見出し画像

【トンネルを抜けて】 旅する日本語 六月柿 ロクガツガキバラキ5

鉄道の渡る橋の向こう側へ
まだ陽の降り注ぐ夕暮れ、ゆっくりと

奥にトンネルが見える
耳をすますとトンネルの向こうから踏切の音が聞こえた

隣の線路に移り、前へ

橋の下には海に向かう水の流れている

トンネルに入った

線路越しに軽い振動を感じる

トンネルを抜けて


カンカンカン

オトガキコエル

ウタウコエ



「sun sun sun 降り注ぐ」

六月柿達が踊っている

「sun sun sun 赤い汁」

包まれた

「sun sun sun 降り注ぐ」

トンネルの先、光の先

「sun sun sun あなた誰? 」

何十もの無機質な目が私を見つめる

「私は‥ 私の名前は‥」

「名前じゃないよ」

「私は、」

「どうしたの?」

「私は、望む人生を得ることも与えることもできませんでした」

「なぜ?」

「ずっと嘘をついて生きてきました」

「だれに?」

「私は逃げたのです」



精霊たちは皆踊る 季節の来ない森の中




本日も【スナック・クリオネ】にお越しいただいき、ありがとうございます。 席料、乾き物、氷、水道水、全て有料でございます(うふふッ) またのご来店、お待ちしております。