その墓碑銘、私使わせて頂きます。サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』

「なぜだい」ベイは不憫になって訊いた。
ギャビーはベイのほうへ顔を向けた。「何が?」
「どうして船と契約したんだい」
「あのときはいい考えだと思った」
「世界中の半分の人間の墓碑銘に使えそうな言葉だね」

サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』、竹書房、2022


日本のお墓には墓碑銘ないけれども、これを読んで膝を打ってしまった。どんな人生を送ったにせよ、「あのときはいい考えだと思った」は万能に違いない。爆笑だ、完敗だ。
返しに、世界の半分の人間が使えそうというのももう最高。こういう短く、でも洒落た会話が翻訳ものの面白さである。

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