小説集「老紳士の記録、あるいは覚めない夢の話」のnote版です。
私は誇り高き文鳥である。見よ、この美しい純白の羽を! 今、私の隣にはミルフィーユという名のごま塩頭の文鳥がいる。外見だけならミルフィーユどころか豆大福である…
ある大店の娘が臥せって三月ほど経った。何が理由かも分からず施しの仕様も無い。医者も祈祷も全く役に立たない。 家の者がほとほと困っていたところ、旅姿の僧が店に…
文吉は真白な文鳥であった。文吉は可憐な十姉妹の娘・松子と共に小鳥屋から駆け落ちをした。文鳥と十姉妹、許されざる恋であった。月明かりだけがそっと二人を見守ってい…
私の名前はオンギョウキ。老紳士と名乗った方が皆さんには馴染みがあるだろうか。 飼い主であるイトウ氏の『文鳥生活』という本で私のことを知った読者も多いだろう。…
(九) 短い眠りからさめると、文太はゆっくりと辺りを見回しました。羽をつくろっている文鳥や、まだ眠っている文鳥もいます。みんな、楽しい夢からさめてしまった…
(七) ざわめきを遠くに聞き、文太は目をさましました。辺りはもうすっかり暗くなっています。文太はあくびを一つすると、足で頬をかりかりと掻きました。 「そ…