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毎回ラストでキリキリする/ドラマ『何曜日に生まれたの』

日曜劇場『VIVANT』が終わって、はや2週間。朝ドラ『らんまん』が終わって4日。いや待て、まだアレが残っている!……というわけではないが、毎回視聴しているのがこのドラマである。これまでの回すべて、心をざわざわさせるラストが秀逸だ。あんなラストを見せられては、次回が気にならないわけがない。

野島伸司さんの脚本ということで身構えて観ていたものの、サスペンス? 恋愛もの? 社会派? と、しっくりくる括り方ができないままもうすぐ最終回を迎える。

(以下、ドラマの内容を含みます)

10年間コモリビトだったすいが、人気ラノベ作家・公文竜炎の作品づくりの題材になることで徐々に人と関わり、高校時代の友人らとも再会。過去と現在のさまざまな思いが交錯し、すいも同級生たちも本当の自分を見つめる機会を得てきた。

彼らに裏の裏の顔があることに驚きつつも、人間には少なからずそういう部分があるよねと思い直している。中盤までまったく先が読めなかったこのドラマ。それぞれが本来の姿をさらけ出せるようになって、ちょっと物語が着地しそうだな、すいも過去のトラウマからようやく解き放たれたなと思っていたところに、今度は公文の真実が見え始める。

前回、盗聴されていたことに怒りを爆発させたすいだけど、焼肉をひとり食べる姿は、もうコモリビトの頃の彼女ではなかった。瑞貴、リリコもひとり焼肉。みんなが少しずつ大人になっているのが分かる。車に牽かれそうになったすいが突然思い出したのは、10年前、バイク事故にあった雨宮と彼女を救った人物のこと。アガサは公文の妹では?ということはうっすら予想していたが、こっちは想定外だった。初回のあのシーンが、こんなに重要な答えを携えていたなんて。

ここ数回の内容から、私たちは公文が作家という仮面をかぶることで自分を保っていたのだと知ることに。バスの中でのシーンから、おそらく妹の蕾だけではなく、公文自身も幼少の頃から母親によって辛い仕打ちを受けていたことがうかがえる。彼にとって、自傷行為を繰り返す妹を監視することは、自分を監視することでもあったのかもしれない。

思いがけず、公文との接点を思い出したすいの気持ちが一気に走り始める。ただ、いくらコモリビトから抜け出したからと言って、いきなり蕾に会いに行くのはいいのだろうか……(個人的見解ですが)。だって、1人1人これまでの経緯も状況も違うし。しかも、すいの場合は父・丈治がそばにいたではないか。世間的には冴えない漫画家かもしれないけれど、引きこもったすいを支えてきたのだ。だが蕾は違う。近くに頼れる人物がおらず、最後に爆発してしまった。そんな彼女と友達になろうとするすい。うまくいくのだろうか。

躊躇する間もないすいの行動は、危う過ぎてドキドキする。それでも、少しだけ公文に変化が現われたのは救いである。ただし、その変化が結果的に事件になるわけで、すんなりいかないところがやっぱり野島作品だなと勝手に自分を納得させている。あれは、公文自身が自分を許せないことから起こったのだろうか。魂を悪魔に売って、アガサを小説に書いてきたから。

次回はいよいよ最終回。すいは、公文と蕾の兄妹を閉ざされた世界から救い出すことはできるのか? また同級生たちはどのように進んでいくのか。会社に戻ったリリコを含め、全員のことが気になる。エンディングで傘を持ってすいの前に現われるのは、公文竜炎こと三島公平なのだろうか。

容易くハッピーエンドで終わるとは思えないのが野島作品……ってことで、固唾をのんで最終回を待っている。それにしても、大河ドラマの今川氏真といい、今回の公文竜炎といい、溝端淳平くんはいつの間にこんなにいい役者さんになったのだろう。『天国と地獄~サイコな2人~』の八巻も『古見さんは、コミュ症です。』の片居も良かったし、ここ数年の彼の密かなメキメキ感凄くない? 次も何か出ないかなあ。

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