見出し画像

『一匹のモンタージュ』リクリエーション|メンバーインタビュー(今野裕一郎)

2023年10月13日(金)〜23日(月)の期間、こまばアゴラ劇場にて上演し大盛況のうちに幕を閉じた『一匹のモンタージュ』リクリエーション。
演出を務めた今野裕一郎に、公演終了後インタビューを行いました。2022年5月に初演された『一匹のモンタージュ』から、2023年10月にリクリエーション版を終えての感触を率直に伺っています。

👇『一匹のモンタージュ』リクリエーションのWorksページはこちら👇
http://busstrio.com/works/one-montage

👇そのほかのクリエーションメンバーへのインタビュー記事はこちら👇


橋本:今日が10月30日か。ちょうど終わってから1週間経って、どうですか。『一匹のモンタージュ』リクリエーションを終えて。

今野:あー、なんも整理できてへんな。うーん、


橋本:まあ、そうやね。うん。どういう日々過ごしてたの?終わってから。


今野:いや、疲れ切ってた。もう疲れて、うん、全然動けへんくなってた。


橋本:休めた?


今野:うん。腰が痛い。オペが大変やったからね。なんでやろうね、終わったあとすごいつらなったな。


橋本:多分集中してて、


今野:そうそう、気づいてない。


橋本:今回さ、目標みたいなのがさ、数の話になるけどお客さんが500人。想定では、400人ちょい来たらいいかなって思ってた。


今野:けど、まあ、でも、500目指して、


橋本:目指してたよ。でもほんまに可能かなっていうのは、ちょっとわからないとこやった。


今野:なんかでも、500いかなあかんと思ってやってたけどね、俺は、うん。


橋本:それは達成して、どうでした?


今野:その達成は、あんまわからへん笑 まあ、よかったなって。みんなのためによかったなとか、制作さん頑張ってて、みんなも宣伝頑張ってくれて、 これで500いかんってなったら、結構今までのことって伝わってないのかもなみたいな感じやったし、みんなのために、公演のために、よかったみたいな感じはあるかも。アゴラのためにもよかったと思うし。普通に席が埋まるっていうことは。


橋本:うん、今アゴラの話が出たけど、久しぶりに劇場でやって、始まる前と終わった後で、劇場でやることについて、考えたりとか感触みたいなのってあったりする?


今野:なんか一個思ったんは、演劇の場所なんやろうなって感じはするよね。劇場でやらないと演劇の人たちに演劇やと思われへんねやろうなとか思ったりした。なんか劇場って来やすいんやなとか。自分らは逆に劇場が行きにくい場所やけど、劇場が行きやすいとか見やすいと思ってる人たちが演劇の世界にはいるんやなってことが知れたっていうか。それは『TONTO』の時もどらま館で思ったんよね。 なんか嬉しそうやったお客さんが。見やすいんやろなとか思ってて。その演劇のお客さんにとっての見やすいが、ちょっと自分あんま想像できてないけど、見やすいイコールやりやすいではないから、それぞれの場所に良いとこと悪いとこあるな、みたいなのは思うかな。

橋本:今のはお客さんの立場で話してくれたと思うけど、やる方の立場としては?


今野:いやいや、別にそんなに、どこも難しいし、うんうん。まあ前も言ったけどスタッフワークが大変になるなって、どっちかって言うと。その印象の方が強い。演者が劇場入って苦労することってあるんかなって。まあ、あるか。

橋本:あー、劇場やから難しかったとか


今野: うん、大きくはそんなないような気がすんねんな。結構メリットの方がよう見えてる気がしてて、もちろん大変やけどね。スタッフワークの方は規模が大きくなって、ちょっと大変やなって感じはしてた。


橋本:今回ね、初めて照明の緒方さんと一緒にやりましたけど


今野:緒方さんはすごい。うん、よかった。ほんとにめちゃくちゃよかったね。スタッフワークが面白いなって思うこと多かったし、


橋本:どういうコミュニケーション取ったの。


今野:緒方さんは、それこそ最初に会った時に話したことが結構でかいのかなっていうか、新宿の喫茶店で会った時に、自分はこういう風に照明やってきましたっていうのをお伝えして。緒方さんがやってきたことは全然違う、例えばコンピューターに全部プログラムして自動的に出るようになってるみたいなのとかは、自分がやったことないことやから全然違うやり方をしてはるけど、お互いのやってることを別に否定するとかじゃなく、俺もそのやり方には興味があるし。そういう意味ではリスペクトしてやれたから、 最初からそれがあったのが良かったのかもって感じはもう最後まで続いてた。お互いのやり方を否定してないっていうことが可能性を開いてくれたっていうのは、演者とやる時も一緒やけど、スタッフとそういうことがやれるのは嬉しいね。

