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人間作業モデルを実生活に活用する。 –習慣化編–


人間作業モデルとは


人間作業モデル(以下、MOHO)は作業療法の代表的な理論になります。

人間の内部にある意志, 習慣化, 遂行能力という3つの概念が, 環境と相互作用することで作業適応の状態が生まれる.

山田孝:事例でわかる人間作業モデル. 協同医書出版社, 2015, pp14-26.

MOHOは幅広い領域の臨床で使用されており、エビデンスが日々構築されています。

せっかくなので、MOHOを臨床だけではなく、実生活で活用できるように考察していきます。

※この記事はあくまで私の考察であり、エビデンスに基づく論理ではないことをご了承ください。


習慣化について


みなさんは毎日または毎週行っている「習慣」はありますでしょうか?

私は「読書」「英語勉強」「空手」を継続して行っています。

しかし、自分が好きな作業でもない限り、毎日続けることは大変ですよね。

資格勉強、ダイエット、筋トレなど、苦痛が伴う作業は特に困難です。

MOHOでは

いかなる習慣的行為の大きな構成要素も、私たちの周りの物、人々、出来事を私たちが行うことへと組み入れるための戦略になるだろう。

キールホフナーの人間作業モデル 理論と応用 改訂第5版
第5章 習慣化:日常生活のパターン

と考えられています。

つまり、習慣化には物や人を含む「環境」を利用することが重要です。

具体的な方法について考えていきましょう。


環境を利用する


環境は、物理的環境と社会的環境の二つがあります。


物理的環境の例
「居住地」「道路」「車」「公園」「職場」「コンビニ」「時間」など

社会的環境の例
「家庭」「人間関係」「コミュニティ」など

どちらの環境でも、変化させることで習慣化が促進されます。

物理的環境を変える

「書く」ことを習慣化するために、秒で書ける状態にする。
(リビングやベッドサイドに紙とペンを用意したり、スマホのホーム画面にメモアプリを置いたりする。)

「読書」を習慣化するために、バッグやリビングに読みたい本を用意する。
(通勤などのスキマ時間を有効活用する。)


社会的環境を変える

「勉強」を習慣化するために、勉強会やコミュニティに参加する。
(他者が介在することで、自分の知識不足が露呈しないよう勉強する強制力が働く。)

「善い行動」を習慣化するために、付き合う人を変える。
(優しい人や憧れる人の行動を真似することで、自分も同じようになる。)

小さく始める


習慣化のコツは、ばかばかしいぐらいに「小さく始める」ことです。

「筋トレ」であれば、腹筋を1日1回。
「読書」であれば、1日2ページ。
「勉強」であれば、1日1分。

この考え方は、名著である「小さな習慣」から引用しています。


小さな習慣とは、毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動です。ばかばかしいほど小さなステップの積み重ねなので失敗する心配など全くなく、毎日続けるうちに習慣として定着します。

スティーブン・ガイズ著 田口 未和訳:小さな習慣


MOHOで考えると、行動するために必要な「意志」の力が小さくなり、「習慣化」が促進され、「遂行技能」が向上していきます。

さらに前述した「環境」を利用することで、「習慣化」が加速します。
 

生活スケジュールを見直す


一日のスケジュールを考えるとき、30分ごとに行っている作業を列挙できる「作業質問紙(OQ)」を使うと便利です。

OQが無くても、一日に行っている作業を時間ごとで書き出すことで視覚化されます。

動画視聴やSNSなど自分が無駄だと思う時間を確認し、そこに習慣化したい作業を入れると効果的です。

複利で伸びる


複利とは、運用で得た利益を元本にプラスして再投資し、その合計金額をもとに利益を得る方法です。
複利では利益が利益を生むため、運用期間が長くなるほど発生する利益の金額が大きくなります。これを「複利効果」と呼び、効率よく利益を得るための方法として知られています。

三菱UFJ銀行 公式サイト「複利とは?複利の効果や計算式、有効な活用法をわかりやすく解説」


複利は習慣と深く結びついています。

小さな習慣(1%の行動)を1年間続けた結果、
1.01の365乗= 37.78

1年間で約37倍向上します。

これを10年間続けると、
1.01の3650乗=5,929,448,572,069,368

とんでもない数になります。

この考え方も、名著「ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣」から引用しています。


さらに興味深いことに、ジェームズ氏は「習慣がアイデンティティーを形成する」と述べています。

行動変化の三つの層として「結果」→「プロセス」→「アイデンティティー」を挙げています。

「結果」は自分が獲得するもの、「プロセス」は自分が行うこと、「アイデンティティー」は自分が信じていることです。

簡潔に纏めると、「読書家」になりたいなら、本を読むことを習慣にすることで、少しずつ自分が読書家であると実感できます。


これはMOHOの「作業同一性」「作業同一性」に相当すると考えます。

作業同一性とは、ある人が作業参加の個人史から作り出す作業的存在として、自分は何者であり、どのような存在になりたいのかという複合的な認識と定義される。
作業有能性とは、私たちが自分の作業同一性を反映する作業参加のパターンを維持することである。

山田孝:事例でわかる人間作業モデル. 協同医書出版社, 2015, p18


自分が望む人間(作業同一性)になるためには、行動する習慣によって作業有能性を向上させる必要があります。


最後に、MOHOの「習慣化」を活用する例を提示します。

  • 「習慣化」英語を毎日学び、話すことが習慣となる。

  • 「意志」行動するために必要な意志力が小さくなる。英語話者としての実感が高まる。

  • 「遂行技能」英語力が向上する。

  • 「環境」英語を話すための環境が整う。

※MOHOでは4つの要素が相互作用しているため、決まった順番はありません。

まとめ


「習慣化」は複利で伸びるように、時間はかかりますがその効果は絶大です。

手っ取り早く行動を変化させたい方は、先に「環境」を変化させることをおすすめします。

環境については、こちらの記事もぜひご覧ください。


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