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映画備忘録 パールと市子は似ている。なんとなく。

Amazonプライム、Netflix、ディズニープラス、さらに、Amazonプライムの角川専門チャンネルみたいのも加入している今日この頃、もっと映画を観なければもったいない!とばかりに、色々観ているが、選択画面でいつも15分くらい潰す、その時間がもったいない。

まずは、内田英治監督の2022年の映画、『異動辞令は音楽隊』。

阿部寛主演であり、熱血刑事の主人公がアポ電強盗を追うが、そのパワハラが行き過ぎる性格、上に楯突く態度の為、内部告発により音楽隊に異動を命じられる、という話だが、まぁ、可もなく負荷もなく。

『ミッドナイトスワン』を観たときも思ったのだが、内田英治監督は、こう、重々しく大仰に撮るのが上手くて、名画みたいな演出なのだが、然し、物語に穴や飛躍が散見され、意外性もなく終わる。なんというか、良い映画風に見せる、というのが上手い感じだ。今回も、既視感のある展開と、いや、そうはならんだろ、というシーケンスが混じり合い、真面目なのかご都合主義なのかわからない。そして、その実、あまりにも漫画ナイズドされた人物描写に、うーん、という感じ。この映画は4点かな(10点満点)。

それから、次に『市子』を観る。

これは杉咲花さん主演の映画で、2023年公開のホヤホヤである。あるが、然し、この映画は、離婚後300日問題、という、そういう、重いテーマを扱っていて、私はその問題を識らなかったのだが、まぁ、然し、そのテーマと、主人公である市子のキャラクター、これの食い合せが悪いような気がする。

物語としては、3年ほど付き合った市子に若葉竜也演じる恋人が婚姻届を差し出してプロポーズ、翌日彼女が失踪して……、という女性探しミステリー系の映画である。

ファム・ファタル的な女性で、この映画の中だけでも、4人くらいの男が彼女に翻弄されるが、然し、そのせいで、焦点がぼやけてしまっている気がするし、邦画特有の、あの、自然な会話シーンと見せかけて不自然になっている(ラスト間際のお祭りのとことか)シーンのせいで、なんか乗れない。
若葉竜也のダイヤモンドシライシのCMを思い出してしまう。市子に鬼ハマりする北くん、彼の演技は良かったなぁ。

まぁ、失踪映画としては『ゴーン・ガール』を思い出してやまない。と、いうか、この映画、ただの『ゴーン・ガール』なんじゃ……。

この映画は5点かな。

ちなみに、失踪系の映画だと、『バニーレイクは行方不明』などの先達があるが、私的にはやはり、『ザ・バニシング-消失-』。

って、まぁ、『市子』は失踪系ではあるが、ちょっと毛色が違うので、まぁ、どちらかというと、平野啓一郎原作の『ある男』とか、吉田修一原作の『怒り』とか、そちらの方が近い気もする。

そして、宇野祥平さんが出ている。この前に観た山本直樹原作の『ビリーバーズ』でおフェラで逸物を噛み切られていたので、今作もそんな役かもしれない……と、まさか、また噛み切られるのか!?と、ドキドキしたが、そんなことはなかった。

で、その後に、去年映画館で観たかった『パール』を観る。

いやぁ、いいなぁ。パール。最高にいい。傑作だな。映画館で観るべきだったな。
ぶっちゃけると、パールと市子、性質は異なれど、同類のようだが、パールくらい激しければもういいなぁ、と思う。

衣装やアート面も美しいし、なかなかの残酷描写と最後の晩餐パーティのイカれっぷりに加えて、独白シーンは本当に観ていて怖かったね。
あのラスト15分くらいは久々に画面に釘付けになったよ。配信映画でそれって凄まじい演出のキレだ。
あのお家も『悪魔のいけにえ』まんまだし、それを隠さないところ、カカシとのファックもあったけれども、あの不気味なカカシ、そういえば、『悪魔のいけにえ』でも冒頭カカシだったなぁ。トビー・フーパー贔屓が過ぎるよ、タイ・ウエスト。

内容はここに書くのは面倒くさいので、まぁ、公式HPを読んでほしいが、然し、鮮血、人体破壊、ワニ、腐った豚、戦時下、ダンス、フィルム、映写技師、モノクロ映画、見世物映画、覗き見、真っ赤なドレス、など、なんとも麗しいモティーフに溢れていて、これはもう前作の『X』よりも全然良い。
演出も冴えているし、ここ数年で観た映画で『君たちはどう生きるか』(比べるものを間違えている)の次くらいに好きだな。『パール』は9点だな。

やはり、先日アメリカで公開されたばかりの3部作の最終章、『マキシーン』は映画館で観ること確定である。




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