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現代のロードノベルは意外と難しい

僕はロードムービーが好きです。昔の映画なら「イージー・ライダー」「レインマン」、デヴィッド・リンチ監督が実話をもとに制作した「ストレイト・ストーリー 」など、ロードムービーにはハズレなしと昔から言われるように、名作が多いです。
特に好きなのが「リトル・ミス・サンシャイン」です。娘の美人コンテストに参加するために、フォルクスワーゲン・マイクロバスで家族全員が旅するコメディ映画です。一癖ある家族とその仲間のやり取りが愉快なのですが、ただ楽しいだけではなく、悲しい出来事が起きたり、社会に訴える内容も含まれたりして、完成度が高い映画だと思います。
みんなが乗り込むボロボロのワーゲン・マイクロバスがいいんですよね。昔からこの車が好きで、新型が出たら買おうと思っていたのですが、ようやく出た新型はオリジナルのマイクロバスとはかけ離れていたスタイルで断念しました。
話が逸れましたが、いつかは自分が好きなロードムービーみたいな小説(つまりロードノベル)を書いてみたいとずっと思っていました。

ロードムービー(ロードノベル)が面白い理由として、目的が明確であること、立ち寄る土地の風情が楽しめて、新しく出会う人々との触れ合いが描けることが挙げられると思います。
ところが、現代ではロードノベルを書くのは結構大変です。交通網が発達しているので、世界中どこへでも飛行機で簡単に行けます。近くまで飛行機で飛んで、そこからウーバーで行ったんじゃ、面白い話にはならなさそうです。
だから、近年のロードムービーは、旅をしなければいけない理由をあれこれ設定するようになりました。
「レインマン」では高所恐怖症の兄が飛行機に乗れないので、やむなくオハイオからロサンゼルスまで自動車で旅をすることになります。

「レインマン」よりも時代が進んだ現代の今だと、ゆっくりと旅をする理由を考えるのはなかなか大変です。
例えば主人公が財布を落とした設定にしても、現代ではスマホがあればなんとかなってしまいます。困難な状況に陥ってもスマホがあれば調べられるし、電子マネーも使えます。
現代の小説では、あまりに便利なスマホが厄介物になることも多く、主人公からいかに自然にスマホを取り上げるかが作家の腕の見せ所になったりします。
というわけで、目的地へ容易に行けないようにするためには工夫が必要です。

拙作「IT社長が勇者に転生した件について」はロードノベル的要素を含んんだ小説です。敵に追われている主人公は、持ち物を全部取られてしまい、自力で目的地へ向かわないと行けない設定にしました。

7月18日刊行の「夏のピルグリム」はロードノベルです。言い切りましたが、恥ずかしながら、実は書き終わるまでロードノベルというジャンルを知りませんでした。
「夏のピリグリム」を書くときに、頭に浮かんでいた言葉は、ロードムービーでした。ロードムービー的小説をロードノベルというのですね。決して道路関係を扱ったお仕事小説ではありません。

夏のピルグリム」は神奈川から宮崎へ向かう話ですが、もしも主人公が成人なら自分で飛行機のチケットを買って、目的地へ着いてすぐに終わってしまいますので、物語が成立しません。
中学生だから(しかもお金がない事情あり)、ロードノベルが成立したわけです。
ロードノベルが好きな方には、「夏のピルグリム」をお勧めできます。
もちろん、お好きではないインドアの方も楽しめると思います。

著者初の単行本形式の小説「夏のピルグリム」がポプラ社より7月18日に刊行されます。「ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作です。よろしかったら予約してください。善い物語です!





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