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ビジネス数学教育家もひとりの経営者である。いちおう株式会社の代表であり、社団法人の代表理事だ。そんな経営者の重要な仕事のひとつが「価格設定」ではないかと思っている。


明朗会計にした


私の仕事の6割以上が企業や教育機関が関与する研修やセミナー業務になる。つまり、私の仕事の6割は価格を自分で設定できたり、価格によってやる・やらないを決めることができるということになる。逆にできないのは書籍や連載記事などの執筆関係。書籍の印税(率)などはたいてい決まっており、こちらでコントロールすることはできない。売れ行きも重版するかしないかもこちらではコントロールできない。しかし、私の「本業」は価格をベースにして自由に意思決定ができる。

私は今年から自分が登壇する研修業務の価格設定を一律にした。明朗会計。どんな案件でも、私が企業研修で登壇するとき、つまり「深沢真太郎を使うとき」の価格は一律で提示することにしたのだ。もし知りたい方がいたら(お仕事の相談が前提ですが_笑)お問い合わせください。

それまでは案件ベースであり、依頼側の「お財布」で決まっていた。私も教育者だ。たとえ少ないフィーでも、でも人の成長に貢献できる場なら喜んで足を運び、全力でお手伝いしてきた。わかりやすく数字で説明するとこうだ。


こんなことがありました。


同じサービスXを提供

A社:50万円で提供

B社:20万円で提供


こんなことが普通にあった。すべてはA社とB社の「お財布」事情によるものだ。私はそれでもいいと思っていた。人の役に立てるという意味では同じだからだ。しかし、ある日こんなことが起こる。ずっとリピート依頼してくださったB社に、これからは50万円での提供となりますと私がお伝えしたところ、「予算オーバーなので来年からはごめんなさい」という返答がきた。あなたはこの事実を「そりゃそうだろう」と思うだろうか。私は思わなったのです。どう思ったか。


深沢真太郎にどうしてもお願いしたいのではなく、20万円以内でいい研修を探していただけなんだな😢


ということです。ちょっとね、悲しかったわけです。本当の意味での深沢真太郎のファンではないのだな。本当の意味での私のお客様ではなかったのだなと。

これはなにを意味するか。自分が正しいと思っている価格を設定すれば、「真のお客様」だけが残るということだ。残ったお客様に、誠実に、全力で、プロフェッショナルとして仕事をすれば、それで十分ビジネスは成立する。私はそう思った。


信用の問題


別の角度からの話をすれば。同じサービスXなのにB社は20万円、A社は50万円。これって、A社に失礼なわけです。信用を失う行為(状態)です。知らなければ、バレなければいいというものではないと私は思う。今さら感はありますが(苦笑)

これが自分のサービスの価格設定を一律にした理由。はっきりしていること。シンプルなこと。誠実なこと。嘘をつかないこと。

もちろん価格設定のロジックなんて経営者それぞれでいい。その意思決定により、仕事の機会やお客様が減ることも大いにある。その恐怖はハンパないだろう。この記事を読んでいる人の中にも、その恐怖で身動きが取れなくなっている人もいるだろう。でも、本当に価値あるものを提供できているのなら、それは安売りしてはいけない。価格で去るお客様は、本当はあなたのサービスを評価していません。そんな相手に、あなたは全力で仕事をすべきなのでしょうか。

「深沢真太郎にどうしてもお願いしたい」というお客様だけに仕事をする。「20万円以内でいい研修を探していただけ」のお客様に私の貴重な資源を費やすのはバカバカしい。その価値を正しく理解できる人に提供すべき。私はそう思う。


「ど真ん中」か「その周辺」か。


そうは言っても現実はなかなか難しい。ですよね? そこでこんな考え方はどうだろう。すなわち、私はその仕事の「位置」を定義づけるようにしているのだ。

例えば大学の講義などを依頼されたとき。あるいはちょっとした勉強会のスピーカーを依頼されたとき。これは私のサービス「ど真ん中」ではない仕事なので、金額ベースではなく想いベースでお仕事を受ける。しかし、企業研修などは私にとって「ど真ん中」の仕事である。プロフェッショナルなのだから、ここで妥協してはいけない。

「この仕事はこの価格でないとやりません」
「この仕事は柔軟に相談に応じます」

という姿勢をはっきりさせることは重要であり、かつ誠実であろうと思う。少なくとも私は今年からそうしている。人に説明しやすいし、何よりこう説明していて(自分が)気持ちいい。やはり、はっきりしていることは大事。


あなたは、いくら欲しいのか?


価格は「相手のお財布」ではなく、「あなたの気持ち」で決めるべきだ。たとえばもしあなたが研修講師の仕事をしていたとする。想像してみて欲しい。AIがシミュレーションした適正価格なるものがあったとする。あなたはその金額でビジネスをしますか? 極めて優秀な計算機が導いた価格。それをなにも考えず、まるで機械のようにその価格設定をしてビジネスをしますか? おそらくしません。その数字はあくまで意思決定の素材にすぎず、その数字を目の前にした時に沸き起こる自分の感情と向き合うはずだから。

実際は自分はどうしたいのか」
「自分はいくらもらいたいのか」

答えは計算機ではなく人間の心が出す。だから価格設定の本質は「あなたはいくら欲しいのか?」だと思うわけです。あなたは10年間でいくら欲しいのか。そのためには1年間でいくら必要なのか。そのためには1ヶ月でいくら必要なのか。そのためにはその仕事でいくらもらいたいのか。

いくらもらいたいのかという「絵」は感情で描き、そのための「戦略」は論理で描く。この話に限らず、ビジネスってなんでもそうなっていると思う。いかがでしょうか?


価格設定で悩むすべての人へ


私は一人でビジネスをしている。価格設定は重要な意思決定だ。もちろんずっと悩み、考えてきたテーマだ。でも、今年からひとつの答えに基づき活動をしている。考える必要がないものが新たにできたことは、とても大きなプラスだ。その時間と思考力を、別のことに割ける。


みんなに好かれようとせず、嫌われる勇気を持つ。
はっきりしていること。シンプルなこと。誠実なこと。嘘をつかないこと。
「ど真ん中」か「その周辺」か。
「自分はいくら欲しいのか」が基準であること。
「価格ありき」のお客様は、本当はあなたのサービスを認めていない。
逆に「あなたありき」のお客様は絶対に裏切らない。


私はこう決めた。

あなたは、どうする?



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最後までお読みいただきありがとうございました。
国内でただひとり、ビジネス数学教育家。ビジネスパーソンのための数学教育を提唱し企業人の育成に貢献。研修。講演。授業。面談。ゼミ。作家。講師育成。。。いろいろやっています。

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