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そのベンダー、本当に大丈夫?発注担当がおさえておくべき「優良ベンダー」の特徴

はじめに


「システムを作りたいけれど、どこに頼んだらいいのかわからない」「システム制作の適正価格がわからない」など、ITシステムは無形サービスに近いので、費用相場がわかりにくいです。
そのため、とりあえず検索してヒットしたところに依頼しよう、と考えている発注担当者の方もいるのではないでしょうか。しかし、ITシステムを依頼する「ベンダー」を間違えると、現場の方が実際に使えない製品が仕上がったり、想定外の費用がかかったりすることがあります。

本記事では、ITシステムを依頼する際の「優良ベンダー」の特徴を紹介します。長くお付き合いができる優良ベンダーの特徴を知って、後悔のないシステム開発をしていきましょう。


優良ベンダーの特徴5つ


優良ベンダーの特徴には、たとえば以下の5つが挙げられます。

1、システム開発から実装まで自社内で行っている
2、打ち合わせに自社エンジニアが同席する
3、アフターフォロー・保守運用の話がある
4、見積りに根拠がある
5、担当者がはっきりしている

そもそも「優良ベンダー」とはどんな企業でしょうか。
「価格が安い」「技術力が高い」「知名度がある」さまざまな回答があるでしょう。しかし、システムとは毎日使うもの。どんなに高いお金を払っても使い勝手が悪ければ、そのシステムは失敗ではないでしょうか。さらに言えば、業務改善や売上アップといった本来の目的が達成できなければ失敗になってしまいます。
「発注側の課題を理解し、適正価格で使い勝手の良いシステムを作れる」これが優良ベンダーの1つの観点です。ここからは具体的にそれぞれの特徴を解説していきます。


特徴①|システム開発から実装まで自社内で行っている


ベンダーを選ぶ際は「システム開発から実装まで自社内で行っているか?」ということに注目してみましょう。
なぜなら下請が増えれば増えるほど、次のデメリットが増すからです。

・ヒアリング内容(お客様の要望・希望)が伝わらない
・責任者が誰かわからない
・外注費用・中間コスト(営業の人件費)がかかる

優良ベンダーは、技術・予算を含めて「これは自社で引き受けられる案件だろうか?」ということを考え、お客様に伝えます。「何とかします!」ではなく、できる・できないの線引きや、自社でできなければ提携先の紹介など具体的なアクションがあるのも優良ベンダーの特徴です。

■ 衝撃!73%のベンダーは外注している

2015年の経済産業省による調査によると、IT企業に依頼した際、元請のみで制作している企業は26%という調査結果が出ました。次いで50%が元請・下請の両方、23%の会社は下請のみでシステム制作を行っているという実態が明らかになりました。
元請・下請両方、下請のみで制作している企業の合計は73%で、システム制作会社の約3/4は何らかの形で外注しているという実態が明らかになりました。

参照:情報サービス・ソフトウェア産業における下請ガイドライン 改定事業及び取引適正化に関する調査研究報告書(2010年

■ 請求金額の30%は外注費用かも?

システム制作の73%が外注も併用されているという結果をうけ、こちらのデータもご覧ください。

参照:IT産業における下請の現状・課題について /経済産業省 2015年


IT産業においては、国内外注費が31%、国外外注費が1%を占め、合計で32%が外注費となっています。もし、あなたが依頼したベンダーが下請に外注している場合、請求金額の30%は「払わなくてもいい」お金かもしれません。

■ 外注しているベンダーの見分け方

外注しているベンダーを見分ける方法には以下があります。

・ホームページに一般労働者派遣事業の記載がある
・見積り期間が長い
・契約書が段階別に交わされる

開発案件がある時だけ臨時でエンジニアを増やすベンダーもいます。そのように外注しているベンダーに頼むと、コスト面・その後のフォロー面で発注者が損をするリスクが高まります。企業ホームページに一般労働者派遣事業の記載がある場合、他社や個人に外注を行っている可能性が高いため、確認するといいでしょう。
また、下請がいる場合、工数の見積りに時間がかかります。なぜなら外注先のリソース(作業できる人員×作業できる時間)がすぐわからないからです。契約書が段階ごとでわかれる企業も、外注している可能性があります。


特徴②|打ち合わせに自社エンジニアが同席する


優良ベンダーの特徴に「打ち合わせに自社エンジニアが同席する」も挙げられます。
最初は営業担当が話を聞き、2回目にエンジニアが同席するパターンや、最初からエンジニアが同席するパターンなど色々ありますが、優良ベンダーの場合、基本的にエンジニアが同席したヒアリングがあります。
コストの話しかしない営業担当と技術面の話ができるのか、発注側は不安に思うこともあるでしょう。込み入ったシステム設計の話や技術的な話は、エンジニアも同席してヒアリングをしたり、アイデア出しができるベンダーが安心でしょう。
「今、困っている」ことを解決する顕在ニーズのほかに、「今後こうなりたい」という潜在ニーズの提案をしてくれるのも優良ベンダーの特徴といえます。