橋本:終わった後に話してたことで印象的やったのが、緒方さんが言ってたことで、自身の方法論の中ではやらないオペを今野さんはするみたいなことを


今野:そうね。ま、緒方さんから見たらめっちゃ下手なんちゃうって思うけどね(笑)。普通になんでその使い方すんねん、みたいな。


橋本:集合写真の時にね、ライティングを緒方さんが瞬時に、

今野:あーそうそうそうそう。一番良い光量の光、記念撮影用の光作った時に、この人はわかってんねやろうなみたいなのは思ったね。 フェーダー全開に俺あげるからさ(笑) だいぶちゃうんやろうなとか思ったりしたけど。でもそうね、やっぱり劇場だから、ああいうスタッフの人と会えたんやろうなって思うから。そういうのは劇場が持ってる力によって集まってくる、そういう演劇っていうものの文脈の中にあるテクニックみたいなのって、自分も知りたいと思うことではあるから、拒否してるわけじゃなく。 
だから、それが知れたのも劇場でやってよかった一つやし、緒方くんとスカンクさんのおかげで会えたのは、でかいよね。

橋本:うん。すごく長くなるかもしらんけど、今回一緒に作ったメンバーについてなんか。それぞれにって言うとちょっと大変かもしらんけど、座組みとして、どうでした。振り返ってみて。


今野:まあでも一度やってるから。一人減って、前出てない二人が増えて、みたいな感じはあるけど。基本、前やった時の印象と大きく変わるわけではなかったかな、、初演とみんなが変わっていくっていうことの面白さはあったけど、最初に集まった、あの初演の『一匹』の時の座組からいい座組やなと思ってたし。初演の時からその良さが継続されたのはよかったなみたいなの思った。まあでも言っても再演って初めてではないから、『一匹』だけじゃなくて、『黒と白と幽霊たち』とかも再演してきてるから、どんどん年数が経って変わっていく人たちとやってくみたいなのは経験してるし。

橋本: 今回で言うとさ、スカンクさんと佐藤さんが新しく入って、 リクリエーションで2人の要素を新たに入れていくのって、作り始める時からイメージはあったの。こういう役割を、みたいな。


今野:全然。でも入るやろうなと思ったし。その人達が良いってわかってるから、大丈夫っていう感じでいたからそんなに悩んでもないし、絶対入ってくるって思って、いつなんやろうって思って待ってたみたいなのはあったかな。どうやって二人を入れようって悩んではない。もう絶対入ってくるのは分かってた。


橋本:例えば、スカンクさんがソロキャンプの準備をして、あそこにいるみたいなことって、どういう段階で、「あ、そうしよう」って思ったとかある?


今野:いや、そういう決断したみたいなのは全然ないと思う。ほんまに、結果論。結果論やと思う、そういうの言い出しても。ほんまにそうなってったとしか言いようがないから、しめしめとも思ってないし。色々やってるうちにそれが残った、って感じだったと思うしね。

橋本:うん。発表の時にさ、スカンクさんと健太くん(と橋本)3人で、


今野:あ、そうそう、あれ、おっきいと思う。


橋本:そうそう。駐車場にスカンクさんがたまたまその日、サンバーちゃん(スカンクさんの愛車)持ってきてて、で、その中に、スカンクさんが使ってるいつものキャンプ道具とかがあって。スカンクさんは物を使うっていうのをさ、今まではセーブしてたって言ってて、


今野:スカンクさんはセーブしていることがたくさんあると思う。うん、いっぱいやってきたから。


橋本:なんか今回は物を使ってみようみたいなことをその時言ってて。

今野:そうそう。だから、スカンクさんがトライしてくれたからそうなったんやろうなって気がするし、 あの時一緒に組んでた橋本と健太くんがそのこと考えたんやろうな。だから俺がどう入れようとかじゃなくて、発表の中で組んだ人がスカンクさんとどうやるかみたいなこと考えていくうちに出てきたことが作品に入ってきたって感じやから。あの日、サンバーちゃんの形をロープで作ったやんか。ああいうのがやっぱおっきかったんちゃうかな。直接繋がってるかとかいうのは別にしても、ああいうことが一個起きてるってことはすごいおっきい。


