシカルな生き方が主流になってくる。持続可能な開発目標をなしえるためにはモノが溢れる世の中は終焉を迎えるわけである。大量の服を保有している僕とは反してミニマリストの生き方が推奨される。いかにロスをなくし無駄を省くか、そういう時代である。今後、高齢化がさらに進むと消費は滞り、モノはさらに余剰を生む。こうした問題を解決するため、未来を作るキーワードが3つある。

1つめは作り過ぎない、処分しないを前提に考えたときそれを体現する「DtoC」モデルだ。
Direct to Consumerの略だが、これまでとはまったく違った流通のシステムだ。簡単に言うとお客さんがこれ欲しいとリクエストされたものを必要な数だけ作って余剰を生まないことを理想とするモデル。顧客とのダイレクトのやり取りが可能になればAmazon等のPFの仲介をせずにものを届けられる。メーカー側にもメリットがある。 オーダーメイドに近いがそれよりもっと高速化した生産基盤が必要になるためサプライチェーンにも変化・効率化の波を生むだろう。

だが、このDtoCにおけるブランディングはより難しい。クリエイターよりもマーケターが価値を持つ。自分たちの信念に共感できる人を何人集められるかが鍵になる。つまり今まで以上に強烈な哲学・アイデンティティをもったブランド作りが必要になり支持者たちのライフスタイルを提案するに留まらず、生き方まで作り上げていくことが必要になる。そうなるととにかく「狭く深く」作りこんでいくことが必要で一つあたりの規模は小さくなる。だからこそ多産多死型で多様性に適した製品開発モデルになるだろう。そしてそれをどのように顧客まで拡散するか、PRできるかが重要だ。マーケターの市場価値は高くなる。ここまで狭く深く入り込むからこそサブスクの課金制度が成立するのである。

2つめは「クラウドソーシング」クラウドファンディングで支持する人からの資金を募りサービス・モノを開発・仕入しリターンを与えるシステムが分かりやすい。これははじめからサービスを享受したい重顧客リストを与えてくれるようなもので互いにWINWINの関係を構築できる。コスメに詳しく関心が高い女の子が世界各地に赴いて推薦の商品を買い付けてくるというビジネスもリスクを少なくして成り立つわけである。さらに過剰供給をしなくて済むことから非常に理に適っているモデルだと思う。海外ではすでに確立されている投資法のソーシャルレンディングもこの類だ。

3つめは「サーキュラーエコノミー」循環型の経済モデルが鍵となる。これまで廃棄されていた製品や原材料を新たな資源と捉え、再利用する。資源を循環させるシステムである。廃棄率の高い飲食業界もこの課題に直面するだろう。古着屋や古本屋の発展モデルといえるが、これからはもっと多様化した業態・サービスでこの仕組みが活用される。すでに確立されたAirbnbのようなシェアリングエコノミーもこの中に含まれる。不要になったカバンやアクセ・美容用品を買い取ってサブスク形態で必要な人へ貸し出す二次流通的なレンタルビジネスや使っていない倉庫やビル等の遊休資産の活用もこれにあたる。

この遊休資産界隈は今後活性化されてくると思っている。高齢化が進むにつれ、業績は出てるけど後継者のいない会社、職人は多いが経営者気質がいない会社、清算するのが面倒なので置いてある休眠会社を格安で買い取る。それを運用し再構築していくのだ。個人的には趣味も兼ねて経営難のゴルフ場を運営してみたい。

不動産投資も変革をもたらす。これまでは莫大な資金が必要であったが、資金的に追いつかなくともREITのような分散型の投資信託もある。リモート業務が当たり前になってきたことでモビリティーを取り巻く価値観も変わるだろう。たとえばこれまでは都心・駅近物件の価値は高かったが、週3出社になれば通勤時間が1時間でも、駅から10分以上歩いても広い家、というように今までとは違った価値が生まれてくるわけである。

これらは今後5年以内の比較的近未来の話だ。もちろん多くの著名人が言うように「5G」「自動運転」「AI」等、抜本的な社会変革も今後10年単位では同時にめまぐるしく社会構造を変革させる。
それらについては僕の出る幕ではないので専門家に聞いてみてください。
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