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B型肝炎訴訟から学ぶ「国が危険性を放置することもある」という事実

国が勧めていることだからといって、安全だとは限りません。かつて、国が義務化していた集団予防接種によりB型肝炎に感染し、命を落としたり、今でも病気への不安、差別や偏見に苦しんでいる人がいます。病気を防ぐために行われていた集団予防接種で、なぜB型肝炎ウイルスへの感染被害が広がってしまったのでしょうか。


集団予防接種での注射器使い回し

B型肝炎訴訟の経緯については、厚労省のサイトにも詳しく公開されています。できるだけ、公的機関の資料を使って記事を書きたいと思っていますが、厚労省の資料は膨大すぎて引用が難しいです。他の資料がないか探してみたところ、中國新聞デジタル(2021/4/30 6:32)に、コンパクトにまとまったコラムがありました。


「B型肝炎最高裁判決 全面的な救済、国は急げ」
集団予防接種での注射器使い回しが原因のB型肝炎。20年以上前に発症、いったん沈静化し、後に再発した患者が国に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が今週示した判断である。
(中略)
集団予防接種が原因のB型肝炎を巡って、最高裁が国の責任を認める判決を出したのは、15年も前のことだからだ。
危険性が指摘されていたにもかかわらず、乳幼児を対象にした集団接種の現場では、注射器の使い回しが続いた。安全対策をないがしろにしていた国が交換をやっと義務付けた1988年まで、約40年の間に多くの人がB型肝炎に感染した。45万人に上るとの推計もある。

国は、責任が2006年の判決で明らかになってからも、おざなりな対応を続けた。その時の原告以外には救済措置を講じず、11年になってようやく、菅直人首相が患者らに謝罪した。全国訴訟原告団・弁護団と和解に向けた基本合意書を結び、翌12年には、救済のための特別措置法が施行される。裁判を起こして国と和解すれば、給付金を受け取れるようになった。
(以下略)
中國新聞デジタル(2021/4/30 6:32)より

集団予防接種の現場では、注射器の使い回しが行われていて、危険性が指摘されていたにもかかわらず、国は40年もの間放置していたということです。

厚労省のサイトには、「B型肝炎 いのちの教育」という教材が公開されています。こちらも、わかりやすくまとまっていると思います。

※教材として作られたものなので、教員が生徒に理解させるポイントがマーカーされています。

肝炎教材1

注射器の連続使用が、40年にもわたり放置されていたことも書かれています。

肝炎教材2

1948年から始まった集団予防接種により、B型肝炎に感染してしまった人たちに対して、2006年にやっと国が責任を認めました。けれども、救済に関する特別措置法が成立したのは2011年。救済措置が認められても、感染した人たちの体は、感染前には戻せません。

このように、ある病気を予防しようとして、多くの人が別の病気になってしまったという例が過去にありました。しかも、国は危険性を指摘されていながらも、放置していたのです。

新型コロナワクチンに関しては、アメリカなどでも「緊急使用許可」であり、通常の審査をしていません。「国が勧めていることだから安全なはず」という考えで接種を決めるのではなく、自分で納得がいくまで調べてから、接種するかしないかを決めることが大切だと思います。

Vol.33では、最新(8月4日)に公開された「副反応疑いの報告」を取り上げています。

意図的な使い回しではありませんが、新型コロナワクチンの接種現場でも、ミスによる注射の使い回しが起きています(Vol.32参照)。