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9/5発売【文春電書】文春文庫9月新刊&おすすめの既刊

文春文庫は名作の宝庫です。
創刊から本年で50年目を迎え、数千冊の既刊の中には令和の世でも十分に楽しめる作品が数多ございます。これを売り出していくのもマーケティング部の腕の見せ所。最近、そろりそろりと売り続けて結果が出始めている作品がこちら。

有吉佐和子『青い壺』

文庫版は1980年の刊行以来、累計発行部数は26万部。初版から43年目で26万部というとそれほど大きくはないかもしれませんが、ゆっくり、じっくりと売れ続けている影の名著です。『3000円の使い方』が大ヒットした作家の原田ひ香さんから「こんな小説を書くのが私の夢です」という推薦をもらい、売行きが加速しました。

無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、十余年後に作者と再会した時——。人生の数奇な断面を描き出す名作です。

それでは、今月新刊のご案内です。

佐伯泰英『夢よ、夢 柳橋の桜(四)』

6月から連続刊行開始の新シリーズ『柳橋の桜』4巻。
娘船頭・桜子の大冒険の物語がついに完結。
波乱万丈の旅を経て 新しい生き方を探す桜子と小龍太。 魚河岸の老舗・江の浦屋5代目が仕掛ける異国交易の仕事の 未来と大きさに惹かれる小龍太。 小龍太との祝言を前に、船頭の道を進むべきか悩む桜子。 そんな中、オランダ人画家コウエルの「二枚の絵」が それを見た人々を少しずつ変えてゆく-― 早朝の柳橋・神木三本桜に願うのは、大きな儲けか、夢の実現か。 猪牙強盗の事件の謎の解明、そして 未来への希望が詰まった最終巻。

辻村深月『琥珀の夏』

『かがみの孤城』『傲慢と善良』の著者が描く、 瑞々しい子どもたちの日々。そして、痛みと成長。 かつて、カルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡から、 少女の白骨遺体が見つかった。 ニュースを知った弁護士の法子は、無騒ぎを覚える。 埋められていたのは、ミカちゃんではないかーー。 小学生時代に参加した<ミライの学校>の夏合宿で出会ったふたり。 法子が最後に参加した夏、ミカは合宿に姿を見せなかった。 30年前の記憶の扉が開くとき、幼い日の友情と罪があふれ出す。

石田衣良『炎上フェニックス 池袋ウエストゲートパークⅩⅦ』

ネット放火魔を逃がすな!
女子アナのストーカーと化したADが自殺した。 ネットで始まったのは、被害者であるはずのホノカへの集中砲火。 激しく炎上した彼女は、休職に追い込まれる。 なんとか立ち上がろうと、マコトとタカシに助力を求めたホノカの前に、 真のモンスターが現れる! 表題作『炎上フェニックス』ほか3篇を収録。 時代の空気を鮮やかに描くIWGPシリーズ第17弾。
解説・額賀澪

吉永南央『薔薇色に染まる頃 紅雲町珈琲屋こよみ』

80万部突破! ヒロインは小粋なおばあちゃん <紅雲町珈琲屋こよみ>シリーズ最新文庫!
コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営むお草は、愛用していた帯留を一度は売ったものの、手放したことをずっと後悔していた。 そんなある日、それが戻ってきたと連絡がくる。 さっそく東京の店に向かうお草だが、そこで、旧知のバーの雇われ店長が血痕を残して忽然と姿を消し、どうやら殺されたらしいという話を耳にする。 その後、お草は、新幹線の中で何者かに追われている母子に出会い、事態は思わぬ方向へ……。 お草さんが容疑者に!? 逃避行を続けるふたりはどこへ── 甘いだけでない、ちょっとビターな物語。

島本理生『星のように離れて雨のように散った』

小学生の頃に失踪した父をモデルにした創作小説と宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を修士論文に選んだ大学院生の私。賢治の未完の物語に導かれるように、私は押し込めていた過去の自分と向き合っていく。 そして結婚を前提に同棲を望む恋人の亜紀との関係に息苦しさを覚え始め……。 迷いや痛みを抱えるすべての人に光射す傑作小説。 解説・柴崎友香

