たまむし

ラーメンをえさに育つネコです。 【研究分野】分子生物学・合成生物学 【趣味】読書・音楽…

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ラーメンをえさに育つネコです。 【研究分野】分子生物学・合成生物学 【趣味】読書・音楽鑑賞・食べ歩き

マガジン

  • アッセイを考える

    分子生物学的な感覚を養うための思考実験🧪

  • 信じた音を奏でよう

    音楽を少し深く掘り下げる🎸

  • 本は人を耕す

    ゆったりと、真にカルチベートされた人間になる📚

  • 心をすっきり軽やかに

    日々を楽しく過ごす習慣☕

  • 合成生物学への道

    合成生物学を様々な視点から見つめ直す🥼

最近の記事

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独立系書店の存在意義がわかった日

 「本は港」というブックイベントに妻と一緒に参加した。  本は大好きだが、ジュンク堂書店や紀伊國屋書店など大型書店に行くのが好きで、独立系書店はあまり訪れたことがなかったのが実情だ。妻や知人の話を聴くにつけ、独立系書店で自分自身の生きづらさに寄り添った本が見つかって嬉しいという人が多いように思う。独立系書店自体が多くの人にとって意義があることは理解しつつも、「少なくとも自分自身にとっては存在意義はあるのだろうか?」と思うことが多々あったのも事実だ。 常識をぶち壊す漫画  

    • 【アッセイを考える #3】ミカエリス・メンテン式の拡張

       「アッセイを考える」シリーズの3回目である。前回は、細胞外では働くが細胞内では働かない酵素の謎に迫り、細胞という区画化された環境がもたらす特殊な状況を紐解いてきた。  今回の題材は細胞を一旦離れ、酵素に着目してみることとする。 【問題3】  酵素Aは以下の反応を触媒することが知られている。 $$ S_1 + S_2 → P_1 + P_2 $$  この酵素がミカエリス・メンテン式に従う時、速度論的パラメータ($${K_{m,S_1}}$$:$${S_1}$$に対する

      • 2024年上半期のアルバム6選 -年々切なさが愛おしい-

         歳を重ねていくにつれて、どうしても思考や嗜好が硬直化しがちになり、新しいものを受け入れにくくなってしまうと思い、最新の情報に触れるようにしている。「温故知新」が人生のモットーだ。私の場合、研究者として自身の専門分野周辺の情報はもちろんキャッチアップするし、趣味の音楽に関しても様々なジャンルを聴くように心がけている。  いわゆる音楽好きと呼ばれる人々に比べると、音楽を徹底的に掘り下げるタイプではないが、実際に様々な音楽を聴いてみると、世の中には素晴らしい音楽が溢れすぎていて感

        • バイオインフォマティクスの肌感覚

           元々、学生の頃から企業研究者の途中まで純粋なウェット研究者としてキャリアを歩み始めていたが、少し前くらいからドライにも興味を持ち始め、様々な幸運も手伝って、今はドライを中心に研究している。いわゆるバイオインフォマティクスの世界へと徐々に歩み始めたのだ。  まだまだ駆け出しではあるし、「ウェット研究者がドライに転向する」という内容自体も今ではありふれたものにはなってしまったが、ドライに挑む上での肌感覚的なところをこの場で伝えられたらいいなと思う。ドライの研究にどっぷり浸かる

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        独立系書店の存在意義がわかった日

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        • アッセイを考える
          3本
        • 信じた音を奏でよう
          2本
        • 本は人を耕す
          2本
        • 心をすっきり軽やかに
          4本
        • 合成生物学への道
          2本
        • 本当の意味を追い求めて
          4本

