制作のコンセプト作りに使える4つの手法

製品、商品、サービス、プロダクトを制作し、あるいはマーケティングし、プロモーションする際には、全員で共有できるコンセプトを示し、上流から下流まで貫き通すことが大切。

ここでは、コンセプト作りに私がよく使っている4つの手法をお伝えします。

前提:ゼロからの企画開始時ではなく、モノはある程度決まっている場合のお話です

まったくの新規事業で、なにもないゼロからスタート! という際には、別の手法を使います。ここではお話しません。すみません。
ここでお伝えするのは、企画の骨子がそれなりに決まった後や、新規事業であっても「自社がもっているアセットをどう活用できるか?」みたいな、ある程度の方向性が存在する場合のお話です。
あるいは、サービスや製品はすでに存在しており、それをプロモーションチーム全体に今回の施策はどんなコンセプトで行うか、と明文化して共有する際に使っていた手法についてです。

手法の前に:大量の「それって、こんな感じ。」を用意する

前段でお伝えした通り、企画の骨子は決まっていたり、製品やサービスはすでに存在しています。

まずは、コンセプトを作らねばならぬ対象が無形であれ有形であれ、対象のイメージを大量に用意しましょう。

「対象のイメージ」とは、簡単にいうと対象を見たとき、知った時に思い描く「こんな感じ。」です。

例えば、バーベキュー。

クッソ暑いなか、キャンプとかでリア充がキャッキャウフフするアレです。

と、言っているなかにも、すでにいくつもの「こんな感じ。」が存在していますね。
私はバーベキューに対して、
・夏に行う。
・キャンプで行われがち。
・リア充が湧いてそう。
・バーベキューをしている人たちは、楽しそう。
・バーベキューをしている人たちは、羨ましい。
といったイメージを抱いているようです。

ほかにも、(↓飛ばしちゃっていいですよ)
・けっこうおいしい ・意外な一面を見せ、職人みたいに焼き続けるヤツがいる ・バーベキュー奉行問題 ・着火剤とか網とかライターとか、忘れ物しがち ・焼き職人はなかなか食えない ・「これ何の肉?」「さぁ? ブタじゃない?(実は牛) うまいからいいじゃん」 ・お父さんが作る焼きソバがうまい ・絶対に肉を落としちゃうヤツがいる ・野菜焦がしがち ・最終的に肉も焦げる ・食材が足りない心配をして買いすぎ、結局余る ・食が太い者たちが食材を余らせまいと、必死で食べる ・キャンプ場とか、野外の雰囲気も込みでうまい ・食べるのそっちのけで仲良さそうに話していた男女が、片付ける頃にはカップルになっている ・今頃出てくる炭水化物 ・子供はウィンナーでお腹いっぱいにして、うまい肉は大人たちだけで食べる算段 ・結局大人たちは酒でお腹いっぱいで、もう食べられない ・一番食べると目されていた彼、酒で早々にダウン ・「あれ? いつからいた?」ってヤツがいる ・「あれ? いたっけ?」ってヤツがいる(いなかったのかも)

パッと思いつくだけで、↑のような「なんか、こんな感じ。」が出てきました。これらを「イメージのリスト」として、まとめておきましょう。

この段階では、ポジティブもネガティブも含めて、正直に、なるべく思いつく限り挙げてみましょう。
重要なのは、事実かどうかは関係ない、ということです。
勘違いも含めて「なんか、こんな感じ。」を出します。勘違いしているとしたら、しているなりに、理由があるからです。そして可能であれば、事実であるにも関わらず、誰からも気づかれなかったことも、後から「なんか、こんな感じ。」としてリストに追記できると、なお良いでしょう。
上記のバーベキューの例でいうなら、
・アメリカでのバーベキュー文化について ・シュラスコのこと ・オフシーズンのこと ・都市部で行える屋上バーベキュー
……などでしょうか。

準備ができたら、いよいよ手法を見ていきましょう。

手法1:大量の事実から浮かび上がらせる

某チョコレート菓子の「イメージのリスト」を考えてみましょう。

・甘い ・お菓子 ・チョコ ・おいしい ・サクサク触感 ・安い ・30円くらいで買える ・チープ感 ・駄菓子 ・カロリー高そう ・食べ応えがある ・間食にちょうどいい ・もらったらうれしい ・子供向け ・大学の頃、やたら配ってるヤツいなかった? ・安っぽい ・太りそう ・ちょとでいい ・黒い雷神 ・センスが厨二くさい ・パッケージがギンギラしてる ・名前にインパクトがある

これらを眺めていると、なんとなく共通するイメージが浮かびます。
「安い」「チープ感」など、少し高級感とは程遠く、庶民的な感じがありますね。そして、安いからこそ「配ってるヤツ」がいる。でも、安いのに「もらったらうれしい」。

これらを組み合わせると、「何の他意もなく、職場で気軽に配れるチョコレート」というコンセプトになりそうです。 

手法2:大量の事実をターゲット目線でマッチング

キシリトール入りのミントガムを例に考えてみましょう。

・ガム ・ミント味 ・すっきりする ・目が覚める ・からい ・歯がきれいになる ・息がきれいになる ・口臭がくさくなくなる ・眠気覚ましになる ・集中できる ・一粒に換算すると高い ・ちょっと甘い ・すぐ味がなくなる ・お腹がユルくなる ・捨てるのが面倒

