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小説で元を取る

小説でお金を稼ぐためには、本や電子書籍の印税、映像化や翻訳本が出る際の著作権使用料、Amazon Kindleなどで読まれたロイヤリティなどの方法があります。
「元を取る」ということは、コストを上回る利益を出さないといけません。小説家業のコストの多くは小説家ひとりの人件費です。
人によって執筆の速度も異なるし、発行部数によって印税も変動するので、一概には言えませんが、コンスタントに自著を出版できれば、自分の人件費ぐらいは元を取れると思います(その継続的に出版するのが難しいのですが)。

今日言いたい「元を取る」とは、小説を書く人件費以外のことです。
人はいろんなものにお金と時間を使います。衣食住でもお金を稼ぐためじゃなく、趣味や推し、自分の楽しみのために消費します。
それらの消費行動は、利益が出るわけじゃないので、基本「赤字」です。別に儲けようと思っているわけじゃないから、赤字で結構なのですが、使ったお金と時間で得た知識や経験をお金に変えることもできます。例えば、趣味で得た知識をYouTubeで話すとか。

小説家なら、それらの知識と経験をもとに小説を書いて出版できれば、元を取れます。
他の人が知らないことを小説に描くことで、今までにない物語が書けるかもしれません。
僕の場合は、将棋と日本史です。
藤井聡太竜王・名人の対局をデビューからずっと観戦して、将棋についてかなり詳しくなりました。将棋のルールやエピソード、過去の名局、そして棋士の方々のプロフィールについて、相当深く知ることができました。もっとも、ルールは知っていても将棋はほとんど指さないので、めちゃめちゃ弱いですが。
好きで得た知識だけど、根っから貧乏性なもので、元を取らないともったいないと思い、小説として表したのが「磐田の棋理」です。元小学生名人の冴えない中年棋士が様々な人に出会い、もう一度タイトルを取るために将棋に再挑戦する話です。

日本史は子供の頃から好きで、中学生の頃は戦国時代、高校では江戸時代、大人になってからは現代史に興味を持ち、小説や学術書を読み漁りました。
その知識を使って書いたのが、「ねこつくりの宮」と「雪の愛した物語」です。

ねこつくりの宮」は悲しみの人を癒すために猫をつくる物語です。その主人公が日本史オタクで、日常生活を日本史によく例える不思議な女の子です。

雪の愛した物語」は現代劇なのですが、作中作として主人公が読む歴史小説が登場します。大黒屋光太夫をモデルにした侍が江戸時代のシベリアを旅する物語です。

正確に「元を取れている」かわかりませんが、得た知識を使って小説に新鮮さを出すのは有効な方法だと思っています。

自分がはまったもので、まだ小説に使っていないのが、ラーメンです。宮崎市のラーメン屋はすべて行ったことがあるぐらいラーメン好きで、日本史と将棋よりもお金を使ってるんじゃないですかねえ。
夏のピルグリム」では、屋台でラーメンを売っている女性が登場しますが、ラーメンがメインのテーマではないです。
いつか小説にしようと思っているのですが、なかなかアイディアが纏まりません。頭で考えると、どうしても映画「タンポポ」みたいになってしまうんですよね。
あ、
いつか面白い物語が閃いたら、ラーメンの小説を書くかもしれません。

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