        記事

          2024年上半期のベスト本 -思考の基盤を持つこと-

           2024年上半期は63冊の本を読んだ。なるべく空いた時間に本を読み進めることを意識したためか、想像以上に読書していたことに自分自身が驚いた。今回もジャンルごとに良かった本を紹介していきたい。 評論 『映画を早送りで観る人たち』(稲田 豊史)  一時期「ファスト映画」という言葉が流行ったし、この本を読まなくても結論はある程度想定できるかもしれないが、重要なのはそこではない。本書中の「評論はその人の個性が最も如実に現れるもの」という主張こそが、「評論を読まなくても結論は明白だ

          2024年上半期のベスト本 -思考の基盤を持つこと-

          常に変わり続けること

           哲学者・東浩紀氏の著作『訂正する力』を読んだ。本書を読む中で感じたことは多々あれど、人間は常に変わり続けていくことが大事なんじゃないかと改めて確信した。この「変わり続けていく」ことに関して、科学・生命・精神のそれぞれの観点から見つめ直したい。 科学とは反証可能性  科学史を学ぶときに必ず登場する、「ポパーの反証可能性」というものがある。これは「提唱された理論が今後の実験や観察によって反証されうる」ことを以て、その理論を科学的とみなす姿勢である。ニュートンの古典力学やシュレ

          常に変わり続けること

          【合成生物学への道 #2】生き物を構成する素子たち

           以前の記事で、生き物は本質的に論理回路であり、合成生物学はその論理回路を人工的に構築する学問である、と述べた。今回は、論理回路を構成する素子に着目してみたい。 論理回路における"素子"をどう理解するか?  論理回路において、素子は論理和や論理積など様々な種類が知られている。たとえば論理和は、2つの入力がともに「1」となるときにのみ「1」を出力し、それ以外の場合には「0」を出力する素子である。  生物内にもこの"素子"があるはずだ。生物内の論理回路における"素子"とはすな

          【合成生物学への道 #2】生き物を構成する素子たち

          【アッセイを考える #2】細胞破砕液と細胞内環境を分け隔てるもの

           「アッセイを考える」シリーズの2回目である。シリーズ初回となる前回は、必須遺伝子の機能推定を題材に、遺伝子ノックダウンとタンパク質阻害が、本質的には類似した操作でありながら、それはあくまで一面的な見方でしかないことを紐解いてきた。  今回も「分子生物学的な感覚」を養うべく、細胞の中身がどうなっているかをイメージするような問題を取り上げてみよう。 【問題2】  酵素Aを発現する細胞を樹立した。細胞破砕液中では酵素Aの活性を観測することができたが、細胞内では酵素Aの活性を観

          【アッセイを考える #2】細胞破砕液と細胞内環境を分け隔てるもの

          【合成生物学への道 #1】生き物は複雑な回路である

           近年バイオものづくりの潮流に応じて合成生物学という学問が注目されている。生き物に対して人工的な操作を施すことによって、自然界には存在しない生き物を生み出す学問である。食糧難やエネルギー不足を解決しうる手段として期待されているが、使いようによってはデザイナーベイビーや生物テロ兵器にも繋がってしまう諸刃の剣でもある。今回は倫理的な問題は脇においておくとして、技術的な話をしてみたいと思う。 合成生物学の本質は、"生物内における論理回路の構築"である  合成生物学は、いわば生き物

          【合成生物学への道 #1】生き物は複雑な回路である

          【アッセイを考える #1】遺伝子ノックダウンとタンパク質阻害は同じようで違う?

           合成生物学に携わる上で、自らアッセイを考えて構築することは避けて通れない。教科書的な知識のみを頼りにしていると、実際にアッセイを成功させるのは難しかったりする。そこには、ある種の「分子生物学的な感覚」が必要なのだろうと思っている。  そこで今回から、「特定のアッセイニーズを含むお題が与えられた時、どのようなアッセイを考えるか?」という思考実験を展開してみたい。回答はあくまで例であり、答えよりもむしろ思考過程に重きを置いている。具体的で明確なビジョンが描けているわけではないが

          【アッセイを考える #1】遺伝子ノックダウンとタンパク質阻害は同じようで違う?

