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俳句アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』

今更ながら、気になっていたアニメ映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』をNetflixにて鑑賞。

2021年の作品である。
90分弱の映画なので、すぐに観られるところも良い。
絵柄が好きだったので観たのだが、まさかの俳句映画だった。

『サイダーのように言葉が湧き上がる』というタイトルが俳句なのだ。
そして、本編はウルトラにド級の純愛ラブストーリーである。

物語は、田舎の糞デカいショッピングモールがメインで、もうすぐ引っ越しを控えている主人公のチェリーこと桜君が、ひょんなことから(この、じょんなことからって何なんだ。でも、今思えば、私の人生の全てもきっかけが思い出せない。全て、ひょんなことからとしか説明のしようがない……。)配信実況などをしている美少女JKのスマイルが互いのスマホを間違えて持って帰り、そこから交流がスタートする。

チェリーはチェリーボーイであり、俳句が趣味なのである。そして、極度のあがり症で、人前では喋れない。親しい人とでないと喋れないのだ。
スマイルは天真爛漫だが、出っ歯、というコンプレックスを抱えており、歯科矯正中である。表情を隠すために、マスクを常備している。

口と耳、二人はコンプレックスを隠している。

この二人のラブストーリーである。
チェリーはSNSで俳句をアップしているのだが、まぁ、noteでいうところスキが全くつかない。つけるのは知り合いだけで、チェリーは「誰も見てないから」、という。スマイルは、そんなチェリーの俳句にスキをつけるのである。それはもう、恋に落ちてもしょうがないだろう(かわいいのだし)
結局、誰がスキするかである。100のお義理スキよりも、1の本命スキの方が嬉しいのではないか?

そして、二人は仲を深めていくのだが、実は、チェリーはもうすぐ引っ越しが迫っており、ちょうど、それは盆祭の花火大会の日なのである……。
そのことを言い出せないチェリーは、彼の母親のバイトの代打で入ったデイサービスの老人が探す歌手のレコード探しをすることになる。それは、スマイルと同様に出っ歯の可愛らしい女性で、どうやら、老人の亡くなった奥様のようで……。

全ての感情が、花火大会に向けて収斂していくのである。

カラフルすぎる映像ですごくサイケだけど、それがいいね!

まぁ、ここからは完全にネタバレである。

サイダーのように言葉が湧き上がる。

この句は中盤に出てくるが、主人公は、君と出会って、俳句を通して、言葉が湧き上がり始める。

この畳み方は見事だった。つまりは、全ては繋がっていて、ラブレターなのだ。一つ一つ、物語に出てくる句は、彼女への小さな恋の歌なのである。

最後には、まぁ、恋愛によくあるすれ違いを超えて、チェリーは愛の言葉をひたすらに詠み続ける。それは、俳句としては、拙いものかもしれないが、俳句とは万人だれもが共感できる藝術であると同時に、誰かたった一人の人への愛を届ける藝術でもあるはずである。

最後、急に未成年の主張が始まり驚いたが、然し、花火を背景に、何度も何度も愛を叫び続けるチェリーの姿は、ありのままの貴方がスキだと、本当のスキのお返しをしているのだ。

荒唐無稽な箇所も多いが、映像のPOPさカラフルさは素晴らしいし、本当にサイダーのようだ。

まぁ、若い人の恋愛、というのは、花火なのであるから、バンバンと弾ければいいのである。



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