まごころを君に。
いや、先日のセクレポに続いてエヴァネタかよ。とか言われそうですが、庵野監督が好きな作品だそうで読んだのがきっかけですが、自分も好きな作品のひとつです。
アルジャーノンに花束を
あらすじとしては、
ある日、幼児並みの知能しかない知的障害を持つ主人公が、「マウスを使った実験結果から、手術をすれば後天的に知能が向上していくかもしれない。」
という話を大学教授にもちかけられる。
もちろん危険のある手術だけれど、それよりも主人公は
「もし、自分も賢くなれたら、みんなと普通に仲良く話せるようになるかもしれない。ある日、突然いなくなった家族に会えるかもしれない。」
という希望から、その手術を受けることにした。
その手術の効果から、主人公はどんどん知能が向上していき、やがて周囲からIQ180以上の天才と言われる知能を手に入れるのですが…。
というお話ですね。
なんか面白そうですよね。
確かに読めば読むほど続きが気になって、読み進められるけど、途中からは心がえぐられて手が止まりそうになります。。。
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読み応えのある点。
読み進める事に、主人公の書いてる文章が、治療の効果があらわれていく度に、
最初は、ひらがなやデタラメな文章、ただの文字の羅列だったのですが、
治療の効果で、基本的な文法や句読点だったり、言葉遣いだったり、知識を取り入れて、最初数ページの頃から比べると、どんどん知的な文章になっていくんですよ。中盤は、ハチャメチャなぐらい賢くて読んでるこっちが追いつけないレベルで。。。
そこも読んでいて面白い点かと思います。
主人公は、読めなかった本や文字を理解して、どんどん賢くなっていく。自分をサポートしてくれていた女性ともいい雰囲気になっていき、恋に落ちたり。。。。
しかし、
どんどん読み進んでいくうちに、主人公が知性を身につけていくと、知らなくても良かったかもしれない、色んな真実や物事を知ってしまいます。
周囲の人たちが、知的障害の自分を蔑んで、非人間的な扱いをしていたり、自分を馬鹿にしていたり、罵っていたり、嘲笑う言葉や非人間的な態度で扱われていたことを理解していきます。
周りから愛されていると思っていた主人公が、周囲からどんな扱いを受けていたか、現実を知ってしまう辺りは、読んでいてかなり辛い場面でした。
主人公は、
知的障害者や実験台のモルモット、天才の自分ではなくて、
彼は、ただ「一人の人間」として、見て欲しかったんですよね。
これは、この主人公だけじゃなくて誰もが心に感じてることだと思います。ただ一人の人間として、接して欲しい。愛されていたい。認められたい。
とか、そんな当たり前の感情がこの主人公からより強く伝わってくる。
あまり読む前にネタバレをするのもあれなので、この辺りで黙っておきますが、ラスト50ページの勢いがすごい。
反則すぎる仕掛けだけど、これは泣ける。
皆さん。機会があれば、ぜひ読んで欲しい作品です。
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この作者さんがこんなに、
小説に出てくる主人公と同じように、色々経験してきて、傷みや苦しさを沢山知ったからこんな誰かの心に訴えかけられる文章を書けるのだろうなと思った。
主人公が、人間として見られていないことを知った瞬間の苦しさや馬鹿にされたことを知った時の激昂、心が踏みにじられる思いを描写できるのは、
きっと、された経験のある人間にしか分からないことだから。
この作品のプロローグで、
「知性というのは、他人に対して思いやりを持つ能力がなければ、知性なんて虚しいものです。」
と、
作者さんが書いてて、その通りだなって。
ここで作者が「知性なんて虚しい」と書いてるけど
決して、知性が無駄って意味ではなくて。
知性というのは、勉強ができる、要領よくこなせることではなく、
誰かに触れて、体験して、失敗して、痛みを知って、身について人に優しくなれる、だからこそ感受性や経験こそ、それが人の人間性すなわち、知性だと僕は思う。
最後に。
この方は知性というより、愛に溢れてる素敵な作家さんだなと思います。
この本を読み終えて、そっと思い浮かぶならこの言葉だろう。
「まごころを、君に。」
拙い文章ですが、読んでくださって
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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