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歌舞伎町のホスト

出会い

その男と出会ったのは、歌舞伎町だった。

いつもは積極的に行かないエリアだけど、微妙な空き時間に観たい映画があり、それが新宿で上映されるというのだ。

映画が始まるまではかなり時間があったので、銀だこに入ってレモンサワーを注文した。

昼間からお酒飲んでこれから映画!
最高〜!

アルコールが回ってご機嫌になった頃、悪くはない見た目をした若い男に声をかけられた。

結構酔っていて記憶は曖昧なのだが、細身で中性的な、清潔感のある、いわゆるメン地下っぽい(?)男だったと思う。


あっという間に

男はわたしと同い年だった。

「何してるの?どっか行こうよ!」と軽いノリで言われたので、こちらも軽いノリで「飲みならいいけど!」と応じてみた。

わたしは同世代のイケメンとお酒を飲みたかっただけなのに、彼の巧みな話術に丸め込まれて気がついたらホテルに誘導されていた。

会話の内容は専ら「君、ホストでしょ?」というものだった。

彼は「違うよ!もう引退して会社やってるよ!」などとほざいていたと思う。

とにかくお金は無さそうだった。

ホテルに着き、わたしたちは肉体関係を結ぶことになった。

彼は終始どぎまぎしていて、童貞なの?と言いたくなるくらい何もかもが下手くそだった。


その後

事が済み、言われるがままにLINEを交換して、わたしはお目当ての映画を観に行った。

(あっという間すぎww)

観た作品は、新進気鋭の映画監督によるメッセージ性の強いものだった。

影響されやすいわたしは、すっかり感化されて「清く正しく、後悔のないように生きよう!」と心を入れ替えていた。

そして、身元不詳の下手くそな男に身体を許してしまった怒りが沸々と湧いてくるのを感じていた。

その日の夜、彼からメッセージが来た。

やり捨て男のプライドをへし折ってやりたくなったわたしは、練りに練って考えた返事を送った瞬間に彼をブロックした。

昼間は気持ちいいってあんあん言ってた女からの突然の全否定ダメ出し。

びっくりしただろうなあwww

これで成敗できているのか、ダメージを与えられているのかは分からない。

でも、自分なりにやり捨て案件を消化するための模範的な行いができたと感じているので、全体としては非常に満足している。

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