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禁煙室

原因不明の疫病が蔓延する荒廃した世界。
政府は疫病から人々を守るため、タバコを吸うことを義務付けました。

俗に言う「喫煙義務令」です。

タバコに含まれる物質が、疫病に有効だ。
このことに気がついた政府が、疫病から身を守るために施行されました。

国民は疫病から身を守るため、いたるところでタバコを吸います。
その煙は消えることなく、少しつづ空気を汚していきます。

そして、いつしか新鮮な空気を吸える場所は無くなってしまいました。

また、タバコには健康に害を及ぼすデメリットも多く、多くの人々は苦しんでいました。

中毒症状、発ガン、味覚障害、止まらない咳……。

そんな人々を救うため、政府が設置したのが「禁煙室」です。

禁煙室では、タバコのデメリットを無くすための「酸素」が供給されていました。
禁煙室の中だけが、唯一綺麗な酸素を吸える場所になったのです。

私、サムは禁煙室で働いています。
私の仕事は禁煙室の管理と、クリーンな酸素を人々に供給すること。

ある日、禁煙室に新しい仲間が加わりました。
彼の名前ははジョン。
彼は私と一緒に、酸素供給装置の調整をやってくれます。

ジョンは礼儀正しく、人懐っこい性格でした。
私はジョンと共に作業を進めながら、雑談を楽しんでいました。

ジョンとの会話はとても楽しく、喫煙室での仕事もはかどります。

そんなある日。
ジョンがふと口にした言葉が、私の運命を変えることになります。


「ねぇサム。君は本当に、禁煙室がみんなを守っていると思うのかい?」


私は首をかしげました。
禁煙室は政府が市民を守るために設置したもの。
なのに、守っていると思うのか? と聞かれている。
不思議に思ってジョンに聞き返すと「何でもないよ」と、はぐらかされてしまいました。

それから時間が経つに連れ、ジョンの言葉が重くのしかかってきます。

私の仕事はみんなの健康を守るため、クリーンな酸素を供給すること。
でも……もしそれが嘘だったら……?

疑念が高まり、私は禁煙室のシステムを調べ始めました。
そして、驚愕の真実を発見したのです。

なんと禁煙室の酸素供給装置は、有害なガスを供給し、疫病を広めるための仕組みだったのです。

タバコの健康被害を防ぐために、禁煙室で酸素を吸う。
すると、有毒なガスが体に入り疫病を発症。
疫病に対抗するため、またタバコを吸う。

抜け出すことのできない、最悪な循環です。

ジョンはその秘密を知っていました。
だから私に、守っていると思うのか? と、聞いてきたのです。

私は、自分が騙されていたことを悟りました。

「なんのためにこんなことを……」
「税金さ。政府にとってタバコは格好の儲け話なんだ」
「……金か……金のために……」

私はジョンと共に、真実を世界に広め、政府の陰謀を暴露することを決意します。


ジョンと私は秘密裏に証拠を集め、疫病の真の原因が政府による人為的な行為であることを示すために努力しました。
一方で、喫煙義務の犠牲者たちにも手を差し伸べました。

しかし、私たちは政府に目をつけられ、追われる身となりました。

情報を集め、協力者を探す。
そして、追手に捕まらないように身を隠す。

闇に潜り地道に活動を続ける日々。

私たちは真実を伝えるために活動を続け、多くの人々を味方にすることができました。

そしてついに……。

私たちは国際的な注目を浴びることに成功。
政府の陰謀が明るみされ、国民……いや、全世界が知ることになったのです。

そして、疫病の原因だった禁煙室は廃止。
疫病への特効薬も販売され、喫煙令も解除。

一躍時の人となった私たちは、救世主として有名になりました。

それから数年後。

タバコの煙に汚染された空気ももとに戻り、人々は数十年ぶりに、自由に呼吸できるようになったのです。

〈了〉

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