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私のスペイン900km巡礼記 in 2023春 #15 【13日目】ログローニョ〜赤土の崖がそびえ立つ古都ナヘラへ

こんにちは、ナガイです。今日は今までで一番長い距離を歩き、赤い町と呼ばれるナヘラ(Nájera)へ向かいます。
前回の記事はこちら。

天気予報(ナヘラ) 雨 最高気温16℃ 最低気温6℃

3時起床。3時間半しか寝ていないはずだが、なぜかすこぶるよく眠れた。せっかくなので早めに歩き始め、その分ペースをゆっくり気味にして歩くことにする。3時半出発。街中は街灯が多く、あまり真夜中という感じがしない。

歩いていると白い髭をたくわえた男性が後ろからやってくる。こんな時間に他に出発している巡礼者がいると思わなかったので少し驚いたが、彼はカナダ人のポールだ。巡礼者の間ではちょっとした有名人で、朝起きるのが早く、歩くのも速い。そしてよく喋る。しばらく彼と一緒に歩きながら足のつま先が痛いことを話すと、針で水を抜いて包帯を巻くといいよと教えてくれた。ナヘラに薬局があったら行ってみよう。

サン・ミゲル公園を通り、ログローニョの町を抜けると辺りは一気に暗闇に包まれる。

夜空には東京よりずっと多くの星が見える。つい口をあんぐりと開けて上を見ながら歩いてしまう。星空を見つめながら、この巡礼が何かの問題を直接的に解決することはないけれど、これからの自分の人生においてかけがえのない経験として残るのは間違いないだろうと思う。

風が出てきた。やはりこれから天気が崩れるのだろうか。
それにしても暗い道をこれだけ長時間歩くのは初めてだ。視界が悪いという問題はあるが、昼間歩くよりずっと楽だ。ただし、月が出ていないと本当に何も見えなくなりそうなので、曇りや雨の時は出発する時間を遅らせることも考えよう。

6時半過ぎにナバレテを通過。こじんまりとしているが小綺麗でいい感じの町だ。鳥の声が聞こえ始め、東の空も少し明るくなってきた。

広場があったので少し休憩する。サンソルのアルベルゲでもらったバゲットの残りを朝食にする。時間に余裕もあるのでゆっくり腰を落ち着けて休んだ。

この町にある教会は大きくて立派だった。

7時半過ぎに日の出。辺りをオレンジ色に染めていく。

前に何組か巡礼者が歩いている。スピードと時間からしてナバレテから歩いてきた人たちだろうか。挨拶を交わして追い抜く。

8時半頃に1kmのアートの道を通る。所々に絵やモニュメントが置かれているが、正直あまりいいとは思えない。同じ人の手によるものでも、柱に描かれた矢印や巡礼路沿いに置かれた道標は美しいと思うが、それは巡礼路を示すという役割を持って必然的にそこにあり、機能美を感じるからだ。これみよがしに置かれた絵などはそこにある必然性がないし、違和感しか生まれない。

9時前にベントサ(Ventosa)という町を通過。迷子になって歩いているとおじさんが声をかけてきて「カミーノは下のほうだよ!」と教えてくれた。正しい道に引き返すついでに見た教会は地味だが町の風景と溶け合っており、それもまたいい。

確かに今日は雲が出ているが今のところまだ雨の降る気配はない。

お腹が空いてきた。ロンセスバージェスのボカディージョを思い出し、あれおいしかったなぁ、また食べたいなぁ、と思う。

目の前にやけに道の端に寄ってゆっくり歩いている女性がいるので「大丈夫?」と声をかけると、彼女は少し足を痛めてしまったらしく、道の外側の草が生えている部分の方が土が柔らかいのでそこを歩いているのだそうだ。確かに歩いてみると道の真ん中より柔らかくて歩きやすい気がする。彼女に一つ良いことを教えてもらった。

ナヘラまであと30分というところで白い花に覆われた木が視界に飛び込んでくる。桜だ!なぜか道端に桜の木が一本だけ植っている。すでに葉桜になりかけているが、ナヘラまでの残り1kmを歩くパワーをもらった。

11時にナヘラに到着。アルベルゲの受付開始は14時からのようなので、近くのバルで軽く昼食がてら休憩。ベーコンとトマトのボカディージョとアメリカーノを注文。3.40ユーロ。

食べていると外で雨が降り始めていることに気づく。スペインに来て初めての雨だ。まだお腹も空いていたのでベーコンと卵のボカディージョとカフェコンレチェを追加注文する。3.20ユーロ。

チェックインの時間が近づいてきたためアルベルゲに向かっていると、サン・ジャンで会ったフランスのマノと遭遇した。彼女は足を負傷したらしく、昨日ログローニョの病院に行ったらしい。本当は医者から数日間安静にしているように言われたが、少し休んでまた歩くつもりとのこと。マノと一緒にアルベルゲの受付開始を待ち、14時に受付開始。

近くのベッドになったウェールズから来たペレグリンという男性と会話を交わす。身長が高く大柄で、見ているとみんなと楽しそうに話をしていて誰とでも仲良くなれるタイプだが、決して陽キャではなく素朴な雰囲気も持ち合わせているところが魅力的な人だ。仕事としてDJもやっているそうで、SoundCloudのアカウントを教えてもらった。

シャワーと洗濯をする。今日は雨なのでペレグリンと乾燥機をシェアして使う。1ユーロ。

16時過ぎに町へ出る。いつもはサンダルだが、今日は雨が降っているのでトレッキングシューズに履き替える。雨足は比較的強い。町歩き用に折り畳み傘を持ってきてよかった。町中でレインウェアを着て歩いている巡礼者を見かけるが、雨が降るだけで歩くのはずっと大変になりそうだ。スーパーで水とパンを購入。2.96ユーロ。

薬局で針、包帯、消毒液を購入。6.91ユーロ。最初針と包帯だけ買おうとしたところ、店員の女性に感染症を防ぐために消毒液も買った方がいいということをスペイン語で説明され、はじめ何を言われているのか分からず戸惑ったが、最終的にはなんとか意思疎通できて無事買い物を済ませた。

一度アルベルゲに戻って足の処置をし、洗濯物を回収してから再び外へ。町を一周してサンタ・マリーア・ラ・レアル修道院や赤土の崖などを見る。赤土の崖がそびえ立つ町の光景は一見異様だが不思議と惹かれるものがある。

19時にレストランへ。ボロネーゼのスパゲッティとサーモンのソテーを注文。ボロネーゼは麺が柔らかめ、ソースは優しい味でまずまず。サーモンも優しい味つけで悪くない。それより付け合わせで出てきたパンがとてもおいしく、むしろそちらの方が印象に残った。

20時過ぎにアルベルゲに戻る。寝る前に今日ベッドが隣になったドイツ人のマルコスと話す。白い長髪で髭を蓄えた仙人のような風格で、現在65歳とのこと。彼には何回か道中で追い抜かれたことがあり、その際に後ろ姿を見て存在は認識していた。いつも歩き方が豪快でいいなと思っていたことを彼に伝えると喜んでくれて、「牛みたいだろ?老人は歩くの早いんだよ」とにっこり笑って言った。どうやったら60代でこんなにピースフルでハッピーな雰囲気を醸し出せるようになれるのだろう。実際に話してみて彼のことがより好きになった。
今日は3時起きで昼寝もしていないので、さすがに早めに眠くなる。21時半就寝。

歩いた距離
今日29.0km 合計192.5km 残り587.9km

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