藤井邦夫『逃れ者 新・秋山久蔵御用控(十七)』

生かして捕えるが役目だが、 歯向かう外道には、 容赦は無用!!
久蔵に恨みを持つ、盗賊一味の企みとは? 大人気シリーズ第17弾!
八年前の大捕物で、逃亡した盗賊一味の頭、 霞の藤兵衛が江戸へ舞い戻ってきたらしい。 報せを受けた南町奉行所吟味方与力の 秋山久蔵は、早速岡っ引きの幸吉らに 探索を命じる。同じころ、幸吉の婿入り先である 船宿「笹舟」の様子を窺う、妙な女が目撃される。 盗賊一味との関係を疑う久蔵だったが。

坂井希久子『江戸彩り見立て帖 粋な色 野暮な色』

江戸のカラーコーディネーターが大活躍!
天性の色彩感覚を持つお彩と京男・右近のバディも絶好調! ご近所のお伊勢に懸想する対照的な二人の男。果たしてお伊勢が選ぶのは?

天祢 涼『あの子の殺人計画』

虐待されている「あたし」。お母さんを殺してしまえば――
小学五年生の椎名きさらには、先生にも同級生にも言えない「我が家の秘密」があった。社会派と本格が見事に融合した傑作ミステリー。

阿川佐和子『アガワ流生きるピント』

いつの世も、不安や悩みが尽きないもの。 家族、恋愛、仕事、生活の不安…37の悩みに、 『聞く力』の阿川佐和子が60ン年の人生経験を総動員して、 ズバリお答えします。 「子供ができない」「妻が認知症に」「部下を叱れない」「上司の言葉に傷ついた」「70歳の母に好きな人ができた」「なりたいものが見つからない」「高校生の娘が話をしてくれない」「母が亡くなり、父が『死にたい』と嘆きます」… 時々ちょっとピントのずれた、阿川流生活術。

東畑開人『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』

われらがカウンセラー、東畑開人の 一般書デビュー作、文庫で登場!
文庫版あとがき「8年後の答え合わせ、あるいは効果研究」を付した 完全決定版です。
人生に痛めつけられたからこそ、 人を癒やす力を得た野生の医者たち。 彼女・彼らと共に過ごした 灼熱のフィールドワークの記録! 気鋭の心理学者にしてカウンセラーは、精神科クリニックを辞め、学界を揺るがすこと必至のフィールドワークを開始。沖縄で人々の心を癒やし続ける謎のヒーラー達を取材しながら自ら治療を受け、臨床心理学を相対化しようと試みた。「野の精神医療」と学問の狭間で辿り着いた驚愕の発見とは? 涙と笑いの学術エンタテインメント。

柳澤健『2000年の桜庭和志』

「プロレスラーは本当は強いんです!」
グレイシー伝説を打ち破った日本総合格闘技界のレジェンドが歩んだ道。 タイガーマスクに憧れプロレスを志した少年・桜庭和志。アマレスを学び、プロレスラーになるとサブミッションレスリングに夢中になり、総合格闘技の世界へ。 そしてPRIDEの主役となり、UFCのレジェンドであるホイス・グレイシーを107分の死闘の末に下し、伝説となった。桜庭が“リアルファイトのタイガーマスク”になったのである。 2000年の桜庭の活躍を振り返りながら、グレイシー柔術とは何か、MMAとは何か、格闘技とは何か、UWFとは何か、プロレスとは何かに迫る。

日本文藝家協会編『雨の中で踊れ 現代の短篇小説 ベストコレクション2023』

今をときめく作家たちの、キレの良い短篇を一冊に。
日本文藝家協会が選ぶ短篇傑作選。AI、リモート、宇宙探索、家族の不和、孤独死、LGBTQなど現代のテーマに人気作家が挑む。

リディア・ケイン、ネイト・ピーダーセン、福井久美子訳『世にも危険な医療の世界史』

爆笑と恐怖が交互に襲い来る強烈な歴史書。
梅毒には水銀風呂! 夜泣きする子にはアヘン! 水難事故にはタバコ浣腸! かつて人類の常識だった残念すぎる医療の全てがここに。

今月も最後までお読みいただき有難うございました。
また来月もお楽しみに!

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