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地方発の文学賞が書店を救う

先日発表会を見てきた「宮崎本大賞」のような文学賞(本大賞)は宮崎だけではなく、他の地域にもあります。僕が昨年佳作をいただいた「みやざき文学賞」のように公益財団法人などの公的機関が運営している伝統的な賞もあれば、「宮崎本大賞」のように書店や司書さんなど民間が主体となっている賞もあります。

出版不況は都市よりも地方に大きな影響を及ぼしています。地方の小型書店は減少を続けていますし、不況は地方に住む人の暮らしを圧迫し、本への出費を難しくさせています。
人口減少により小説を読む人が減り、スマホや趣味の多様化により小説に触れる機会が失われてきていることも背景としてあります。

こうした状況の中で、地方から小説を盛り上げる取り組みは非常に重要だと思います。
地方に住んで初めてわかったことですが、都市と異なり地方メディアはその地域の人の暮らしや出来事に密着しています。
キー局が取り上げないようなイベントも地方では新聞やテレビで報道されます。東京にも「かつしか文学賞」のような文学賞はありますが、地元のケーブルテレビなどでは受賞のニュースが報道されますが、主要テレビ局や新聞が取り上げることはほとんどありません。
地方局の報道は県内にとどまりますが、県民に周知する大きな役割を担っています。
「宮崎本大賞」の発表もNHK宮崎、宮崎の民放二局、ラジオ、地方新聞で報道され、多くの県民の目に触れたことと思います。
地方メディアを通じて、地方の人に小説の面白さを伝えることができていると思います。もちろん、東京より人口が少ないので、伝わる絶対数は少ないのですが、情報の多さによって熱量は高く、本を手に取る人は増えてきているように感じます。
現に「宮崎本大賞」によって県内の本の売り上げは伸びているそうで、地方企業が経営する書店は県内にいくつもあり、書店が閉店することも10年前より少なくなったように思えます。

「宮崎本大賞」は書店員だけではなく、司書さんなど図書館関係者も参加しています。書店と図書館というのは商売上、対立関係とも捉えられますが、本好きの裾野を増やすために一致団結しているのがユニークです。
書店だけではなく、図書館でも本好きを増やすためのイベントを開催しています。

「出版不況」「人口減少」「地方の衰退」とニュースで語られるワードを並べていても問題は解決しません。
地方ができることはまだあると思います。僕も微力ながら地方の本好きを増やすために何ができるか模索していきたいと思います。


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