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万葉カレー歌詠みに与ふる書


万葉カレー短歌とは

 読者諸賢は、万葉カレー短歌をご存知でしょうか。

 菅沼九民氏編著の『故カレー事成語』事典で下記のような史実が紹介されているように、奈良時代には既に日本に大陸からスパイスが伝来していたとのことです。

奈良時代には漢方薬として香辛料が中国から日本に持ち込まれていました。
 有名なところでは、仏教を伝えるため渡来した鑑真が聖武天皇に献上した胡椒、クローブ、シナモンなどが正倉院の宝物庫に保管されています。(ホントらしい)

『故カレー事成語』


 また、万葉歌人の中には、既にスパイスをカレーとして食べる者が居たと言われており、カレーが詠まれた歌が日本最古の歌集「万葉集」に何首も収録されています。(大嘘です)。

 これを万葉カレー短歌と言います。
 下記に代表的な歌をいくつか列挙します。


 それぞれの歌の解釈は様々な学説があるため、別稿に譲り、本稿では万葉カレー短歌に見られる特殊な語法について二つ紹介したいと思います。

万葉カレー短歌特殊語法①  推定を表す助動詞「ラッシー」

 一つ目は、推定を表す助動詞ラッシーです。意味や用法は推定を表す助動詞ラシとほぼ同じなのですが、カレーが詠まれる歌の中ではラシに代わってラッシーが使われることが一般的です。

 また、ラッシーには掛け言葉としての側面もあるため、助動詞としての推定の意味の他、飲み物のラッシーとしての意味も訳出する必要があります。下記でご確認下さい。

【用例】
春過ぎて 夏来にけラッシー 白妙の
衣についた 甘口のカレー

【現代語訳】
春が過ぎて夏が来たようだ。夏の陽気の中でラッシーを飲んでいる私の白い袖には甘口カレーのシミがついているよ


万葉カレー短歌特殊語法② 「辛ミ語法」

辛ミ語法を見る前にまず、「辛ミ」という概念から確認しておきたいと思います。

辛味(からみ)は、味の概念の一つ。日本語ではトウガラシ、ワサビ、ショウガ、サンショウなどに代表される刺激的な味を「辛味」と表現する。なお、辛「味」は当て字で、本来は辛みと書く。「み」は形容詞語幹から名詞を生成する接尾辞である。

wikipedia「辛味」より引用

 現代語においては「辛味」と表記されることが多いですが、これは一種の駄洒落であり、本来、「み」は味を意味するのではなく、名詞を生成する接尾辞でした。「楽しい」が「楽しみ」となって名詞となるような例がその一つです。

 また、上代にはミ語法という特殊な語法があり、辛ミ語法語法は、カレーを詠んだ歌においては、ミ語法と交渉していたとも言われています。

 ミ語法とは下記のような語法で、助詞のヲと共起して、「〜ので」という意味を表すことが特徴です。

 以下は小倉百人一首にも収録される崇徳院の有名な歌で、ミ語法が使われています。

瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ
(川の流れが早いので岩にせき止められた滝川のように、別れても最後には逢おうと思う。)

崇徳院

 対して、辛ミ語法はヲと共起せずに単に辛味という意味で使われることもあるのが特徴です。

 なお、下記の例では一般に状態を表す「からい」と情意を表す「つらい」が掛詞になっており、訳出にも工夫が必要です。

【用例】

あら辛み 服にはねるるターメリックの 
染みても末に 取れるとぞ思ふ
【現代語訳】
つらいものだ。袖についたからいターメリックカレーの染みが、いつかはきっととれるはずだと信じている。

さいごに

 本稿は半分以上出鱈目の噓八百を列挙したものであるという点は重ねて言及しておかねばなりません。妄言多謝。

参考文献

菅沼九民著『故カレー事成語』

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