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良い音楽を良い音楽にするのはマーケティング

青春時代の音楽

20歳までバンドに打ち込んでいました。

明けても暮れても曲を書いてはライブハウスで演奏して、音楽で食べていく未来を想像した夜もありました。

今から十数年前はそれなりにインディーズシーンも盛り上がっていて、素人に毛の生えた大学生でもミュージシャンを気取れた時代だったのです。

今ではほぼ絶滅した「メロディックハードコア」というマニアックなジャンルに夢中でした。

歪んで音が判別しにくいギターに、大蛇のように地を這う太いベース音、手数が多くハイテンポのドラム。

その中で切ないメロディを大声で歌ってハーモニーを作るパンクです。

30代半ばの今も聞いているのですが、やはり良い音楽だと思います。

思わず拳を突き上げて、叫び出したくなる魔法のフレーズの集合体だから、色褪せない瑞々しさがあるのです。

分かる人だけ分かればいい?

私がバンドを辞めたのは勉強をするためです。

仲間内でそれなりに売れているバンドでも、アルバイトをしながらでないと生活ができない過酷さもあり、将来性を感じられませんでした。

音楽を否定するのではありません。

ただ、一度でもライブハウスを訪れた方、あるいは足を踏み入れなくても分かるかもしれませんが、爆音がなる地下の箱は決して居心地が良い場所ではありません。

耳に負担が掛かっているのを実感しますし、お酒を飲んで大声で叫んでいる大男がいつダイブするか分からない恐怖があります。

10分以上滞在すれば下着にまでタバコの臭いが染み着きます。

あとは、、、これ以上は書けませんが、金田一耕助も解き明かせない密室の完全犯罪も横行していました(あくまで昔かつ一部地域の話です)。

これらのハードルを越えてようやく音楽が楽しめますから、大衆にはなかなか受け入れられにくいのです。

なぜか周囲に染まらない佐藤を除き、漏れなく金髪にピアスになっていると気づいたころに、そっとバンドからの脱退を申し出ました。

ライブハウスを禁煙にして、ダイブ禁止にして、飲酒制限を設けて、MCでお客さんを「お前ら」扱いするのもやめて、代わりに自らの音楽への情熱と感謝を語ればいいと本気で思っていました。

きっと「そんなのはパンクじゃねぇ」とか「客に媚びるな」とか言われそうですが、お客さんのニーズを見極めて、良さを打ち出すべきだと思っています。

なぜなら、メロディックハードコアが好きで素晴らしいと思っているからです。

感情揺さぶる哀しいメロディなのに前向きな元気を与える不思議な力は、何度も心を支えてくれました。

全ての楽器が歌うように主張して全員が主役の働きをするのに、綺麗にまとまって聞こえる稀有な4重奏です。

初めて聞く曲でも自然と体が動いて、思わず手を挙げる瞬間にはドラムのフレーズが決まるようになっています。

インドア派にも嫌煙家にも、もっと味わってほしかったです。

当時のインディーズ音楽シーンには決定的にマーケティングとプレゼンテーション能力が欠けていました。

もしあのときライブハウスのオーナーだったら、などと妄想しますが、今はもう音楽業界を変えようとは思いません。

20歳の私の決断によって身につけたプレゼンテーション能力で、日本全体を変えていきます。



今でも、熱い文章を書くときは大体メロコアを聞いてます。




こちらでもたくさん記事を書いています。


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