《エストニア×札幌》スタートアップ“エコシステム”誕生の秘話公開
こんにちは、BULBの阿部浩太郎です。
私はエストニアに3年住み、エストニアの様なスタートアップ・エコシステムを作るべく、札幌で活動しています。
先日、札幌市長より発表された「STARTUP CITY SAPPORO」宣言において、BULBでは北欧・エストニアの中規模都市で活発化しているスタートアップ・エコシステムを取り入れるべく、そのサポート組織の立ち上げに携わっています。
今回はその宣言に合わせて、なぜエストニアの様なスタートアップ・エコシステムを札幌市に作りたい、ここが最適な場所だと感じたのかご紹介いたします。
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●大自然の中で最先端の技術を触っているって、めっちゃかっこよくない?
僕がなぜエストニアのスタートアップ・エコシステムに惚れてしまったのか?それは、一人の若いエストニア人に言われた言葉がきっかけでした。
「僕はロンドンとか大都市には興味無いんだよね。ここタルトゥみたいな大自然の中で、最先端のテクノロジーを使って世界を相手にビジネスしている方がクールじゃない!?」
「最新の情報はインターネットで手に入るし、スタートアップコミュニティには刺激的で面白い仲間たちが沢山いるしね。」
広告業界で5年勤め、毎朝満員電車に揺られ出勤することが当たり前だった私の価値観に、この言葉は重いボディブローを食らったかのように、ずしりと響きました。
考えてみれば、まだまだ日本においては大企業に勤めることがよしとされているから、折角地方の有名大学を卒業しても、多くは就職活動を経て東京に行ってしまうそうです。
しかし、少子高齢化の日本社会において、地方に若者を留めさせるのは急務ですよね。
その点、彼が言っている「大自然で働きながら、世界と戦う」ことがクールだと思う人が増えれば、きっと地方の若者の現象はは食い止められるだろう。そう感じました。
●そもそも、エストニアとは?
エストニアの人口は130万人でこれは青森県とほぼ同じ。面積は、45,230 km²(北海道の約半分)で、GDPも192カ国中101位と非常に小さい規模です。
それなのに、人口1人当たりの起業家輩出数はヨーロッパ1位。
そして、行政サービスにおけるデジタル化は99%完了しており、役所への届出は基本的にインターネットで完了します。
最先端技術を使って社会システムを構築している国家が世界中から注目を浴びています。
特に、僕が2年過ごしたエストニア第2の都市「タルトゥ」では、行政と大学が強いリーダーシップを発揮して、スタートアップ・エコシステムを支援しています。
例えば、タルトゥ市のスマートシティ・プロジェクト「Tark Tartu」をリードする若者は、
「行政や大学の大人達が様々な支援を行なってくれた。新しいことをしようと思えば、常にサポートしてくれる環境がありました」
と言っています。
若い世代の挑戦を大人達がサポートしている姿から、その世代を超えた地方都市のスタートアップ・エコシステムが効果的であることを印象付けられました。
●単純にエストニアを持ってきては、ダメだ。
エストニアは「起業家を増やそう」、「電子システムを整えよう」などと、なぜこんなに活発なのでしようか?
これは、圧倒的に少ない労働人口を有効活用するためです。
考えてみれば、日本は急速に少子高齢化社会を迎え、高齢者を支える労働人口が足りません。特に地方においては若者が都会に出てしまい、解決策のないまま放置されると悲惨な未来が待っています。
その点エストニアの様な
合理的な仕組み、そして「大自然で最先端なやTECHするのがカッコいい」という考えを日本にも根付かせることができれば、地方でも面白く生きていけるのはないか。
しかし、闇雲に僕一人が活動してもなかなか問題は解決しないもの。そこで、エストニアの風土に近い地方を探して、そこから変えられないか…と分析すると札幌が最もエストニアと似た環境にあることがわかりました。
●エストニアと北海道(札幌)がにている点3つ。
まずは、①人口密度が低いこと。
エストニアにおいて電子政策・デジタル化を進めた目的は、システムを効率化して少ない労働人口を有効活用する目的がありました。
例えば、選挙の投票において、インターネット投票を利用することで、わざわざ車を走らせて投票所に行く手間が省けます。一人一人の貴重な時間を節約できます。
その点において、北海道は人口密度の低さは全国1位。
長い冬には雪が積もってしまうとますます外に出るのが億劫になってしまいます。加えて、雪道運転では事故の危険性も出てきます。北海道の人たちにとって、エストニアの様な行政のデジタル化は直接的な利点があります。
次に、②外国人労働者受け入れること。
近年、エストニアには多くの外国人労働者が集まってきています。
特にIT関連産業には欧州中からエンジニアやプロフェッショナルが集まり、私が以前働いていたIT企業でもイギリスを始めとして、イタリア、ドイツ、南米、オセアニアなどグローバルな環境でした。
加えて、エストニアのスタートアップ・エコシステムでネットワーキングをしながら働きたいという人々が多くいました。
魅力ある環境をつくることで、世界中から高度な技術を持ったプロフェッショナルが集まって来ます。これは労働人口を増やす一つの方法になります。
その点、北海道は2013~2018年の5年間において、外国人の増加率は50%を超え全国3位。
さらに、市区町村別外国人増加率ランキングにおいては、1位・3~5位を北海道の市区町村が占めており、北海道の受け入れ度合いの高さが見て取れます。
最後に、③大学・民間・行政の近さ。
スタートアップ・エコシステムにおいて、何と言っても大切なのは「人との繋がり」です。
その点、タルトゥでは、大学、スタートアップコミュニティは、歩いて徒歩20分圏内。だから気軽にワークショップやイベントに参加することが出来ました。
一方で、札幌は北海道大学、札幌市役所、IT関連企業が多く集まる創成川東のエリアは徒歩20〜30分圏内に収まっています。
以上のことから、札幌市はスタートアップ・エコシステムの環境を作るには最適な場所と考えたのです。
●STARSとは?
スタートアップ・エコシステムにはやはりコミュニティが不可欠です。バックグラウンドの異なるもの同士が集い、ディスカッションする場。
毎週ワークショップを行い、そのコミュニケーションの中からアイデアが生まれ、プロジェクトに発展して、後のスタートアップになります。
そのコミュニティをサポートする組織として、社団法人さっぽろイノベーションラボを主体としてSTARS (Sapporo Tech Accelerator & Resource for Startup)が発足しました。
●札幌IT企業として、BULBが作りたい未来とは?
BULBでも様々なプロジェクトを立ち上げているので、そのプロセスをシェアしたり、知見を活かして札幌を拠点に羽ばたいていくスタートアップのサポートなどを行なっていきます。
●今後の予定
STARSを中心として、様々なワークショップを行い、常にトライアル&エラーの精神で様々なチャレンジをしていきます。
ただ単に北欧やエストニアのエコシステムを真似るのではなく、北海道特有の産業、例えば農業、漁業、林業、インバウンドを中心とした観光業などと意見を交わして、札幌ならではのエコシステムを作っていけたらと願っております。
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