          地方都市移住で心持ちは変わる

           元々大都市圏に住んでいたのだが、社会人を機に大都市圏を離れて地方都市に住むことにした。生まれてからずっと大都市圏に住んでおり、大都市圏での生活にマンネリを感じて住む場所をガラッと変えてみたいと思っていた。最初は生活のギャップに慣れなかったが、意外と自分にはこの生活が合うのだということを、数年かけて実感してきた。 外面的な利便性よりも内面的な精神性を  大都市圏と地方都市の比較に関しては、外面的な利便性にフォーカスした評論が多く、当人の心境にどう影響を与えるかに関してはあま

          地方都市移住で心持ちは変わる

          新卒で大企業の研究職を選んで良かったこと7選

           以前、とある大学の先生と話す機会があった際に、「新卒で研究職に就くなら、大企業か? ベンチャーか?」というテーマで議論を交わしたことがある。私も就職活動時にはベンチャーに訪問して吟味していたが、最終的には世間でいうところの大企業に絞って就職活動したので、議題にはとても興味があった。  私は学生時代に、学会発表での受賞や論文発表を通して、研究者としてそれなりに自信を持っていたが、新卒入社後にその自信は簡単にへし折られた。入社した最初の2年間は特に、周りの研究者たちに追い付く

          新卒で大企業の研究職を選んで良かったこと7選

          カバー曲が照らす原曲の輝き

           カバー曲は時として原曲を上回る感動をもたらす。心に残るカバー曲を聴くと、原曲とカバー曲を行き来しながら、その楽曲に溺れてしまう。カバー曲が原曲の玉を磨き、その原曲がカバー曲をさらに彩る。この相乗効果こそがカバーの醍醐味である。私が最近身を溶かしたカバー曲を5つ紹介したい。 SUPER BEAVER / コイスルオトメ(原曲:いきものがかり)  通勤電車内でSpotifyのプレイリスト「J-Rock ON!!」を聴いていた時に本曲が流れ、あまりの衝撃に繰り返し聴いてしまっ

          カバー曲が照らす原曲の輝き

          物語を創る意味

           物語は人類の偉大な発明である。イスラエルの歴史学者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏が『サピエンス全史』で指摘するように、人類は虚構を信ずる能力を以てこの社会を維持してきたと思う。今回は、そんな「物語」と私を巡る歴史をつづめて話しながら、物語を創る意味を見出していきたい。 実用書は必ずしも即効薬ならず 基本的にあらゆることは、①「理解」し、②「納得」して、③「習慣」とすることで、日常に溶け込んでゆく。①「理解」についてはある程度の読解力があれば難しいことではないし、③「習慣」

          物語を創る意味

          「責任を取る」ことの意味

           「責任が取れんのか!」と聞くと、給料を減らされたり、別の役職や事業所へ左遷させられたり、挙句の果てには辞職させられたりするのではないか、とちぢこまってしまう人もいるだろう。「何があっても私が責任を取るよ」と上司が言っていたとして、「じゃあ何をやってもいいんだ」と楽観的に捉える人もいれば、「結局そう言いながら部下に責任を押し付けるんじゃないか」と斜に構える人だっている。  「責任を取る」ことが具体的に何を意味するのか、冷静になって疑問に思う。社会の中で明確な意味を共有できて

          「責任を取る」ことの意味

          DXよりも大切なアナログ意識

           巷で騒がれている「DX(Digital Transformation)」という言葉に対して、ネガティブな印象を持っているのは私だけではないはずだ。DXは目的ではなく、あくまで手段だ。それなのに周りでは「DXを実現します!」という〝手段の目的化〟が横行している。大抵は業務効率化のためにDXを実施することが多いと思うが、その施策の本質はデジタルでないこともある。たとえアナログであっても、個々人ひいては集団としての意識醸成の方が重要だろう。どんなものが例としてあるだろうか? 電

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