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『ケーキの切れない非行少年たち』 宮口幸治 

「被害者が新たな被害者を生む」

少年院では本当に更生できるのか。意味があるのか。そんな疑問から手に取った一冊が「ケーキの切れない非行少年たち」である。

本書では、非行少年の成り立ち、特徴から現在の更生の仕方の問題点、正しい更生方法が述べられている。私は冒頭で述べた通り少年院に対して悲観的考えを持っていた。しかし、本を読むにつれ少年たちは可哀想な子たちなのだと痛感した。

凶悪犯罪に手を染めた少年たちに丸いケーキを三人で平等に食べるにはどう切ればよいか問うと、少年たちは均等に切ることができない。このことから、認知機能に問題があることがわかる。つまり、非行少年たちの多くは軽度の知的障害、発達障害を患っていたのだ。これに気づかれずに周りから変な子扱いをされ、いじめを受け、ストレスが溜まり発散方法として犯行に及んでしまう。被害者が加害者に変わり、新たな被害者を生む悪循環を繰り返しているのだ。

軽度の知的障害者は本来援助が必要であるが、見落とされてしまうことが多い。負の連鎖を断ち切るためには、社会に出る前に小学生のうちにサインをキャッチし、特別支援教育を受けさせることが大切であると述べている。

私が小学生の頃、椅子を投げたり、怒りからハサミを持って人を追いかけたりと、奇異な行動をする子がいた。今思えば問題児と言われていた子達は何らかの障害を負っていたのではないかと思う。しかし、私も含め周りの人間は皆その子を毛嫌いし、先生をも怒鳴りつける、反省を押し付けるなどその子を理解しようとしなかった。確かにその子は危険で、場合によっては怪我などの問題に巻き込まれてしまうかもしれない。しかし、そこで放っておくのではなく、なぜそういった行動を取ったのか、動機はなんなのかを理解して、適切な処置を受けさせてあげればよかったのにと今更ながら思う。

他にも、凶悪な罪を犯した少年達の多くは自分のことを優しい人間だと答えたり、更生をしていく中で学びに飢えていた少年がいたりと、様々な少年を例に述べているため内容がわかりやすく考えさせられ、非行少年達の捉え方が変わった。非行少年達の更生、心の歪みを修正することは勿論のこと、非行少年たちがこれ以上増えていかないように、道徳の授業を今より多くして社会性を教える時間を増やすなど、教育制度が変わっていくことが大切であると考える。



上記の文章は2021年に作成したものです。
これを見た2024年現在の思い。

自分の「少年たちは可哀想」という感想は、身内や自分自身に少年から危害を加えられていないからそう思えるのだろう。実際、少年から危害を加えられたとき、私は少年を可哀想と思い、更生が必要だと思うだろうか。

結局、この本はあまり自分には刺さらなかった。行政が何をできるのか、少年院は必要なのか、今もまだ疑問が残る。


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