橋本:それはそうやな。なんかそういう意味で言うと、佐藤さんが土を運んでくるみたいなのも、中條くんとさ、

今野:あ、そうね。きゃな(坂藤)とやった植物預けるやつ。


橋本:そうそうそう。あれもかなり意識的にやってたよね。そういう意味で、中條くんは今回、作品においてこれを投入しようみたいなのを結構入れたよねって、今野くんとも話しながら思ってた。


中條:初演の『一匹』があるのを知ってるから。知ってるっていうかあるから、結果的に。初演と切り離そうとするのも変だし、変に入れ込むためにくっつけようとするのも、変だなっていう感じは、多分ずっとあって。 ほんとそうなった、みたいなのは、こうしてみたらいいんじゃないかみたいなことを、発表作る期間でいっぱい試した感じはあるっすね。


橋本:それはすごく、中條くんの発表を見てて感じた。


今野:そうね。まあそれは「作」ってクレジットされてる自覚とかもあるやろうし。なんか色々、なんて言ったらいいんやろうな、関係性ができてるってすごいやっぱり大事で。例えば中條くんがそれを発表してくれるとか、スカンクさんが物を運んできてくれる、サンバーちゃん出してくれるって、作品を良くするとかだけじゃ起きないことやと思うんよね。それだけじゃなくて、やっぱ関係性って大事なんじゃないかなって俺は思ってて、質が変わるような気がすんだよね。モチベーションだけで作品ができるわけじゃ全くないけど、この作品に普通に賭けてるとか、この先ももしかしたら演劇作品にはみんな参加したりしていろんなとこでやったりするかもしれないけど、この瞬間この一回、たまたま集まっているこの機会に、何かちゃんとしたことをしたいとか、何かを得たいとか思っている人たちが多い現場が作れるかどうかってのはほんまに大きいことで。そういう関係性ができてたから。たとえば中條くんでいったら料理作るとか、植物のことをこの作品に持ち込もうって別の現場でも思うかどうかちょっとわからないなって思うけど。でもここではそのことを試そうと思うって、結構、自分の人生に関わることでもあるやんって思うから。スカンクさんも、 キャンプは趣味だよねっていう目線じゃなくてスカンクさんにとってほんまに大事なことなんよねっていうことが持ち込まれんのって、簡単なようで難しい。健太くんがあの大事な歌を歌ってくれることも含めてとか、そういうのって、この作品に賭けてくれてるみたいなところはそれぞれの想いとしてあるなと思ってて。それは関係性ができてないとできひんことやと思う。なんかただ良い作品つくろうねで集まっても起きないんじゃないかな。いつの間にかこうなることではあるけど、ちゃんと着実に作ってきたから起きてることでもあるっていう感じはある。

中條:今回、最初上演を作り出した時に、結構なくなってるなとか、近くなっちゃってるなみたいな、話をしたじゃないですか。関係性が変わって、

今野:それぞれの状況が変わってるからね。


中條:で実際、今回多いステージ数やったじゃないですか、13回。そのこととかはどうでした。いつも週末で、8回ぐらいばって終わりっていう感じで。今回、休憩も挟みながら、1日1ステージで、結構細かく調整しながら、最後までやり続けた。


