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伏線回収がどうでもよくなる、日常と友達の大切さ/ドラマ『ブラッシュアップライフ』最終回

(最終回をまだ観ていない方は、スルーしてください)


あれもこれも伏線だったのか!

そんな場面が数多く登場した最終回。今回も加藤の「粉雪」が聴けて満足。いや、そこじゃない。加藤、ちゃんと歳取ってる感を醸し出してたね。いや、そこじゃない。

あーちんが、人間に生まれ変わることを拒否してまで挑んだ人生5周目。まりりんと二人で、なっちとみーぽんを救うためにパイロットの道へ進み、着々と準備してきた。

正直なところ、あーちんの4周目が始まった頃、「そこまでして人間に生まれ変わる必要あるんだろうか?」と思いはじめていた。仲良しだったなっちとみーぽんとの関係性が崩れ、疎遠になってしまったからだ。だが、先に亡くなってしまうばかりだったあーちんが初めて見送る側になると、自分の中でドラマの意味合いが変わってきた。葬儀の帰り道、いつものトンネルの前でやるせない顔になるあーちんに涙した。

最終回、朝帰りの4人が仲良くトンネルを歩いていく姿に、いろいろな思いが込み上げてくる。どこにでもいない俳優4人が織りなす、どこにでも転がっている友達との会話。語彙力なくて申し訳ないけど、さすがの4人。ラストのマイラバにもジーンとした。自分にも、こんな帰る場所があるだろうか。

中村機長に毒を盛ることまで計画していたのに、不思議な巡り合わせで回避。河口さんグッジョブ。こんな展開、誰も思いつかない。そして、ミッションを終えたらすっぱりとパイロットを辞め、地元で公務員と保育士に戻ったあーちんとまりりん。爽快感と達成感といったらなかった。

58年後の未来も、鳩も、スーさんも伏線回収。もう一度初回から観たら楽しめそう。そう感じたのも事実だ。ただ、終わってみて一番心に残ったのは「他愛もない日常と、友達と過ごすくだらない時間」への愛おしさだった。

気のおけない人たちと、時間を忘れてお喋りしていた遠い日々。無駄にも思えるあの時間が、いかにキラキラしていたかを思い知らされた。いつまでもあると思っていたのに。誰かが結婚したまでは皆で集まれたけど、出産、育児、家族の転勤、介護など、それぞれの暮らしの形態が変わると、「今忙しいだろうな」「この時間はメールの方がいいかな」「誘わない方がいいかもな」などと互いに気を遣う関係へと変化。大人になるってこういうことか。諦めにも似た感情に支配されていた。

メールやLINE、オンラインは便利だけど、やっぱり直接会ってべちゃくちゃお喋りする楽しさには敵わない。コ〇ナ禍に突入して早3年。絶望を味わいながら暮らしてきた今だから、余計にそう感じるのかもしれない。

死んでしまった人が、自分の人生を生きなおすという非現実的な設定。なのに、とてもリアルな物語だった。特に、平成の世を生きてきた人間にとっては。

ああ、友達とお喋りしたい。どうでもいい話を、延々とお喋りしたい。メールやLINE、オンラインじゃなくて、直接会ってお喋りしたい。

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