【野口健'S VOICE】能登半島地震の被災者への寝袋支援活動
2024年元旦、能登半島を襲った地震と津波。大津波警報とともにテレビから流れる避難を呼びかける強い口調のアナウンサーの声に不安ばかりがよぎった。
1月の能登半島、避難所では必ず真冬用の寝袋が必要になるはず。災害支援協定を結んでいる岡山県総社市の片岡市長にすぐに連絡をとり、支援活動を開始。氷点下対応の寝袋や寄附金の募集を開始した。地震発生から2か月以内で、僕自身も7回、被災地に行き、約8,800個の寝袋を届けることができた。
東日本大震災以来おこなってきた寝袋支援活動だが、今回ほど寝袋の必要性を感じたことはない。地震発生当初は、支援物資を届けるには自治体などを通して行う必要があった。むやみやたらと避難所に持って行くと支援物資のコントロールができなくなるからである。自治体に預け、自治体が避難所や被災者に配る。しかし、こちらが自治体に届けても届けても、手元に寝袋が届かない被災者から「寒くて寒くてたまらない。寝袋が欲しい」「どこに行ったら寝袋がもらえるのですか?」という悲痛が直接届くのだ。
そこで、2月からは、自治体ではなく、個人からの寝袋の希望にも応じることとしたところ、寝袋の希望が絶えないのである。様々な理由で避難所に入れない人たち。「自宅避難なので支援物資をもらうことができない」「支援物資の配布は平日の昼間が多いので仕事で取りに行けない」「寝袋の配布があると聞いて朝6時から並んだがもらえなかった」など多くの人たちが寝袋を求めてきた。
さらに驚いたのが、地震発生から2か月近くたった2月下旬、自治体の指定避難所からの連絡だ。「道路の復旧が遅れており、支援物資がほとんど届かない、毛布1枚でずっと過ごしている、少しでも寝袋を送ってもらえないか?」と。自治体の職員もほとんど休みも取らず、避難所の運営や様々な仕事に追われていることはよくわかる。「避難所ガチャ」という言葉もでた今回の震災。これが日本の避難所の現実かと絶望を感じた。南海トラフや富士山噴火など多くの大災害が予測されている日本。早急に避難所のシステムを整える必要がある。
(2024年2月執筆)
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