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宗教界は未来を語れ

※文化時報2020年10月10日号の社説「宗教界は未来を語れ」の全文です。

 新聞は時代を映す鏡である。読者の皆さまにニュースをお届けする役割に加えて、後世に記録を残すという使命がある。宗教専門紙が紙面を作ることは、宗教界の現在を形にとどめておく営みである。

 正直なところ、歴史の評価に堪える新聞が毎号できているかどうかは、心もとない。仕上がりに自信を持てることの方が少ない。ただ、10月7日号は違った。政府の緊急事態宣言から半年に合わせた小原克博同志社大学教授(宗教倫理学)の大型インタビューがあったからだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う出来事のうち、政府の緊急事態宣言は私たちに強烈なインパクトを残した。人との接触機会の8割削減や外出自粛が呼び掛けられ、街から人が消えた。そんなことがわずか半年前にあったことですら、世間はもう忘れかけているかに見える。

 緊急事態宣言の検証なくして、コロナ禍がもたらした、あるいはあぶり出した社会問題について考えることはできない。あの困難な局面をくぐり抜けた節目にこそ、宗教界の対応を振り返っておくべきではないか―。これが、あれだけのまとまった分量のインタビューを企画した目的だった。

 ふたを開けてみれば、小原教授は戦時体制との類似性から緊急事態宣言の問題点を読み解いただけでなく、コロナ後における宗教界の役割について提言した。過去と現在だけでなく、未来を語ったのだ。

 とりわけ、新型コロナとは別の感染症がパンデミック(世界的大流行)を引き起こすと予測し、コロナ後を「インターパンデミック」と捉える見方は新鮮だった。そのためには、これまでのような持続不可能な消費社会に戻るべきではない、という考え方にも、大いにうなずけた。

 記事にしなかったところでは、それでも社会は9割方、元の形に戻るだろうとの悲観的な見通しを示し、そうならないためにも、宗教界の奮起が必要だと説いていた。

 小原教授は、あらゆる学問を良心の観点から横断・融合する新たな学問「良心学」を提唱している。自身がセンター長を務める同志社大学良心学研究センターは、「パンデミック時代における良心-世界観を更新するための学際的研究」と題した講義シリーズを動画で配信している。コロナ後を生きる上で、示唆に富む知見を提示している。

 ここでいう良心の根底には、学校法人同志社の建学精神と共に、キリスト教精神がある。宗教のまなざしが、いかに社会を変える可能性を秘めているかを物語る取り組みともいえるだろう。

 新聞は時代を映す鏡であると書いた。翻って宗教はどうか。時代を照らす光ではないのか。もしそうであるなら、宗教は過去や現在だけでなく、未来をも照らし、正面から語る必要がある。

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