次に、どんなターゲットが想定できるか、考えてみます。

・学生 ・社会人 ・子供 ・子供をもつ親 ・高齢者

では、ターゲットの視点になりきって「イメージのリスト」を見てみましょう。

学生にとっては「集中できる」「目が覚める」というのが、テスト前に最適かもしれません。あるいは、「息がきれいになる」から、合コン前のエチケットにも便利。
または、社会人であれば「口臭がくさくなくなる」「眠気覚ましになる」ので、会議前のリフレッシュに使えるかも。その場合、昨今は喫煙室も無くなってきたから、タバコの代わりに……とか。そうすれば「一粒に換算すると高い」というのも、タバコと比べることでむしろメリットになるかもしれません。これらを組み合わせると、「タバコに代わる新しいリフレッシュグッズ」というコンセプトになるでしょう。

ターゲットの目線で「イメージのリスト」を眺めると、気づかなかったマッチングを得らえることがあります。

手法2補足:ターゲットが決まっちゃってる場合にも使える
本来、市場調査などをしてからプロダクトを開発するものですが、商品などの場合、ターゲットがあらかじめ決められてしまっていることがあります。

「今回の商品広告は、20代男性に打つから!」と、いった場合です。
社内のさまざまなアレで決まったことを覆すことは難しいもの……。せめて、ターゲットに対して最適な訴求をしたいところです。
もっと効果のあるターゲット層は別にいるのに……という想いをグッとこらえて、手法2を使ってみてください。ターゲットになり切れば、そんなに大外しはしないコンセプトができるでしょう。

手法3:カテゴリのレイヤーを上げる

バーベキューコンロを例にとってみましょう。

バーベキューコンロって「こんな感じだよな。」というイメージ、いくつ挙げられるでしょうか?
製品開発に直接携わっていても、なかなか難しいでしょう。(私も開発に少しだけ関わったことがありますが、あまり思いつきません。)

ですが、「バーベキュー」のイメージであれば、前述したように、いくつも挙げられると思います。

対象がイメージを挙げにくかったら、対象の概念を上位に引き上げましょう。バーベキューコンロからバーベキューに。それも難しいならアウトドアとか、レジャー全般とか。

「イメージのリスト」が少なく感じたり、しっくりこないコンセプトしか生み出せない場合、ちょっと上位の概念についてイメージを出して、それをリストに追加してみましょう。
そして十分な量のイメージを用意できたら、手法1か手法2を行えます。

手法3補足:上位カテゴリの訴求だけにならないように
最終的な目的は、バーベキューコンロを買ってもらうこと。なのに、この手法3を使うとバーベキューの訴求で終わってしまうことがあります。
そうすると、そのバーベキューの訴求がふんだんに取り入れられたプロモーションを目にしたユーザーは、「あぁ、バーベキューしたくなってきたな。」と、なります。あなたが売りたかったバーベキューコンロを買ってくれません。

世の中に、このような訴求をする「雰囲気広告」も多数あります。ですが、それができるのは業界の覇者だけです。業界の覇者であれば、「バーベキュー訴求してバーベキューしたい人が増える→バーベキューコンロを買う→業界の覇者の製品が売れる」という構図になるので、問題ありません。
そうでないのであれば、忘れずに自分が売りたい製品の訴求を入れましょう。

手法4:既存のコンセプトをとらえ直す

先ほど、キシリトール入りのミントガムを「タバコに代わる新しいリフレッシュグッズ」というコンセプトにしてみました。

これを、ちょっとイジってみましょう。

使ったイメージは「口臭がくさくなくなる」「眠気覚ましになる」「一粒に換算すると高い(けど、タバコと比べるとまぁ、トントンくらい)」でした。

タバコのイメージには「息が臭くなる」と「健康に害がありそう」というものがあります。それと対比するように、キシリトール入りのミントガムには「息がきれいになる」と「歯がきれいになる(=健康に近づく)」があります。

また、一部ではダイエット効果を期待してタバコを吸うという人もいるようです。口寂しいときにカロリーの高いお菓子を食べずに、タバコを吸うのです。ですがそれであれば、ガムにも同じメリットがあります。

これらを組み合わせると、タバコからは完全に離れ、「息抜きついでに健康になれる(歯がきれいになり、しかもダイエットにも◎)」というコンセプトに生まれ変わらせられるかもしれません。

まとめ

・まず、大量の事実(イメージ)を用意する。
・関連して浮かび上がってきたイメージの群れをまとめて、コンセプトにする。
・ターゲットの目線でイメージのリストを眺め、マッチしたものをコンセプトにする。
・より上位の概念からイメージ抽出を行い、イメージのリストを増員させる。
・既存のコンセプトからイメージの再抽出を行い、組み換えて新しいコンセプトにする。

コンセプトができたら、言語化してチームで共有! チームで意識を共有できたら、あとは実際のマーケティングやプロモーションに活かしましょう。

今後は、より細かいワザを紹介するコピーライティング編も予定しています。

それでは、みなさんに良きクリエイターライフがあらんことを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?