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2023年12月の記事一覧

【絵本】かなしみさん、きみと素敵な絵を描こう

【絵本】かなしみさん、きみと素敵な絵を描こう

おはよう、かなしみさん
昨日の夜はあまりに君が痛むから眠れずに朝が来てしまったよ

おはよう、かなしみさん
今日もそこにいたんだね

おはよう、かなしみさん
そういえば、そこにいたんだったね
今日は少し出かけようか?

悲しみと過ごす時間のこと

いつまでも、一緒にいられる訳ではないことを知っているよ
だから、しばらくここにいていいんだよ

おはよう、かなしみさん
お出かけが多くなったみたいだね

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【読書感想文と訳詩】一生をかけて内なるシヴァ神を追い求めた詩人(1529字)

【読書感想文と訳詩】一生をかけて内なるシヴァ神を追い求めた詩人(1529字)

”The Poem of Lal Ded”という素晴らしい本を読みました。インドの神秘主義者で詩人ララの詩集です。自らも詩人のRanjit Hoskoteが、英訳した146の4行の詩と詳細な解説が含まれています。ララはインドのカシミール地方で、14世紀に活動していたそうです。

ララの詩の特長は簡潔で力強いことです。

寺院からもう一つの寺院へ、隠者は息継ぎのために立ち止まらない
魂よ、これを掴め

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「うつくしい音」(詩)

「うつくしい音」(詩)

私はうつくしい音で在りますように

そりゃあ
光の方が速く手を触れるでしょう
けれど
音の方がよりつよく
触ることをつよく
あなたに与えてくださるだろうと思うので

だから
私にはうつくしい音が鳴ってほしいと
祈るのです

精神科医中井久夫の詩魂 

日本精神医学会のウルトラマンである中井久夫は類いまれな語学と文学の才能の持ち主でもあった。1934年生2022年没の88年の人生で実に多方面で鬼才を発揮した、日本が世界に誇れる医学者文学者である。阪神淡路大震災を経験し、大学病院の病床を開放して避難民を受け入れたなど、行動力もたいへんなものだったが、何よりそれまで本邦にはなかった,PTSDという概念を用いて災害に遭遇した人々の「心のケアに」当たった

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ワクワクの感情はその人の固有周波数を反映する

ワクワクの感情はその人の固有周波数を反映する

今年最後の満月だった昨晩、息子の友人Cくんが遊びにきた。ニューヨークで生まれ、2つの国籍を現在も持つ彼は、大晦日にドバイに移住するという。

年明けに受験の息子だが、もう当分Cくんに会うことはないということで、勉強は午前で終わらせて、昼過ぎから夜まで2人で過ごした。

私は仕事の合間に家に出入りしながら2人のようすを垣間見ていた。漫画(少年ジャンプ)を読みながら、ときおり興奮した声で叫んだりしなが

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「無口で無愛想で無為な」(詩)

「無口で無愛想で無為な」(詩)

いい子だねと言った口に
泥だんごを

かわいいねと言った手に
ひっかき傷をつけた

無口で不愛想でへの字口の
私の苛立ちをそばにしゃがんで笑ったのは
あなただった

遠くまで歩いて
道も天気もころころ変わったけれど
振り返るときの心持ちは少しも変わらない

わがままで 無遠慮で 生意気な
話すことをできるだけ聞いてくれたひと
あなたは

あなたはひとりでいったこと
私にはわかった
あなたに怒りをぶ

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わかれを越えて

わかれを越えて

わかれは告げなかった
粗鉄色の空のしたで
都市の歩道橋で
アパートの狭い通路で
まるで挨拶のように
わかれはかわされていたから

荒野の電話ボックスは
風に吹かれて思慮深げだ
電話番号と悲劇の関係は?
糸電話による世界通信の方法は?
電話を何回鳴らせば約束は果たされるのか?

大切な言葉はいつも遅れたので
ぼくらは思い出を
未来に保留していた
それにしてもよくいったものだ
 〈ぼくらは〉と・・・・

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「ひかり」(詩)

「ひかり」(詩)

迷うことも 苦しむことも
光が見えないからじゃない
光が見えるから
ゆらり 小さく揺れるものだから
ただ一点の 美しさを刺すから
ひとは迷い
苦しむのだと

迷い描いた 私の光
苦しみ紡いだ 私の怒り
誰の目に それが光とは映らなくても
これは私に根差した灯火
この一点から指し示す
私の行方を 私の前へ
ただ生へ 私の生へ

生きて死ぬ光
それが私の光

冬大佐詩集

冬大佐詩集

これから
何年か後に

私はこの家を捨てて
着の身着のまま
歩いて旅に出るかもしれないと
思うともなく想っています

そして
道道で同じような人々と出会い
旅を共にしているかもしれない
その頃には街からも人影が消えて
十人くらいの仲間とともに
街から街へと
歩き旅を続けてゆく

それもまた
最高にいいなと
思えるんです

きっと
そのような日々が
日本中で
始まると
思うんですよ

いや、もう

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「夜より咲く」(詩)

「夜より咲く」(詩)

静かな星の降る
静かな故に降る

導きは山を越えて
導きに山は光りて

小さな言伝を託して
小さな言葉は連なる

瞬くあいだより近づいて
瞬く合の手闇に口付けて

遠くへと流れていく夜よ
遠くまで流される日々に

目を閉じましょうか
閉じて睫毛の哀の朝

先触れが鳴く
先触れが咲く