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Syrup16g 五十嵐隆の世界観

「こんな気持ちはもういいよ」
「これじゃない感」
「無視しきれない戸惑いに転がされてけよもう一生」

五十嵐隆の歌詞は、いつもエゴと心が乖離している。
気持ちは自分で制御するものではなく、
自分とは完全別のところにあって、
それを冷静に見つめている。

そう、そんなものだと思う。

「考えすぎだよってあなたは笑った、これは癖だから治らないんだ」

体と心は別物だけど、頭と心も別物だ。
感情や思考はいつも別のところにあり、
自分で扱えないところにただ佇んでいる。

「見たいシーン集めた映画のような毎日を続けていくなんて困難だ」
と歌って直後、
「ゾートロープの中覗いていたい」

一つ目の歌詞では、毎日ただ続いてくだけの平穏を手放したがっているのに、
二つ目の歌詞では、ただ繰り返される光景を求めている。

いつだって五十嵐隆の歌詞は二律背反を起こしている。

そして、「新しい出会いや出来事がもたらせるのは混沌と後遺症だけどそう思っていた」→そうではなかった、と少しばかりの希望を見出したのに、
結局最後は「これじゃない感」で締めくくっている。
やはりまだしっくりこない人生に、彼は一生戸惑い続けている。

「空はこの上、天国はその上、そんなの信じないね」
「もっと上だって上なんて何もないけど」

五十嵐隆は「上がない」ことを受け入れている。

「空はそのまんまで人はそのまんまでそのままで美しい」

今あるこの世界を、ただ綺麗に捉えている。
人生に絶望する一方で、それでもまたこの世界は美しいのだと、現実を見つめている。

彼はいつもそうなのだ。
繰り返すが、乖離している。

「したいこともなくてする気もないなら無理して生きていることもない」
「後ろ向きlife style 死ぬまでlow …生きたいよ」
「生きているよりマシさ 死んでいる方がマシさ」

シロップはメンヘラバンドだと言われることもあるが、それもそれでまた違うと思う。

五十嵐隆は死にたがらない、
無理して生きる必要はないのに、生きたくて、生きてるよりは死んでいる方がマシ。
生きることに対する執着はなさそうだが、死にたくもなさそう。
あくまで「死んでいる状態の方がまだマシ」なだけで、死にたいとは得て非になる感情が大前提にある。

そもそも「死んだ方がマシ」ではない。
死ぬことにingは使わない。
死んだと死んでいるは全然違う。
死んでいるように生きた方がマシ、そんなことを言っているのではないのだろうか。

実はどこまでも、生に対する執着があるように見えるのだ。

***

こんな感じでつらつらと追記していけたらいいな。

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