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そのままでいいんだよ

人は感情の共有をしなくても、コミュニケーションをとることは可能なのだと知った。

しかしそれはきっとうわべの繋がりであり、それでは真に心で繋がり合うことは出来ないということも同時に思い知らされた。心を閉ざしたコミュニケーションだから。
何を考えているのか分からないと思われてしまうだとか、本当の意味で人から好かれないだとか、怖いと思われてしまうことに繋がるのだと思う。

私はその人らしさが掴めない人、心を閉ざした人には近づきづらいというか、どう接したらいいのか分からなくて関わるのが苦手で。何がその人の喜怒哀楽なのか、その影響を及ぼすのか分からないということ、それって凄く相手に対して恐怖を与えることなのだと思う。

その人のいい意味での人間臭さに触れた時、私は「あなたをもっと知りたい、もっと関わりたい」と思える。人を"好きだ"と思えるポイントって、その人にしかない人間臭さだと私は思っている。

そしてその人間臭さは、その人の感情に沢山詰まっているのではないかなとも思うのだ。

その人の喜怒哀楽、好き嫌いに始まる感情から、言葉に表せないような複雑な感情まで、それはその人にしか存在しないオリジナルのもので、全く同じ感情はきっとこの世界に存在しないと思う。
似たものは沢山あるだろう。そして他の人の似たようなものに、心救われたり、逆に心を悩ませたり、色々な葛藤を強いられるのがこの世の中で。

その人のオリジナルの感情だからこそ、私はその人のその感情を含めて全て愛したいと願う。知りたいと願う。
私には見えないあなたの感情と世界の輪郭をなるべくはっきりとなぞり合いたいと願う。



とか言っておいて私は感情を表現するのが苦手だ。非常に。
自分の喜怒哀楽、好き嫌い、全てが汚いものに思えて仕方なかった。私のオリジナルが憎くて仕方なかった。誰にも喜んで貰えないだろう、気持ち悪がられる、こんなもの存在する意味なんてない。
もっとみんなのように生きれたらいいのに。もっとみんなのように綺麗に。こんなことを感じる自分なんて消えてしまえ。
そう願い続け、自分はダメな人間だと呪い続けた。

自分の感情をダメと思い続けたからこそ自分を表現することが怖くて、自分の感情どこで発散していいのか分からなくなって、どこかにぶつける勇気もないから全部心の中に溜めた。何が起こっても「私がダメだったから、私がもっと上手くやれたらよかっただけ」と言い聞かせてやり過ごした。


そうして自分が"ダメ"で雁字搦めになってしまって、心が枯れて、我慢できなくなり、溜め込んでいた全てが涙と共に堰を切ったようにあふれ出した時、口から零れた言葉に私は些か驚くことになる。

「私なりに頑張ったのに、上手く出来なくて辛くて悲しかった」
「さみしかった」

走馬灯のように蘇る、記憶。

どれだけ勉強しても、点数が取れなかった中学のテスト。
心を壊しながら本気で勉強したが過度のプレッシャーで頭が真っ白になり第一志望に受からなかった高校受験。
完璧主義と燃え尽き症候群で勉強が一切出来なくなりスランプに陥った高校時代。
必死に勉強したが得点が伸びず、模試の度に先生に「なぜ得点が取れなかったのか」と詰められた大学受験。
私なりに頑張って愛したが離れていってしまった好きな人達。
愛し方が分からなくなって傷つけてしまった好きな人達。
関わり方が分からなくなって上手く話せなくなってしまった、血の繋がった大人達。

全部、自分がダメだったからじゃなかった。
私なりに精一杯頑張ったけど、出来なかったことだった。
上手くいくことを一番願っていたのは、紛れもなく私だった。


そうやって少しずつ、感じてあげられなかった過去の私の感情を1個ずつ丁寧に解放してあげた。
よく頑張ったねと。
あなたはダメじゃなかったよと。


思ったことを咄嗟に飲み込んでしまうことも、当たり障りのないことを言ってしまうことも、強がって思ってもないことを言ってしまうことも、まだまだあるけれど。というかそればかりだけれど。

でも、きっと、そんな自分も"ダメじゃない"。
だから大丈夫だよと言い聞かせて、ダメになりそうな自分の手を引いて「ダメじゃないよ」と連れ戻す。

いつか、私が心の底から「自分、いいかも」って思える日が来ることを、感情を素直に感じられるようになることを、堂々と人間臭く生きれるようになることを祈って。


















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