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一話丸ごと綾野劇場だった/ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』第8話

今週は、岡山天音くん演じる綾野がメインの回だった。

(以下、ドラマの内容を含みます)

最初はミヤビの過去を知る怪しい人という印象だった綾野だが、途中から少しずつ彼の人間性が見えてきた。ついには大迫教授を裏切る形で、ミヤビの記憶障害の原因を突き止めたい三瓶に協力。また、麻衣との結婚は実家の病院を守るためだと判明した。

親子関係や生き方など、綾野の人生を軸にしたこの回は、多くの人が自分を振り返る回になったと思う。自転車事故によって脳を損傷し、喜怒哀楽が激しくなった父親・勲に「俺が望んでいるのは、お前がお前の人生を生きることだ」 と言われたとき、綾野はどんなにうれしくて、且つ衝撃だっただろう。

誰かのために自分を押し殺す。そんな生き方をしてきたやさしい彼が、素直に欲しいものに手をのばした開放の回だった。それは、西島家や綾野のために自分を犠牲にしようとした、不器用な麻衣も同じである。

「いっしょに自分の人生を生きよう」

綾野と麻衣の展開に、涙がつたう。うわー、私最近ドラマで泣きすぎでは……。地域医療の現実と父親の過去を知り、さらにその勲から背中を押されたことで、綾野病院もカテーテル技術も、麻衣も諦めたくないと素直に言えた綾野。この回の彼は、戸惑い、情熱、やさしさ、父親に対する気持ちの変化など、ことばは少ないけれどさまざまな表情を見せた。天音くんの演技にしびれた。野心家で、何事も割り切ったクールな人物だと思われた綾野が、実は心あたたかく熱い人物であることは徐々に見えてきてはいたが、第8話で最高潮に達した。

まあ、ミヤビに3回告白して、3回ともフラれた過去は三瓶に暴露されたけど。いいじゃないか。麻衣の気持ちに鈍感だった彼が、素顔の彼女にようやく気づいて大切なものを失わずに済んだのだから。

毎回、嫉妬心メラメラのDr.三瓶は微笑ましい。ミヤビへの愛がダダ漏れで。三瓶って、ちょっと猫キャラ。犬キャラじゃないよね。断然猫キャラ。ラストで綾野に「何も解決してませんよね?」とツッコむ姿が、いかにも彼らしい。

ミヤビが、綾野と美術館を訪れたこと、結局何も思い出せなかったこと、そして綾野と2人で会うのはこれきりだと告げた際のやり取りと数秒間の沈黙シーンも好き。

「なんでそんなこと僕に言うんですか?」

…………。

「わかりません」

「なんでそんなことを?」と尋ねた三瓶は、少々動揺してそう返したように見える。ミヤビが婚約について思い出したことに気づいた?

このときのミヤビに、「思い出したって、はよ言ってやって!」と思ったり、「でも結局、以前の関係は思い出せていないわけで、複雑な気持ちになるよなあ」と思ったり。津幡が三瓶に言った「記憶が戻ったからといって、そのときの気持ちになるとは限らない。大事なのは今の気持ち」ということばが、一番彼の心に響いているんじゃないかと思ったり。

「記憶がつながらなくて、ひとつだけいいなと思うことがあって。それは今の自分の思いが分かること」

記憶の積み重ねがないぶん、今の自分の思いがストレートに分かる。ミヤビが綾野にかけたこのことばは彼に影響を与えるが、ミヤビと三瓶にも新しい関係を生み出すのではないか。「今」のミヤビは、三瓶のことをどう思っているのだろう。そろそろ、今の三瓶と向き合う展開があっていい気がする。

で、最後に流れた次回予告の「もうひとつおめでたいこと」って何? 藤堂院長と津幡師長のカップル成立とか?(まさか……) ラストに向けて、西島会長や大迫教授の動きも気になる。まだまだサスペンス要素を含んだ状態なので、最後まで気が抜けない。

ところで、このドラマはミヤビの食いっぷりも楽しみのひとつなんだけど、あのケーキを食べる姿、ひと口が大き過ぎない?(笑)昔のCMを、懐かしく思い出しちゃった。

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