文徒ジャーナルVol.18
Index------------------------------------------------------
1)マスメディアも問われていることを忘れてはなるまい
2)経済ジャーナリスト・内橋克人が亡くなった
3)最近書店閉店事情
4)朝日新聞「文芸時評」をめぐって桜庭一樹と鴻巣友季子が見解を発表
5)批評の「悲劇」をめぐって
6)色川大吉死去をめぐって
7)芥川賞作家・李琴峰に対する小説家兼医師の知念実希人による「国籍」差別ツイート
----------------------------------------2021.9.6-9.10 Shuppanjin
1)マスメディアも問われていることを忘れてはなるまい
和田静香がツイートしている。
《千駄木の往来堂さんに「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」をぎっしり置いてもらっているのを、友達から知らされる。こちら、私がかつて自費出版したときに親切にしてくださった素晴らしい書店さま。涙です。》
https://twitter.com/wadashizuka/status/1434039333514727424
毎日新聞は9月4日付書評面で和田静香の「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」(左右社)を取り上げている。評者の中島京子は次のように書いている。
《これは、主権者がその代表である国会議員と「対話」する本だ。たとえそこに意見の違いや対立があっても、「対話」はなにかを生むのだと、希望を感じさせてくれる。
最終的に、この「対話」こそが民主主義だと、著者は気づくのだが、その過程で読者も、お上にお任せ的な政治ではない、一国の主権者としてのふるまいとはどういうものか考えさせられる。》
https://mainichi.jp/articles/20210904/ddm/015/070/024000c
日本の政治は(著者の和田と香川一区の野党政治家・小川淳也の間で繰り広げられているような)対話を拒否し、言葉を殺してしまう政治が10年にもわたってつづいている。対話を拒否するということは、弁証法のダイナミズムを拒否することにほかならず、そんなものは民主主義でも何でもない。
毎日新聞は9月4日付で「『言葉が決定的に欠けている』 立川談四楼さんの菅首相像」を掲載している。言葉を商売にしている談四楼の指摘が鋭い。
《私は、政治家は言葉が第一だと思っていて、それが決定的に欠けている人だな、と思って見てました。》
政治部メディアに対する苦言も忘れない。さすが、だ。
《なんだ、記者さんも出せば声が出るじゃないかと。今まで何していたんだ、その元気があるならなぜ今まで食い下がってこなかったんだとも思いました。菅さんは追加質問を避けていましたよね。そうしたシステムに抗議するとか、普段やるべきことがいろいろあったんじゃないか、そういう横暴を許してきて、最後に帳尻を合わせるように大きな声を出したようにも見えました。》
https://mainichi.jp/articles/20210903/k00/00m/010/253000c
朝日新聞の尾形聡彦が引用ツイートしている。
《従来の会見では食い下がっていなかったのに、昨日の菅首相ぶらで急に声を上げた記者への皮肉。的を射た耳の痛い指摘です》
https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1434078563485896704
これは平野啓一郎のツイート。
《現首相は、コミュニケーション能力に深刻な問題を抱えていて、それが、コロナ対策を非常に悪化させている。彼の言っていることを、最早誰もマトモに聞こうとしない。が、そんなことは官房長官時代から明々白々で、当時、彼の言いなりになっていたメディアの真剣な反省を本当に聞きたい。責任は大きい。》
https://twitter.com/hiranok/status/1433226933727215618
「文春オンライン」は9月4日付でプチ鹿島の「なぜ君は総理大臣になったのか…『感動レベル』でひどかった! 菅首相、辞意表明までの“動き”」を発表している。
《マスコミの責任も大きい。菅氏をこれまで「最強の官房長官」とか「喧嘩に強い」とか「勝負師」などとムードを平気で報道してきた。それは幻想だったのである。オモテに出てきたら何でもなかった。GoToトラベルやワクチンに意地になって賭け続けた姿は「負けの込んだギャンブラー」だった。》
https://bunshun.jp/articles/-/48453
毎日新聞が9月3日付で掲載している「上西充子さん『表向きの言い訳だ』菅首相、退陣理由にコロナ対策」で、「ご飯論法」や「やぎさん答弁」という言葉を生み出した上西は次のように語っている。
《さらに言えば、メディアも菅首相の就任当初、実家が農家のたたき上げであるなど、実直そうなイメージ作りに加担していたと思います。「パンケーキおじさん」として持ち上げたこともありました。官房長官時代、「その指摘は当たらない」「承知していない」などと記者の質問を突っぱねてきた菅さんが、本当に首相にふさわしかったのか、きちんと報じてほしかったと思います。》
https://mainichi.jp/articles/20210903/k00/00m/040/297000c
政治部メディアが菅政治の共犯者であることは否定し難いはずである。
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