今野:そうだね、稽古したもんね、いつもより。


中條:そのこととかで、作品がどういう風になってる感じがあるなとか、 単純に13回やってみて、どうだったかなとか、聞いてみたいですね。


今野: 13回は本当に、あー、でも別の現場でやったことがあって13回。本番やってった時にあんま楽しないなと思うことがあって。それ現場によんのかもしんないけど、積み上がってんのかもよくわかんないし、良くなってるのか悪くなってんのかちょっとわかんなくなったりすることがあって。悪い意味で言うと、こなしちゃうんじゃないかなみたいな不安を抱えた現場を他で経験したことあって心配してたけど、バストリオにおいてはそれは起きないのは13回やってわかった。けど、最後の上演がすごい良かったんよね。 それを見た時に、 あーもしかしたら一瞬、なんか中だるんでたんかもとか思う感覚はあって、結構悔しかったかもしんない普通に。みんな最後やと思ったらこんだけできるんやったら、もっとなんかあったんかなとかはちょっと思ったかも。でもそれって人間臭いから、そらそうやな!みたいなんも本当。そういう意味で言うと、ずっと高みを目指して全回やるなんてちょっと嘘やなって、綺麗事やなともちょっと思ったし。なんか今どういう状態やろみたいな、10回目とかやってる時っていうのが結構スリリングやったかもしれへん。 この後どうなんねやろみたいな。ちょっと怖いなみたいな。最後の回とか一番どうなんのやろみたいな。でもやっぱりすごく良くて、すごく人間やなって、なんか人間臭いなっていう。やっぱり感情とか想いみたいなものって舞台に乗るんやなっていうのは改めて思う、モチベーションとかって大事やなって思うし、自分がその仕事をちゃんと全うしたいなとは思ったかも。モチベーターとしても、演出家として、ちゃんとその働きを考えてみたい、もし次13回ぐらいやるなら(笑)7、8回ってほんと走り切れちゃってわけわからんうちに終わるから。そういう意味では本番中にしつこく調整やったんは新しいチャレンジやった。 自分のポジションとしては。

橋本:え、そのさ、モチベーションをっていうところの、具体的な何かみたいなのある?


今野:例えば自分はサッカー見るの好きなんやけど、 年間で言ったら19チームと当たる、20チームあれば。年間38試合数こなすわけやん。調子悪い時もあんねん選手って、20何人いて、選手はずっと調子いいわけじゃなくて落ちる時もある。でもその時のベストを見つけなあかんよな。サッカーとかそういう試合ってさ、控えがいるやん。 競う相手がいんねんや。つまり、レギュラーが調子悪くなったら控えに場所取られんねん、っていうぐらいシビアやんか。ある意味そのライバルがいるとか代わりがいるってことが、その人のモチベーションを保つものにもなってるみたいなことがスポーツではあって、残酷なものとして。もしかしたら舞台も大きい劇団とかってそういうのあんのかなとか思うねんけど。
今、これってもうジャストの人数でやってるやん。代わりもいなくて、怪我したら病気になったら試合ができないみたいな、下手したら中止みたいな現場を作ってる。調子の良し悪しもあったりが、それぞれの個人にも起こってて、そのなかの最大の良い上演をしようってことって、めっちゃ難易度高い作業やんか。そこの中で、1人1人の状況を見極めて現場を作って、体調管理して、モチベーションも大事やからあげようとしたり、でも作品そのもののクオリティ落ちてる部分をモチベーションは抜きにしてあげなあかんなとかも考えなきゃいけない、考えることが毎日のように上演の間ずっとあるから大仕事やなって感じはある。普通にあんまりちょっとここよくないなってなったら、やっぱ自分自身も見てて落ち込むから。そん時に一緒にその人が落ち込んでなかったらやっぱり結構大変やし。なんで俺が落ち込んでんのかを伝えなあかんから、ずっといい上演を続けようっていう不可能に近い理想を持って公演をやるってことは、なかなかタフな作業やなって。

中條:今回いつもの倍ぐらいのお客さん見に来てくれて、感想とかも倍くらいあったと追うんですけど、こういう風に届いてるなというか、実際にお客さんが来て、 どうだったのかな、みたいな。


今野:なんとなく、1つ印象として思ったのは、さっき劇場の話のことにちょっと戻るんやけど、いわゆる演劇の文脈みたいなもので見に来るお客さんが多かったなって感じてて。そういう質の感想が多かったな。他の場所でやってる時より絶対多かった。だから、きっと演劇のお客さん見に来たんやろうな。演劇を見たいと思ってる人が結構来たんやろうな、みたいなのは、今回起きてたことかもしれへんな。絶対数は増えたんやろうけど、感想を言わないで帰る人もおって、それもわかるって思ってる、言葉が出ればいいもんでもないから。言葉にできなくて帰ってった人がまた予約してくれて、また見に来てて、リピーターになってるっていうことが起こるのを知ってるから。言葉にならなくて感想がない人たちも増えたんやろうし、 次、公演やるときにまた来んのかなみたいな期待はあるかもしれない。


中條:今回出会った人たちも継続してね、見に来てくれたら嬉しいですね。


今野:そうね。来なくなっている人とかもまあいるからね実際ね。あと今回、演劇ってものを考えさせられた。最近そういう言説が増えたのもあるね。『一匹』あたりからかもしんないけど。やっぱ俺は、(渋革)まろんくんが書いてくれたんでかいんやろなって思ってんねんね。太田省吾さんの名前出して書いてくれたやんか。ほんと不思議よね。ああいう1個の文章で、みんなの見方がちょっと変わったんやろうな、みたいなの思う。


