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【検証】薬剤師の都道府県別平均年収って信頼できるの??山口県の平均年収は【2年で364万円】も上がったの??

コウロウショウ・モンカショウ・ケイサンショウ・ノ・シリョウ・ダイスキです。
薬剤師の都道府県別平均年収の画像がバズってるのをよく目にするのですが、ずっと疑問に感じてたので調べてみました。

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先に結論を言うと、「賃金構造基本統計調査」という厚労省の調査をもとに作成した「薬剤師」よりも細かい視点(都道府県別の薬剤師とか)のデータはちょっと厳しいです。

これらの情報を公的な数値から類推するのは難しく、自分でアンケートをとるか、人材紹介会社の独自調査などを参考にする必要がありそうです。

ここから先は根拠とか試行錯誤の過程を書いているので、もし良かったらご覧ください。

1 【問題提起】このデータって信用できるの?

都道府県別の薬剤師平均年収を再掲します。

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これは私が作成したものですが、他のサイトなどでみる表も「賃金構造基本統計調査」という厚労省の調査をもとにしていることが多く、中身は基本的に同じだと思います。

これ、ある時点の数字をみてても違和感に気づきにくいですが、経年でみていると「あれ?」となります。
例えばこちらご覧ください。

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…本当でしょうか?
山口東京理科大学のお陰で平均年収が爆増したのでしょうか?

多分違いますよね。
なので、この記事では「なぜこんなことになったのか」「どうにか参考になる情報を得られないか(結局どこの都道府県が高くてどこが安いの?)」を試行錯誤した過程を記載します。

(おことわり)
もちろん、「このデータが正しい=山口県の薬剤師の平均年収が2年で約364万円上がった」という可能性もあります。
ただ、薬剤師または近しい業界にいる人なら、山口県に住んでいなくてもこのデータが正しくなさそうなことは肌で感じると思います。
なので、今回は肌感を頼りに「このデータはちょっと信用できない」という前提で進めます。

Twitterで簡単なアンケートをとったのですが、やはり違和感を覚える人が大多数でした。

投票数と割合から、納得18票、違和感178票、閲覧用67票と言えそうです。
閲覧用を除いて円グラフにするとこんな感じですね。
(まあ、Twitterこそ匿名投票ですし、信用はできないですが。)

山口県の平均年収激増について(n=196)

ちなみに、山口県以外の都道府県でも年収が激しく増減しています。

薬剤師の平均年収の増減(2019年→2020年)

静岡県なんて100万円以上下がってるじゃん!そんなん泣いちゃうって!!

薬剤師の平均年収の増減(2018年→2019年)

栃木県福島県100万円以上下!泣!!

2 【原因調査&試行錯誤】

なんでこんなことになってしまったのか。
2つの仮説があるので、それぞれみていきます。

 2.1 (仮説)各都道府県の標本数が少ないのでは?

まず1つめ、各都道府県の標本数が少ないのではないかと思っています。

誤差率5%、信頼度(信頼係数)90%、母比率(母偏差)50%とした場合、母集団の推計に必要なサンプル数はおおよそ270になるらしいです。

(【助けて】必要なサンプル数について)
統計得意ではないので、色々調べたのですが、必要なサンプル数の議論って難しいんですね。
今回は下記の2つのサイトを参考にしました。
母数に関わらず、必要なサンプル数を求められるそうです。
https://teshi-learn.com/2020-05/sample-statistics/
https://bellcurve.jp/statistics/blog/14347.html

一方、計算に母数を用いているサイトもありました。難しいな…
https://jp.surveymonkey.com/mp/sample-size-calculator/

統計に詳しい方、この辺りご指摘等があれば是非お願いします…

さて、各都道府県のサンプル数はこちらです。

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都道府県によってかなりばらつきがあるのは気になりますが、福井県以外は全て270以上のサンプル数がありました。
…ということは?ここに問題はないのか?本当?よく分からなくなってきました…

 2.2 (仮説)「都道府県」以外の交絡因子があるのでは?

