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【徒然草 現代語訳】第百一段

神奈川県大磯の仏像専門店、仏光です。思い立ってはじめた徒然草の現代語訳、週一度程度で更新予定です。全244段の長旅となりますが、お好きなところからお楽しみいただければ幸いです。

原文

或人、任大臣の節会の内弁をつとめられけるに、内記の持ちたる宣命をとらずして、堂上せられにけり。きはまりなき失礼なれども、立ち帰りとるべきにもあらず、思ひわづらはれけるに、六位外記康綱、衣かづきの女房をかたらひて、彼の宣命をもたせて、忍びやかに奉らせけり。いみじかりけり。

翻訳

ある方が、大臣就任の宴の統括責任者を仰せつかった折、内記の持っている宣命を取らずに紫宸殿に昇ってしまわれた。言語道断の大失態なのだが、今さら引き返して取ってくるわけにもいかず、どうしたものかと困り果てていたところ、六位の外記中原康綱が、衣かづきの女房にわけを話してよくよく云い含め、件の宣命を持たせ、そっと差し上げたそうだ。当意即妙とはまさにこのこと!

註釈

○内弁
ないべん。宴の仕切り担当。

○内記
ないき。宣命作成を司る中務省の役人。

○宣命
せんみょう。天皇の公式文書。

○堂上
読みは「とうしょう」。

○失礼
読みは「しちらい」。

○外記
読みは「げき」。叙位を取り仕切る太政官の役人。

○康綱
中原康綱。20年近く外記を勤めた下級貴族。


こーゆー機転の利く奴が仕事の出来る奴と呼ばれるんですね。

追記

上司が二次会で煙草を咥えるとすっと火のついたライター差し出す奴みたいで、正直私は好きじゃないなー。

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