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連休前日【ショートショート】

俺は大型連休の前日なのに、財布をなくした後のような暗い顔をしていた。
なぜなら納期が近い仕事が、山のように残っているからだ。

電車に揺られながら、仕事のことを考える。

(どうやったら終わんだろう……)

色々な方法を考えるが、とても終わりそうにない。

会社では、同僚たちが連休の話で盛り上がっていた。

楽しそうな同僚たちの顔。
旅行の打ち合わせをする女性たち。
「今日は飲むぞー!」と、盛り上がる男性たち。

(俺だけ仕事があるのか?)

そう思うと、なんだか腹が立ってきた。

何としても休みたい。
俺だけ休日出勤なんて不公平だ。

そう思った俺は、スケジュールを見直し、段取りをやり直した。
そして、効率重視で仕事を進める。

すると……何とたまっていた仕事が一気に片付いたのだ!

(まじかよ。やってみるもんだな)

俺は気分が良くなった。
これで皆と一緒に休める。
そう思ったからだ。

よほど嬉しそうな顔をしていたのだろうか、上司から声をかけられた。

「やまだー! 機嫌が良さそうだな。仕事は片付いたのか?」
「ハイ! 段取りを見直したら、面白いくらい早く片付きました!」
「おぉ! 流石だな! じゃー悪いけど、この仕事も頼む」
「はい?」
「休日出勤の届け、こっちで出しとくから、よろしくな」
「え? あの? ちょっと……」 
「あぁ、締切は連休明けの月曜だから」

当然仕事を振られた俺は困惑した。

(このヒトは何を言っているんだろう?)

正直、本当に何を言われているのか理解できなかった。
そんな俺をよそに、上司はポンッと俺の肩を叩き。

「じゃ、任せたぞ」

そう言って帰っていった。

〈了〙

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