特徴③|アフターフォロー・保守運用の話がある


「もしも〇〇の場合…」など、事前にリスクやトラブル発生時の対処法について説明があるのも優良ベンダーの特徴です。
システムやソフトウェアの実装後はトラブルがつきものです。システム自体に不具合がなくても、サーバーやマシンといったハードウェアの不具合や、もともと入っていたソフトのアップデートで不具合が発生することはあります。
不具合が発生した際の緊急対処や連絡先を明示してくれるベンダ―は、リリース後にも責任を持って対処してくれるので発注側からも安心できるでしょう。また、集客システムを発注した場合、解析データを送ってくれることもあります。アフターフォローは別費用となる場合もありますが、費用を明示するベンダーは優良の可能性が高いです。

特徴④|見積りに根拠がある


優良ベンダーの特徴4つ目は「見積りに根拠がある」です。システム開発では「人日」や「人月」のようにエンジニアの単価×工数で見積りが出されます。しかし、外注を行っていたり、リスク費用を高めに見積もっている企業では見積りがあいまいで、営業に確認しても納得できないこともあります。
ここからは、システム開発費の内訳を説明していきます。

■ システム開発費の内訳

システム開発費には、大きく分けて次の2つがあります。

1、直接費:システム開発にかかる人件費(エンジニア単価×工数 など)
2、間接費:開発用マシンのレンタル料・エンジニアの交通費など

このうち間接費は実費精算になるので、ベンダーは利益を直接費から出します。直接費は、①原価(労務費・販売管理費)②利益③リスク費で構成されることが多く、割合はそれぞれ原価4:利益4:リスク費2が目安と言われています。

■ 正確な見積りを出すには、自社経験が必要不可欠

工数の見積りには次の3つがあります。

1、FP法:システムを構成する各機能を定義して難易度を点数付けして見積もる
2、事例類推法:過去事例・過去実績から見積もる
3、WBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ)法:プロジェクトを作業ごとに最小単位に分けて工数を見積もる

企業ごとで見積り方法は違いますが、どの方式でも見積りには経験と知識が欠かせません。

■ 安すぎる見積りは「使えないシステム」になる可能性も

システム開発は「安ければいい」というわけではないので注意しましょう。なぜなら、安すぎる見積りの場合、
・必要な機能がない
・後から見積りをオーバーする
・維持費が高い
システムができる可能性があるからです。「安物買いの銭失い」を避けるために、発注側ができる対策は次の6つです。

・最初の打ち合わせでどのようなシステムが欲しいのかをベンダーに伝える
・紙やデータなど、簡単でもいいので書き出し、目的や課題を明確にする
・打ち合わせの際は補足・検討した記録を残す
・発注側とベンダー双方で要件の確認をする
・複数のベンダーに見積りを依頼する
・見積りの根拠をベンダーに確認する

他にも、ベンダーごとの得意分野を調査・把握しておくのも良いでしょう。
打ち合わせの際に、ベンダーから具体的な提案がない場合も要注意です。
「○○をすると××に影響しますがAとBだったらどちらがいいですか?」のように、メリット・デメリットを伝えた上でいくつかパターンを示してくれるベンダーだと安心です。発注側は専門的な話はわからないことが多いので、具体的な提案を専門用語を使わずに行ってくれるかどうかもポイントになるでしょう。

特徴⑤|責任の所在がはっきりしている


システムにエラーやトラブルが起きた際、誰がフォローするのか、責任者・担当者がすぐわかるのが優良ベンダーです。外注の多いシステム開発では、問題が起こった際に次のようなたらい回しが起こりがちです。

「プロジェクトマネージャーはBさん」
「現場担当は○○社のDさん」
「営業担当はAさん」

これでは、結局誰に相談していいのかわかりません。他にも、一時的に雇用したエンジニア(派遣など)が開発担当の場合、納品後に問い合わせをすると「開発した者は退社したからわからない」ということもあります。最悪の場合誰もトラブルを解決できなくなってしまいます。トラブル発生時に誰に連絡すればいいのかがはっきりしているのも優良ベンダーの特徴の1つです。


システムは開発がゴールではない!継続して付き合えるベンダーを


システムは発注した企業の課題を解決したり目標達成のために開発されるものです。しかし、システムを開発するベンダー選びを間違えると、使い物にならないシステムが出来上がったり、使い勝手の悪いシステムを修正するために追加料金が発生し続けるといった、費用対効果も後味も悪いシステムができあがります。

システムは、ベンダーのホームページの豪華さや知名度の高さで選べばいいものが出来上がるわけではありません。有名ではなくても、発注者の潜在・顕在ニーズをくんで、使いやすいシステムを作ろうとするベンダーは必ずあります。システム開発を自社ですべて行っていたり、継続したフォローの提案がある企業は隠れた優良ベンダーかもしれません。

見積り依頼をする際は、金額以外にも「継続して付き合えるか?」という観点を加えてみると良いと思います。貴社にとって本当に価値のあるシステムを開発できるベンダー探しのヒントになれば幸いです。


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