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カウチポテトな夜もすがら「三体」

アジアで初のヒューゴー賞を獲得した中国のSF小説の映像化。大陸で見られる形でのドラマ版やアニメ版もあるので、実写化としては2度目。今回はネトフリ製作なのでマーケットは世界向けで製作費も映像クオリティも映画以上。

それで、ネトフリは本来は中国大陸では視聴できないはずなのですが、そこはそれ蛇の道は蛇じゃないけれど、興味のある中国本土の人も裏技なのかコネクションなのかはわかりませんが、何かしらの手段を使ってそれなりにしっかり見られてて、どうやら中国のSNSでもかなり話題沸騰らしいですね。

しかも、そのSNSでの話題のポイントとなっているのが、原作小説にもあるらしい、物語のキーにもなる(?)文化大革命の苛烈さを描いたシーンに対して50代以下の若年層の視聴者が受けた衝撃らしい。

個人的にオレは「覇王別姫」や「北京バイオリン」を撮った陳凱歌監督が好きなこともあり、香港はともかく、中国本土の監督もこれまでも普通に、文革の時代表現に関しては当時の反体制寄りにかなり踏みこんでいたように思えていたんですが、どうも現在のキンピラさんがトップに立たれて以降の政府からの表現統制は厳しかったようで、若い方々は、このネトフリのドラマを観て、かなりビビったみたいですね?

まるで自分がこれまで教わることのなかった自国の黒歴史を急に目前に突きつけられたみたいに。

オレは前述の映画「覇王別姫」の中の文革時代のセリフで腰を抜かしかけたことがあります。

古典芸能である京劇も粛清の対象としようとする若き近衛兵たちに対して、主人公が「侵攻してきた日本軍ですら、私たちにこんな非道な仕打ちはしなかったのに!」と抗議するシーンです。

観た瞬間は「オイオイ、このセリフ(当時90年代の)中国政府的に大丈夫なの? 本土で公開できるの? 監督、目をつけられてしばらく冷や飯を食わされるんじゃね?」などと、余計な心配までしてしまいましたよ。

どうやら後で調べてみると、監督さんご本人が近衛兵世代で自分の父親である映画監督を自ら糾弾した過去も実際におありのようで、それを考えると、あのシーンは自己批判なのか、それとも懺悔なのかと今だと少し考え込んでしまいますね…。

まあ、そんな風に文革をリアルに描いても大丈夫だった90年代までのメディアに触れたことがある世代は、中国本土でも大半が還暦以上でしょうね。

話がまた本題から外れますが、かつてタレント弁護士崩れの府知事だか市長さんが文楽の予算を削ろうと地上波に出てやいのやいのとアピールしていた時も、実はオレはこの一連の覇王別姫のシーンを想起していましたよ。

かつての帝国陸軍にも京劇を愛する歴史や文化に対する素養とリスペクトを持つ士官がいたというのに、もう関西には古典芸能を嗜み支援しようとする旦那衆や文化人も絶滅危惧種なのかしら…とね。

生まれも育ちも卑しいオレですら、誘われれば旧国立劇場へ能やら狂言、日本舞踊にまでいそいそと出かけていくと言うのに。

ホント、今までそれなりに残っている古い文化は何でも、舞台を生でちゃんと見れば面白いからね。オレが普通の人よりは古語に強いというアドバンテージは若干あるにしてもさ。

閑話休題。そんなわけで、リアルな文革の描写に免疫のない中国の現役世代は大丈夫なのかしら? アイデンティティ・クライシスに陥らない?

ホント、エロだろうと政府の方針だろうと、官主体の表現規制や統制は百害あって一利なし。もちろん、ただ野放図にすればいいとも思わなくて、一定の歯止めなり、監視は必要だとは思いますけどね…。

それでネトフリのドラマシリーズ三体のストーリーに関しては、現在3話まで見ましたが、正直まだよくわからない。確かに映像的にも世界観的にもスゴいんですけど、最終的に面白いかどうかは、まだ判断保留です。

そもそも天体物理学の「3体問題」への理解もオレ自身が怪しいからね。一般相対性理論に関しても同様に怪しいです。たぶん地頭が壊滅的に悪い。

どうやら物理運動法則が証明したり計算できないらしいんですが、オレ的には「何がわからなくて、そのわからないことの何が問題なのかわからない」というレベルで留まっています。

ただ1つ言えるのは、SFっていうジャンルは、見る人それぞれの歴史観だけでなく、政治や社会、哲学というか人生観をさらに深く考察するための思考実験のキッカケになるものとしては、本当に有効なものだなあとは強く思っています。

そういうわけで、オレは学術論文やレポートをまとめた下手な社会系の書籍よりもフィクション、詰まるところの創作物を専ら偏愛しています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4e016a1a3a3236b29ae157bcd7a737bc4bfb2bf3


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