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美少女になりたい

タイトルの通りである。

以前、noteでこみこみこさんにコメントを頂いた、『川端康成は少女になりたいのではないか』という言葉を、私はずっと考えていた。

そう、それは正しく正鵠を得た言葉であり、川端康成だけではない、汎ゆる男性は美少女になりたいのである。

等と供述しており、と思われるかもしれないが、実際にそうなのであり、ここから意味不明なことをつらつらと書かせて頂くが、私はこの不思議な感覚、郷愁とも似た感覚の不思議を掴むために本を読み、文章を書いている。私には両性具有、というものが永遠のテーマであり、その深淵にここ数年少し近づけた気がするが、なかなか難しい。

さて、汎ゆる、と括ってしまって申し訳ないが、これは潜在的願望であり、よくあるアニマとアニムスの関係というか、男と女は互いに欠けたものを求め合うために恋に落ちて、セックスをして、そして、また自身の分身を作り続け、そこに自身の理想を見る、これが生命の本質であるわけだが(つまりは究極のオナニズムである)、男が女を求めているのは、何もセックスや恋のためだけではない。
女性は、男性にとって、根源的に還るべき肉体であり、そして、それは美しくなければならない。

これは女性にとっては男性が当てはまるのではないか。

男を例にとって言うと、男性には幼い頃、必ずと言っていいほどフェイバリットの男友達がいたはずだ。それは美少年であり、或いは笑顔の眩しい少年である。彼に認められたい。それは恋心であり、自分の中の美少女がそうさせているのである。
BL、というのは同性愛であると同時に、正しく両性具有者ヘルマフロディトスの完成の一つなのである。

学年で、クラスで、一番の美少女になって、男たち、そして女子たちからの羨望も勝ち取り、フェイバリットの男の子の心を射止めたいのである。然し、それは当然無意識の感覚であり、自覚のある者は少ないだろう。
けれども、あの、美少女の抽象性、体臭もないような、アニメーションから抜け出てきたような美貌に真白な歯並、宝石めいた瞳に、楽の音のような声色は、男性が獲得しようとしても絶対に獲得できない天禀であって、それは本当になりたかった自分の姿なのである。

男もまた、少女漫画を読む。そして、少年たちは気に入りの漫画のヒロインと主人公の恋愛を応援し、そして、ヒロインを獲得して欲しいと真っ直ぐに思う。然し、本当には、ヒロインを心情に重なって、主人公に見出され、そして恋愛を成就させたいのではないか。

ここに1曲、甘酸っぱい歌がある。もう亡くなられた志賀真理子さんの歌で、『フリージアの少年』という曲だが、私はこの曲が使われたアニメは観ていない。観ていないが、この少女の心中を歌った曲には大変に共感を抱いてしまう。つまりは、少女の心境になって、少年への恋を述べるわけだが、まぁ、恋愛というのはシンプルには男女共に同様の思いだろうが、然し、不思議と切ない少女の恋心の方が、いくらも自分に響くのである。

男どもはアイドルやアニメの魔法少女に恋をするが、あれは、自分の欲しかった姿を無意識下に見つめているのである。
この、恋、とはまた違う感情は、ある種の郷愁とも結びついており、それは、もしかするとまだ生まれる前、美少女であった頃の記憶がそうさせているのかもしれない。

或いは、この小幡洋子さんの『あなただけドリーミング』。同様に、私はこのアニメを観ていないが、この少女の思いもまた、フェイバリットの男性に思いを寄せる少年少女、全てが共感できるのではないか。

美、とは本来は少年のものであり、性欲がそれを邪魔して女性に美を僭称させたと稲垣足穂が述べているが、美少女に憧れる男性の気持ち、特にそれに成り代わりたい気持ち、というのは、明らかに性欲を超克した変身願望であり、その変身願望は男性の大好きな魔法少女の物語構成に見て取れるが、少女もまた美しい大人の女性への変身願望をその中で満たしている。
男女ともに、美少女への憧れは尽きず、美少年と並んだのならば、それは尚更に美しい星座のようなものではないか?



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