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善悪の天秤

浄土るるの『ヘブンの天秤』を読んだ。

内容としては、天使であるメロが堕天を免れるために、20人の人間を救うために人間界と天界とを行ったり来たりする話だが、まぁ一話目からパンチのある話である。

一話目はWebで読めるが、要は、罪/救いとは何か、という話であって、これは基本的に答えのない話であり、主観と客観でも審判は異なるため、人類への永久の課題として神から与えられたものである。

そもそも、神なぞはいない。いても、人間の空想した全ての神は紛い物であって、その神たちの存在の結果戦争が起きたり、美しい芸術が生まれたりと、要は神とは人間の意識そのものであって、それを共有すると悲劇や奇跡が生まれる。真の神(と、いう言い方をしてもいい存在か知らんが)は、恐らくはこの広大すぎるスペース空間や時空、はたまた全く知られていない異界や存在に気を取られていて、人間は部屋の片隅で転がるガチャガチャの玩具の景品にしか過ぎず、もう埃を被っている。
けれども、『トイ・ストーリー』よろしく、どんな忘れられた玩具にも一分の魂はあるのだから、人間たちは地球というプラネットの上で悩んでいるわけだ。だったら、アバターに意識ごと植え付けて、パンドラで暮せばいいじゃない!というところだが、けれども、パンドラではパンドラで争いがあるので、基本的には意思を持つ存在が2つあると、セックスか戦争になってしまうのが生命の本質なのかもしれない。


で、『ヘブンの天秤』の第1話では、救うべきは、虐めで自殺した妹の復讐のために苛めた相手を殺そうとする兄か、若しくは「いじめていない」と涙を流し、その母もまた娘を殺すなら私を殺してと涙ぐむ母娘か、どちらかを選ばなければならない。
今作の天界では、人命を、生命をこそ救うのが大切だと説いている。結果、メロは生命が脅かされる側につくわけだが、然し、今作を読んだ人間のその全てが兄に同情するだろう。

このようなことは巷に満ち溢れている。正しいこと、愛情などが優先されない世界であり、誰しもが許せない罪が何故か許されて、たった一度の過ちで絶望に堕ちる人間もいる。

今作は答えを明示しようとはしていないように思われる。所詮、善悪というものは立場によって異なるし(『ヴェルサス13』!?)、全ての因果関係を見つめることは人間にはできないからだ。
然し、傷ついている人間に手を差し伸べることは、できるだろう。

絵は大変に個性的であるが、好きなタッチだ。下手な部類に入るだろうが、おそらくこの方は上手くなりそうな気がする。まだ21歳だという。良い漫画家さんだ。

ただ、今作は1話目がよくできているが、中盤は少し中だるみする。今後どうなるのか見守っていきたい作品だ。

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