中條:読み方というか、見方のガイドが1個大きくできて、それで届きやすくなったりするみたいなこととか明確にありますもんね。


今野:そうだね。ま、あと、やっぱりいろんな人に見てもらうべきだよなってのも改めて思った、自分は、佐々木敦さんが本当にたくさん見に来てくれててありがたいことなんだけど、佐々木さんも言うように、バストリオはやっぱいろんな人に見てもらった方がいいよって言ってくれてるのはよくわかったっていうか。やっぱりまろんくんの視点は新しかった、自分にとっても。で、今回いろんな人たちがバストリオについて言ってくれたり、これから言おうとしてくれてることも含めて、考えてもないようなことを相手から教えられることもあるし。自分はその言葉たちが面白いなと思うけど、それに支配されることはないから、もっともらうべきなんよな。作品の外や中に関係を作っていくために、いろんな人の意見が必要やみたいに思えた。


中條:演劇とか劇場でやることとかを考えるみたいなタイミングとしては、台本を作るのは結構いい取り組みな気がします。

今野:そうだね。まあ、多分そうなんだろうね、うん、通り過ぎちゃうからね。それこそ、あの会話のシーンとか、例えば台本なって見たとき、ほんとになんでもないじゃんってこととか知ってもらうには。


中條:結構厳密に文字起こしするじゃないですか。そっから上演作る時はなかったト書きみたいなものが多分書き足したり書き足されるので、ぜひね、上演を見た人に手に取ってもらえたら。

今野:そうだね、絶対見てもらった方がいい。初演の台本があったじゃん。よくできてんなと思ったんだよね。改めて台本にちゃんとなるのって、一応上演のテイを成すために必要な設計図として作るぐらいの感覚しか持ててなかったけど、台本改めて見直した時に、『一匹』は特に、「うわ、これほんとよくできてるわ」っていうか、よく考えてあるっていうのを、改めて客観的に見れる時間があったから良かったよね。今回そういう意味で、捨てられなかったってのはあるかもね、前回の上演の持ってる何かが、やっぱいいものだったんだなと、ちゃんと考えたんだなこの時、という記録になってたから。そういうものとして機能してくれたらいいよね。台本ができて、この時、この2023年にこういうことがこういう風に行われたんだなって、アーカイブとして残るのは面白いことだなって。


中條:発表作る時に写真撮るじゃないですか。で、それからちょっと離れてもやるみたいな細かい単位で起きてるのを、今回、ちょっとおっきい全体の上演台本という形でやったのかもなあっていう感じで、終わってから思ったりしてて。


今野:あー、そうかもね。途中からみんなそうなってったよね。「初演を見直したんだけど」とか、そういうの多かったよね。


中條:なんか結構いい取り組みだったなって思います。


今野:あんなにあそこから自由になりたがってた人が、思ったよりあそこに支配されたりとか起きてて、そういういつもだとない運動が起こってた。全体性が部分にもなりうるみたいな感覚とか。更新狙うとか。そういう当たり前のことに気づいてくみたいなことがあるね。ちゃんと劇場でやったから「あ、演劇ってこういう仕組みなんだ」みたいなのとか「なんで批評家呼ぶんだろう」とか、「台本とか戯曲ってなんで売ってんだろう」とかが、「あ、そういうことか」みたいな。いつもはもうただ必死なんだよね、作ることに。いつもよりは見えるものが多かったかもね。

(編集:中條玲)


『一匹のモンタージュ』リクリエーションの上演台本をオンラインストアにて販売中です!150部限定、受注生産で12月中旬以降にご自宅に届きます。上演をご覧になった方も、遠方でご覧になれなかった方も、読み物としてお楽しみいただける台本になっています。ぜひお買い求めください!

冊子仕様:A5中綴じ冊子(公演写真付き)
デザイン:鈴木健太
写真:コムラマイ
*ステッカー3種のおまけ付き

10月13日(金)〜10月23日(月) こまばアゴラ劇場
作・演出:今野裕一郎
作:黒木麻衣、坂藤加菜、佐藤桃子、SKANK/スカンク、鈴木健太、高橋由佳、中條玲、橋本和加子、本藤美咲

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?