2つ目の仮説です。交絡因子を探していきます。

  2.2.1 賃金構造基本統計調査から交絡因子を探す

賃金構造統計基本調査には、実は色々な情報が含まれています。
そんなわけで、「年収」と「他の調査項目」の相関係数を調べてみました。

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思ったより低いな…。
やっぱり、色々な要因で年収が決まるし、どれか1つめちゃくちゃ影響の大きい要因があるわけではないみたいですね(少なくともこの中には)。
影響大きいやつがみつかれば、それで補正できるし楽だったのになー…

  2.2.2 賃金構造基本統計調査にない交絡因子候補

賃金構造統計基本調査にない項目で、交絡因子っぽいものを列挙してみます。

薬局/病院/ドラッグストアなどの「勤務先の業態」
管理薬剤師などの「役職」
ラウンダー勤務全国転勤可などの「勤務形態」

…どうでしょうか。
感覚的にも、これらは年収に影響を与えそうです。
2.2.1のように、どれか1つだけ強く相関してるものを探すのは難しいと思いますが、賃金構造基本統計調査にある項目(年齢・勤続年数・時間外労働時間など)と合わせれば、年収を説明できるような…。

まあ、今は手元にないので検証しようがないのですが!🥲

3 【結論】

繰り返しになりますが、賃金構造基本統計調査の情報を元に「薬剤師」より細かい視点で数字(「薬剤師の都道府県別平均年収」「薬剤師の年齢別平均年収」など)をみるのは難しそうです。

おそらく、この調査は薬剤師向けの調査ではないため、薬剤師の年収への寄与が大きそうな因子を十分考慮されていないのだと思います。
(参考:抽出方法

なので、この調査結果を加工したもので信用して良さそうなのは「(薬剤師だけでない全職種の)都道府県別の平均年収」「(日本全国の)薬剤師の平均年収」くらいの大きめの粒度までのようです。
もし、より細かい粒度で数値をみたい場合、別の調査を探すか自分でしましょう。

4 【おまけ】医療経済実態調査について

ちなみに、同じく厚労省の「医療経済実態調査」をもとにした数値もたまにみかけます。

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この画像(出典)からは以下のように言えます。

・薬剤師の平均年収 薬局の平薬剤師 <  病院薬剤師 < 薬局の管理薬剤師 < 一般診療所の薬剤師

一般診療所の薬剤師の平均年収は1千万円を超える

ただ、こちらも「年収を知るため」の調査ではなく、「医療機関の経済状況(どんな収入・支出があるか、など)を知るため」の調査なので、年齢などが考慮されていません。
おそらく、病院や診療所の薬剤師は平均年齢が高く、つられて平均年収も高くみえているのでしょう。

つまり、「医療経済実態調査」からも薬剤師の年収を細かい粒度で論じるのはなかなか厳しそうです。残念…。

5 感想など

まず、ここまでお読みいただいた方がいらっしゃいましたら本当にありがとうございます。
せっかくなので、日記代わりに今の私の気持ちを綴ります。
もし良ければご覧ください。

「本当はもっと建設的な話をしたかった…」
本当は「薬剤師の年収の話をするならこうしたら良い」みたいな建設的な話をしたかったのですが、「これはダメ」「これもダメ」という話ばかりになってしまい自分でもちょっと残念です…。
(まあ、色々勉強になったので、総じて書いて良かったとは思っていますが。)

「やっぱりアウトプットは大事」
久しぶりに長文を書いてみて、すげー大変だなーと思いました。
結論を仮説だてて、結論に至るまでの構成を考えて、実際にデータを集めて、でも予想と違って、軌道修正を考えて…など、良い訓練になりました。
そして世に公開するということでできるだけ裏をとったり、良い勉強になりました。
今後もアウトプットありきでインプットしようと改めて思いました。

「久しぶりにExcelして楽しかった」
Excelが好きというより、Excelで表とかグラフを作ったあとの「やってやった感」が好きなのですが、割と久しぶりで楽しかったです。
誰にも求められないものを作っても少し寂しいので、もし「こんなデータが知りたい」などのリクエストがあれば是非。

今後も年に1回以上はnoteを更新できたらと思います(劇甘設定)。
次回はマーケ担当や事業企画担当向けに「薬学部・薬学生の市場規模、市場特性」でも書こうかな(ターゲットが激狭)。

励みになるので、是非、記事への「スキ」やSNSのフォロー等いただけたら嬉しいです。

最後に、私の好きなゲームであるFGOから、手持ちのサーヴァントを紹介してお礼・結びとさせていただきます。

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こちらは中途半端に育てた茨木童子です。
「初期は手持ちが少ないのでバーサーカーが強い」のご多分に漏れず、私の陣営もそうでした。
回避やガッツはないものの、Wave3までエースを温存する、無難に使いやすい存在で良かったです。
逆に最近は手持ちが揃って、ほぼ使わなくなってしまったので寂しいです。

「鬼種の魔」は効果も良いし、名前も良いし、鬼の中で汎用スキルな感じも良くてほんと好き。超絶強化きてくれ。


以上です。ありがとうございました。

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